Filipino World フィリピノ・ワールド 第4回

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2017年3月21日

Utang na loob 「ウータン・ナ・ロオブ」
恩義
___みなさん、こんにちは!Kumusta kayo? 今回はフィリピン人にとってもう一つ大切な言葉「ウータン・ナ・ロオブ」を取り上げます。これは日本で言う所の「恩義」という意味になります。Utangというのは借金とか借りのこと、loobというのは「中」のことですが、ここでは「心の中」を意味します。つまり「心の借り」という意味になります。日本でも「あの人には借りがある」と言いますが、それと近いのがこの心情です。フィリピンの人たちは困った時に助けてくれた人やお世話になった人たちに「ウータン・ナ・ロオブ」があると言って、恩を忘れません。逆に恩義を忘れる人というのが、感謝の心の無い人、恩を仇で返すようなひどい人、つまり恥知らずの「ワラン・ヒヤ」ということになります。
___2013年の台風ヨランダ(国際名ハイアン)で甚大な被害を受けたレイテ島の人たちは、当時ダバオ市長だった現ドゥテルテ大統領が、ダバオからいち早く駆けつけて、自ら救援復興活動に尽力したことを今でも忘れていません。彼らはドゥテルテ氏に対して「ウータン・ナ・ロオブ」があると言います。数々の暴言にも関わらず圧倒的な人気がある理由の一つです。
___また、ドゥテルテ氏が世間の反対にも関わらず、故フェルディナンド・マルコス元大統領を「英雄の墓」に埋葬することを公言し実行したのも、実はこの「ウータン・ナ・ロオブ」のためなんです。それはダバオ市長として長年勤めたとは言え、大統領になるほどの選挙資金はなかったドゥテルテ氏に、マルコス家の長女、イロコス州知事アイミーが選挙資金を出してくれたからだそうです。その理由はさらに遡れば、ドゥテルテ氏の父親が故フェルディナンド・マルコス氏を選挙の際に支持したからだそう。つまり「ウータン・ナ・ロオブ」の返し合いというわけです。フィリピンはアメリカの植民地だったため、アジアの国にしてはアメリカナイズされていると言われますが、倫理的な善悪よりも、恩義によって社会的な行動規範や義務が決まるところは、極めてアジア的だと言えるでしょう。そういう意味でも「ウータン・ナ・ロオブ」はフィリピンを理解するためには大切な概念の一つなのです。

s-I’m indebted to only 3-4「おれは恩があるのは3,4人だけだ」
「だからそれ以外の者に対しては汚職、わいろ、犯罪など相手が誰であろうと手加減はしないぞ…」。大統領の「恩人」の第一は北イロコス州知事のアイミー・マルコス氏(マルコス大統領の娘)。大統領選挙の最大の後ろ盾となった。義理堅いドゥテルテ大統領にとって、同州知事の父であるマルコスを英雄墓地に葬ることは「ウータン・ナ・ロオブ」を返すことも意味していたようだ。
文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。

 
 
 
 
 

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