フィリピノ・ワールド

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2017年10月3日

 みなさん、こんにちは!Kumusta kayo? 今回は「ソーリー(Sorry)」に代表される謝罪の表現について考えてみたいと思います。ソーリーはもちろん英語ですが、一番言いやすいこともあり、最も一般的に使われる表現です。「パセンシャ・ナ(Pasensya na)」という表現もよく使われます。「パセンシャ」というのはスペイン語を語源とする「忍耐」という言葉ですから、つまり「忍耐してください」という意味になります。どちらも比較的軽い謝罪に使われる表現です。
より正式な表現には「パウマンヒン・ポ(Paumanhin po)」という言葉があり「ごめんなさい・謝罪します」という意味になります。「ゆるして下さい」という意味では「パタワリン・モ・アコ(Patawarin mo ako)」という言葉があります。浮気がバレた男性などが、彼女に対して謝罪する場合や、重大な過失に対し許しを請う表現になります。
私が交換留学生としてフィリピンに来た当時、詩の朗読会に誘われました。会場につくといきなり、友人に「ステージに上がって、このタガログ語の詩を読んでほしい」と、言われました。当時、筆者のタガログ語はまだまだ日常会話レベル。いったんはお断りしたものの、「下手でもいいから読んでほしい」と言われ、そこで詩を読む前にタガログ語が上手ではないことをまず聴衆の皆さんに謝罪しておこうと思いました。英語の「アイム・ソーリー」の訳は “Ikinalulungkot ko”(イキナルルンコット・コ)とテキストブックに書いてあったのを覚えていたので、「イキナルルンコット・コ・ポ、私はあまりタガログ語が上手ではありませんので。」と言ったところ、会場が大爆笑に。不思議に思いながらもなんとか朗読を終え、友人に聞いてみたところ、「あのイキナルルンコット・コという表現は、誰かが亡くなった時のような非常に重い悲しみについて使う表現なんだよ。でも、あれはあれで面白かったからいいんだよ」と言われました。つまり私は「私はタガログ語が上手ではないので、誠に遺憾であります」というような、その場にそぐわない重厚な言葉を使ってしまったというわけです。
言葉というのは、一語に対し1つしか対応する訳語がないわけではありません。ですから言語の習得には、文化的な背景や状況に即した生の言葉を学ぶことが大切だということを、実感した出来事でした。ちなみに同じ「アイム・ソーリー」でも、お悔やみの言葉としては「イキナルルンコット・コ」よりも “Nakikiramay po”(ナキキラマイ・ポ=お悔やみ申し上げます)という言葉の方が一般的です。わざとウケを狙うなら、こちらを使った方が、さらに大笑いだったかもしれませんね。
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文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。

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