演劇ワークショップinイフガオ

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2018年10月12日

演劇を通して地域の農業と向き合う
イフガオの高校生たち

聞き書きでは質問、筆記、録音などの担当を決めておく
In the interview, We will decide the responsibilities such as questions, writing and recording

バギオを拠点とする日系の環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」の活動の一つに、アートを活用した環境教育があります。今年度、CGNは「演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ」というプログラムを、ユネスコ世界遺産に指定されている素晴らしい棚田のあるイフガオ州の高校で行っています。
このプログラムの特徴は、日本では「聞き書き甲子園」で広く知られるようになった「聞き書き」という手法を取り入れてい

るところにあります。生徒たちが「地域の農業」をテーマに農家の人や農業に関わっている人たちにインタビューし、それを元に演劇作品を高校生たち自身で創作するというものです。こうして8つの高校で制作された演劇の発表会がイフガオ州ラガウェ町のドン・ボスコ高校の講堂で行われました。
近年、日本を含むアジアでは若者の農業離れは著しく、農業従事者の高齢化が進んでいます。しかし、私たちが生きていく上で必要な「食」を支えているのは、紛れもなく農家の方々です。農業は炎天下でも、風雨が吹き荒れたとしても、作物の世話を怠ることはできず、休暇のないかなりの肉体労働です。それが若者たちの農業離れの要因となっています。でも、作物が育っていく過程に関わる喜びや、自らが収穫した作物を食べる楽しみなど、農家の人たちだからこそ知りうる幸せがあるに違いありません。
そういった「農業の楽しみ」や「地域で起こっている農業に関わる問題」を、高校生たちに地域の方々への聞き書きを通して学んでもらいたい。そして、それをベースとした演劇制作の過程において、農家の方々の気持ちや経験を表現し「農業」を再発見してほしい。また、近代化の波の中で浮上している問題を深く考察し、解決策を考えるきっかけをつかみ、それらを地域の住民の方たちと共有してほしいというのがこのプログラムの目的です。さらにイフガオ州には、農業と結びついた先住民族が古来受け継いできた伝統的な儀礼が多く残っていて、それらを高校生たちが聞き書きを通して学び継承して行ってほしいという想いもこのプログラムには含まれています。
イフガオ州での演劇ワークショップは、CGNと教育省の先住民族ラーニングセンターのIPED(Indigenous People Education of Department )の共同で進められてきました。
最初のワ―クショップは今年5月。イフガオ州の8つの村から15の高校の教師が集まり、日本から花崎攝さん(応用演劇ファシリテーター)を迎え、聞き書きをベースとした演劇ファシリテーター養成講座を行いました。この講座を受けた先生たちは、自分の高校で生徒を集め演劇創作を行いました。先生と生徒は自分たちの地域の農家さんにインタビューを行い、その内容からモノローグ原稿を書き起こし、そこからシーンを設定していき演劇作品として創作します。また演劇発表で使う背景幕づくりや伝統の竹の民族楽器作りのワ-クショップも行われました。
8月中旬からは各学校がどのように創作を進めているかを、再来比した花崎さんとフィリピンの演劇ファシリテーターのリネット・ビバルさんが、CGNのジュニアファシリテーターたちとともに訪問して回り、アドバイスと追加のワ―クショップを行いました。
演劇作品に取り入れられた聞き書きのストーリーは地域の数だけ違い、害虫駆除に使われる殺虫剤による被害の話、昔は栽培されていたコーヒーの木の話、いまだ継承されている棚田と伝統儀式の話など様々です。日々練習を重ねた生徒たちの演劇作品は、発表公演の会場で、約450人の観客の前で披露されました。舞台に立つ高校生たちは、練習では見られなかった圧巻の演技でした。
今後は、同様のプログラムを実施している東ティモールと日本の高校生たちと各国で交流予定です。3カ国の高校生たちにどんな化学反応が起こるか楽しみです。

伝統舞踊の練習は特に熱が入ってくる
They are doing traditional dance practice very carefully.

山々に囲まれた校庭で稽古を繰り返す
They repeat practice at the schoolyard surrounded by mountains.

儀式に使われる豚を熱演する高校生
A high school student who is performing a ceremonial pig.

舞台後ろにある3m×5mの背景幕もワークショップで各校が制作 A back screen with a size of 3 meters by 5 meters behind the stage is also produced by each school at the workshop.

文:古城日向子 (コーディリエラ・グリーン・ネットワーク&シェア&ゲストハウスTALAインターン)写真:Gladys Maximo

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