~とっておきのフィリピン~

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2019年7月9日

チャンポラード

フィリピンの人たちは、もち米をお粥にして、ココアを混ぜたチャンポラードが大好きです。雨が降る肌寒い日の朝ごはんやメリエンダとして人気があり、コンビニやスーパーでもインスタントの商品が並んでいるほど。砂糖で甘く味付けした上に、さらにコンデンスミルクをかけて食べるので、ちょっと甘すぎる、と感じるかもしれません。甘いチャンポラードにはなぜか塩辛い干し魚を合わせるのですが、これは日本人がお汁粉に塩を一つまみ入れたり、塩昆布と一緒に食べたりするのと似たような感覚でしょうか。
このチャンポラード、もともとはメキシコのチャンプラードと呼ばれる飲料が原型のようです。メキシコのチャンプラードはトウモロコシ粉を混ぜて作ったココア飲料で、アニスやバニラなどで香りをつけ、朝食や夕方のおやつとして飲んだり、チュロスなどと一緒に食べるそうです。
カカオの原産地である古代メキシコのマヤやアステカでは、紀元前450年ごろからココア飲料が飲まれており、不思議なパワーを与えてくれる不老長寿の妙薬として儀式などに用いられていました。16世紀になるとメキシコにスペイン人が到来し、カカオをヨーロッパに持ち帰ります。ヨーロッパではトウモロコシ粉のかわりにミルクや砂糖を加えるようになりました。同じころ、フィリピンにもスペイン人が到来し、ガリオン貿易を通し、カカオとともにチャンプラードも伝わります。そしてフィリピンでは、トウモロコシ粉のかわりに、もち米を使ったチャンポラードが作られるようになったのです。
カカオには7種類以上のポリフェノールが含まれ、その抗酸化作用により血糖値上昇の抑制、動脈硬化の予防、血圧を安定させる効果があることが分かってきています。またカカオに含まれるテオブロミンは脳を活性化し、記憶力や集中力を高めるとされ、リラックス効果も期待できます。さらにこのテオブロミンやフラバノール、プロシアニジン等のポリフェノールには末梢血管を拡張し、血流を促す効果があります。現代の科学によって立証される前から、マヤやアステカの人々はカカオの効果を実感していたのでしょう。またフィリピンの人たちが肌寒い日にチャンポラードを食べるのも、理にかなったことと言えそうです。
インスタントのチャンポラードは甘い味付けになっており、このような健康効果を期待することは難しいかもしれませんが、作り方は実は簡単。ひと手間かけるだけでお好みの味に仕上げられます。フィリピンでは伝統的にタブレアと呼ばれるカカオを丸めて固めたものを使ってココアを作りますが、もち米または普通のお米に水を入れて、お粥を作り、そこにココアパウダーと砂糖(またはココシュガー)を適宜加えるだけで完成です。コンデンスミルクの代わりに牛乳やアイスクリームを入れたり、お好みでクローブやシナモンなどのスパイスを加えたり、ダークチョコレートで大人の味に仕上げてみるのも良いかもしれませんね。(悦)

 

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