フィリピンの山の 楽しみ方を紹介!

この記事をシェア

2017年3月30日

山間に海の様に広がる一面の白い雲。登山で出会える絶景の一つである雲海は、1500~2000メートル級の山でしか見られないと思っている方が多いのではないだろうか。今年6月、ルソン地方リサール州タナイ町カユムバイに新しく開かれたマイサワ登山道は、標高わずか577mのビヌタサン山と592mのサパリ山を巡回する道。首都圏から片道2時間弱、山頂まで約1時間半で雲海を見ることができる気軽な「雲海スポット」として人気を集めている。
雲海は山間部で湿度の高い空気が夜間に冷やされ、空気中の水分が霧になって溜まる現象。地元ガイドによると、マイサワ登山道では朝6時から8時ごろが見ごろだ。登山道の入り口から山頂までは約1時間強かかるため、自宅を未明に出発し朝5時ごろから登り始めるのがベストという。風がある日は霧がすぐに流されて消えてしまうため、無風状態に近い場合ほど美しい雲海を眺めることができる。山頂からだけでなく、入山登録をするクヤムバイのバランガイホールから登山道入り口に行くまでの道路沿い、登山道前半の民家の集まる道にもビューポイントがあるのがうれしい。
歩いていると、地元住民の民家に混ざって、広い敷地に鉄柵や高い壁をめぐらせている大きな住宅が目に入ってくる。景色が良く土地が安いため、近年、富裕層の別荘建設が続いているのだという。一方で、クヤムバイにはバランガイホールがある中心部しか電気が通っていない。別荘は自家発電機を装備しているが、住民は電気のない生活を続けている。地方の僻地というわけではない。首都圏の隣の州で、いまだに電気が通らない地域があるというのがマニラ、都市圏一極集中のフィリピンのインフラ整備状況を表わしている。
コンクリートの舗装が途切れると、粘土質の土で覆われた道が続く。雨上がりのぬかるみは激しく、登山者は靴かトレッキングサンダルで行くことを強くおすすめしたい。ビーチサンダルや普通のサンダルでは足を取られて歩くことができないので気を付けよう。小さなヒルの仲間もいる。
前日に雨が降っていたため道はぬかるんでいたものの、当日は快晴に恵まれ、風も非常に弱い登山、雲海日和。ビヌタサン山頂付近は人の背丈ほどあるススキの仲間に覆われて、すっきりとした青空の水色と山の黄緑・深緑とのすがすがしい色調が身体に飛び込んでくる。6時半に登山開始、8時ごろに山頂に到着したので、少しタイミングが遅く山頂付近の雲海は蒸発していく途中だったが、遠くに白く固まった雲海を見ることができた。高層にある雲と、山々の間に漂う雲の光景は神秘的で心が洗われる。雲海だけでなく、カガヤン州からケソン州までルソン島東海岸沿いを走るシエラマドレ山脈の南端の山々の姿も十分に美しかった。
山頂を下ると、途中休憩所がある。すぐそばには澄んだ水が流れる小さな滝もあり、汗だくになった体を休めることができる。着替えは必須。水につからない手はない。軽食を取り、隣のサパリ山にも登る場合は、ここからスタートし、また戻ってきて、登山道入り口まで戻るコースになっている。希望すれば、ビヌタサン山頂でテント泊も可能だ。スペースが限られているため、登山前にバランガイホールで許可をもらおう。山頂付近で夜を過ごし、星空を眺めた後、翌朝日の出と雲海を眺めるのは最高だとガイドのレイナルドさんが教えてくれた。
バランガイ・カユムバイではパリパラン山(562m)にも登れるほか、マイノバ山(728m)や同じく雲海を見ることができるカルバリヨ山(608m)など、リサール州タナイ町は首都圏から日帰りで行くことができるハイキング、登山スポットが点在している。幸いインターネット上に英語やフィリピン語で登山情報があふれているので、ぜひタナイ町の他の山にも挑戦してみよう。
 

山頂近くは人の背丈ほどのススキの仲間で覆われている


 

午前8時ごろ、山頂からまだ残っている雲海を眺める。シエラマドレ山脈を包む神秘的な光景


サルを肩に載せた地元ガイド現る


 

休憩所のすぐそばにある小さな滝。ビヌタサンの滝。澄んだ冷たい水で汗びっしょりの体をリフレッシュしよう



(上)山頂では登山客がお決まりのセルフィー (下)山途中の休憩所では軽食を買うことができる。隣のサパリ山にも登る場合はここからスタートしてまた戻ってくるコース


 
s-Binutasan 1

(上)幹線道沿いにあるバランガイ・クヤムバイの入り口。ここからトライシクルかハバルハバルに乗ってバランガイホールへ(下)クヤムバイのバランガイホール。ここで入山登録を済ませガイドを紹介してもらう


舗装が途切れた後は、粘土質の土の道が続く。雨上がりはぬかるみがすごい。低山だからといってなめてビーチサンダルで来ると歩けないので注意


 

Travel Guide 

行き方・交通費

行き方・交通費
首都圏ケソン市クバオからリサール州アンティポロ市コギオ/Cogeo行きのジプニーに乗り約30分~40分、コギオで下車。クヤムバイ/Cuyambay行きのジプニーに乗り換え、約1時間でバランガイ・クヤムバイに到着。一端バランガイホールまでトライシクルかハバルハバル(シングルオートバイの乗合)で行き、入山登録をしてから、再びトライシクルかハバルハバルでマイサワ登山道まで連れていってもらう。
・クバオ→コギオ 〔ジプニー 25ペソ/人〕
・コギオ→クヤムバイ 〔ジプニー 48ペソ/人〕
・クヤムバイ幹線道→バランガイホール
〔トライシクル/ハバルハバル 25ペソ/人〕
・バランガイホール→マイサワ登山道入り口
〔トライシクル/ハバルハバル 40ペソ/人〕
入山料、ガイド料
・入山料1人30ペソ
・ローカルガイドなしでは登山できない。バランガイホールでガイドを割り当ててくれるので従おう。ガイド料は500ペソ。
 

◎ Navi Manila Vol.28 より

Advertisement