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北の町バギオから イバギウ・フェスティバル

2020年1月6日

 

ユネスコ認定 クリエイティブシティ・バギオ

心霊スポットがアートの力で一変!?
イバギウ・フェスティバル

‘Creative City’ Baguio Transforms Haunted Place into Art Hub

バギオを拠点とする有名アーティストの作品から一般のアート愛好家の作品まで幅広く展示。 The Ibagiw Festival showcases a wide variety of artworks by Baguio based renowned artists and art enthusiasts.

 

「心霊スポットでアート・フェスティバルがあるらしい」そんな情報が突如耳に入ってきた。昨年11月16日から24日の9日間の会期で開催されていたイバギウ・フェスティバル(Ibagiw Fes-tival)である。私は日本で芸術関係の仕事に従事していることもあり、アートには目がないのだが「心霊スポット」という言葉に、さらに興味を掻き立てられた。
会場となったのは市内中心部からタクシーで10分程度のところにあるドミニカンヒル・リトリートハウス、通称「ディプロマット・ホテル」。『ナビマニラ』12月号でも紹介されたように、1915年にカトリック教会の修道院として日系人の大工も建設に関わって建てられた後、第2次世界大戦時の避難民の収容所、戦後は心霊手術の療養施設やホテルとして、さまざまな用途で使用されてきたが、1990年に発生したバギオ大地震でダメージを受けた以降は廃墟状態だそうだ。『ナビマニラ』12月号でも紹介されたように、日系人の大工も建設に関わったそうだが、その歴史背景からバギオ市民の中では「おばけが出る⁉」と噂されているらしい。日本のいろいろなアートイベントを見てきた私も、さすがに心霊スポットでのアート展は未体験である。恐怖心を少しだけ上回る好奇心を頼りに、おそるおそる足を踏み入れてみた。

アートを楽しむ老若男女

なんと会場内は私の心配をよそに入場制限がかかるほどの混雑ぶり。イバギウというのは「バギオからの誰か・何か 」という意味が込められているそうで、500組を超える地元芸術家や職人の作品が、朽ちた壁に囲まれながらも所々ホテルの客室の名残を感じさせる空間にぎっしりと並ぶ。窓から射す光と覗く青空もあいまって、まるで建物が息を吹き返したようにいきいきしている。
何より驚いたのは観客のアートを楽しむ姿である。老若男女さまざまな世代の市民が、作品を見ながら感想を語りあったり、作品と一緒に写真撮影したり、とても賑やかなのだ。他者の考え方やものの見方を知り、新しい発見や価値観をもたらしてくれるアートのおもしろさや効能を、バギオ市民は既に知っているようだ。日本ではアートというとまだまだ敷居の高いイメージがあり、このような状況はなかなか目にすることができないので少し羨ましく思った。
会期中には、作品展示のほかにアーティスト、工芸家の滞在制作、工芸家を対象にしたコンペティション、クラフト・マーケット、音楽ライブにファッションショーなど多彩なプログラムが開催された。さらには会場を飛び出し、滞在制作された大きな絵画が町の中心部の歩行者天国で展示されたり、アーティストが手がけた特別仕様のジプニーでバギオ市内のアート、文化、歴史遺産に関するスポットを巡るシティツアーまで企画され、盛りだくさんの内容である。

会場のディプロマットホテルは、長い間バギオ市民が寄り付かない場所だったそう。 The Diplomat Hotel, the venue of the Ibagiw Festival, was originally built as a convent and used as a war refugee camp. It had been shunned by local people believing it to be cursed.

市が芸術家・職人を支援

イバギウ・フェスティバルは、2017年にバギオ市がフィリピンで初めてユネスコ・クリエイティブシティ(工芸分野)に認定されたことを記念して、2018年より始まったそうだ。「ユネスコ・クリエイティブ・シティ」とは、文化芸術のもつ創造性を活用して地域発展に努めている都市をユネスコが認定する制度。文学・映画・音楽・工芸・デザイン・メディアアート・食文化という7つの分野を設け、現在84カ国の246都市が認定されている。テクノロジーが進化し、今や国境の壁を越えてものや情報などが自由に行き来できるようになった一方で、昔から土地に根付く固有の文化が失なわれつつある。そこで文化の多様性を保全しながら、クリエイティブが持つ潜在的な可能性を世界各地の都市間で共有・連携して最大限に活用することを狙いとしている。
認定を受けてからというもの、東南アジアの工芸に関する国際会議が開催されるなど、バギオ市のクリエイティブ・シーンはますます盛り上がりを見せている。さらにはイバギウ・ フェスティバル終了後、ディプロマット・ホテルがアーティストや職人のための場所として今後活用されることがバギオ市政府から発表された。
土地固有の文化を継承し後世に伝えていくには、まずは自分たちが住む地域を誇りに思うことが重要だ。イバギウ・フェスティバルに集まる作品を見つめるいきいきとした市民の表情から、彼らがバギオを愛する気持ちを垣間見ることができた気がする。これもこの街がクリエイティブ・シティたる所以かもしれない。これからどんな新たな展開が生まれるのか、今後も目が離せない。
(Cordillera Green Network & Kapi Tako Social Enterprise インターン 松田 雅代)

バギオ・アート界を率いるカワヤン・デ・ギアの作品も。 Baguio’s leading artist, Kawayan de Guia’s artworks on display

滞在制作で描かれた大型の絵は、完成後、街中の目抜き通りで展示され、フェスティバルの告知に大きく貢献した。Some artists stayed at the venue to complete a large painting. The artwork was displayed in central Baguio to attract the public to the festival.

手織りの名人たちの滞在制作。コンペティションとして開催され最終日にはグランプリが発表された。
A competition of hand-woven works by craftsmen was held during the festival.

シティツアーで使用されたアーティストがペイントした特別仕様のジプニー。A special jeep decorated with artists’ paintings for the city tour during the festival.