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2018年7月11日

Filipino World  “Tagulan”

みなさんこんにちは! Kumusta kayo? 今年もまだまだ暑いと思っていたら、突然雨季に入りましたね。フィリピン語で雨はulan(ウラン)、「~の季節」は “tag-”という接頭辞をつけるので「雨季」は tag-ulan(タグ・ウラン)と言います。夏は乾季なので「乾いた季節」という意味でtagtuyo(タグトゥヨ)と呼ばれ、または「暑い季節」でもあるので tag-init(タグ・イニット)とも呼ばれます。逆に「寒い季節」である冬はtaglamig(タグラミッグ)と呼ばれます。フィリピンには冬はありませんが、12月から2月が比較的涼しい季節で、このタグラミッグにあたります。
小雨のことは ambon(アンボン)と呼んでウランと区別しますが、大雨や台風は全てbagyo(バッギョ)と呼びます。台風だけでなく、habagat(ハバガット)と呼ばれるモンスーンも、大雨を降らせます。日本では台風が通りすぎたら、台風一過で快晴になりますが、フィリピンでは台風がモンスーンを刺激し、インド洋からの暖かく湿った空気がフィリピン上空に流れ込むため、台風が通り過ぎた後も雨が降り続くのです。本来、ハバガットはモンスーンの「雨雲」のことではなく、南西から季節風のことです。ハバガットによる雨季は6月頃から10月末頃まで続き、11月になると風向きが変わって北東からの季節風 amihan(アミハン)が吹きはじめ乾季になります。
これらの季節風は、海水の温度に影響を受けています。たとえばラニーニャ現象やエルニーニョ現象が起こると、ハバガットやアミハンも影響を受けます。エルニーニョ現象が起こると、日本では夏は冷夏、冬は暖冬になりますが、フィリピンではハバガットが弱まり、乾季は猛暑になって干ばつが発生します。逆にラニーニャ現象の時には、日本では夏は猛暑、冬は強い冬型の気候になりますが、フィリピンでは近海の温度が上昇するため、ハバガットが活発化し、大雨が降る傾向があります。ちょうど日本と反対の影響があるわけです。
排水事情の良くないマニラでは、ちょっと雨が降ると、すぐに洪水baha(バハ)になります。ちょっとした洪水の時は、通行人が足を濡らさずに道が渡れるよう、自転車サイドカーのpedicab(ペディキャブ)や板を並べて橋にする人が出てきて、商売を始めます。ペディキャブは道を渡るだけの短い距離でも20ペソ以上を要求されます。板を渡るのは基本的には無料だと言われますが、5~10ペソ以上の「寄付」を要求されます。こんな時に商売をするなんて、なんとも商魂たくましい人達ですが、洪水の水を渡るリスクを考えたら安いものです。洪水には汚水も混じっており、傷のある足で水に浸かると破傷風やレプトスピラ症などに感染する恐れがあります。やむをえず洪水に浸かった場合は、石鹸で洗い、アルコールで消毒するなどした後、念のため病院へ行くようにしましょう。
フィリピンの雨季は、渋滞は酷くなるし、洗濯物は乾かないし、ちょっと置いておいた時計やベルトなどの皮製品にもカビが生えてしまうなど、憂鬱になりがちですが、フィリピンの人たちは雨季の涼しさを楽しみ、温かいマミ・ヌードルやsopas(ソーパス)と呼ばれるマカロニスープを食べたり、ココアを飲むなどしてポジティブに過ごします。皆さんも雨季のフィリピンをどうぞ楽しく安全にお過ごしください。

文:デセンブラーナ悦子

日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。

 

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