セブの隠れ家レストラン
手打ち蕎麦・鰻 鎌倉
by: 蝶谷 正明(セブ日本人会)
万聖節、万霊節、ハロウィン(順番はよく分からない…)が終わった途端にモールも通りもクリスマス一色のセブ。パーティーシーズンの始まりです。私も既に大晦日にかけて10近くの会があるので体調と財布をしっかり整えておく必要があります。それ以外にも出費が止めどもないこの時期です。
さて今回、ご紹介するのはどんちゃん騒ぎを楽しもうという際には不向きですが、聖夜や年末を静かに過ごしたい人にはピッタリの知る人ぞ知るこじんまりとした蕎麦屋です。
よくもまあこんな場所にと思うくらい地味な場所にぽつんとあり、間口一間、カウンター5席、テーブル4席しかない店です。
乾麺を使用した蕎麦を出すレストランしかなかったセブで北海道産蕎麦粉を使った手打ちの二八蕎麦は、まさに革命です。食に対する感動を失って久しかったのでこの蕎麦に出会った時の感激は今でも忘れられません。蕎麦食いには本当に涙ものでした。蕎麦を手繰る手が止まらず、会話など蕎麦に失礼、あっという間に平らげました。普段、ダイエットだなんだと糖質を制限していたのが、この時ばかりは至福に浸ったものです。店主の坂田さんは日系企業の工場長でしたが、一念発起してこの店を開きました。手抜きができない頑固親父だからこその蕎麦だと思います。 蕎麦というのは地味なものです。特に私は盛しか食べません。薄茶色の麺に黒い汁、たったこれだけです。だからこそ、その日その時で微妙に風味、食感が異なります。それに対応するのは、まさに真剣勝負です。水一つにしても軟水化装置を設置しています。昆布も鰹節も醤油も味醂も極上ですが、いくら最高の素材を使っても水のPHが若干でも違うと蕎麦に表れます。だからこそ、常に五感を研ぎ澄ますことが求められるのです。
鰻は隣のミンダナオ島で日本向に養殖されているものを生け簀で仕入れ、亭主自らさばき、串を打ち、蒸して焼きます。さばいてからだと40分はかかります。蒲焼きはもちろんですが、白焼きがまた旨い。蕎麦食いは自称していましたが、鰻は高いというトラウマ?があり、それほど関心はなかったのですが、開眼しました。焼酎をちびりちびりやりながら白焼きをつまみます。鮮烈な香りが鼻を刺激する蒲焼きの山椒も粒をミルで挽くこだわりようです。
この店のお客さんは、圧倒的にフィリピン人です。皆さんリピーター、毎週通う方もいます。健康志向もあるのでしょうが、普段脂っこい、味の強い料理に慣れている舌がさっぱりとした中にも日本料理の基本である「出汁」の効いた蕎麦や鰻を求めているのでしょう。 これはまさに文化の啓蒙だと思います。
店の場所は説明するのがむずかしいですが、ぜひ、お試しください。
TEL:(032)318-2486 携帯:0917-329-0917
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