フィリピン料理のレストラン等で時々見かける、知る人ぞ知る野菜、それが今回ご紹介するパコです。この野菜、鹿児島や沖縄などでは「クワレシダ(食われ羊歯)」と呼ばれ、その名の通り食用にされます。台湾では過猫菜と呼ばれ、インド、タイ、マレーシアなどでも広く食べられています。ハワイではホーイオ、または「ワラビ」とも呼ばれるそうですが、見た目はそっくりでも、日本のワラビとは少し違うシダ植物です。
フィリピンでは、ルソン島からビサヤ地方の山あいや小川の岸辺などに自生しており、ケソン州のタヤバス等の山あいの町などでは収穫したばかりのパコが道端で安く売られている光景がよく見られます。マニラの市場でも運が良ければ新鮮なものが購入できます。包んである新聞紙を開き、黒く傷んだ部分や硬い葉や茎は廃棄し、緑色の綺麗な新芽だけを摘み取って使います。
パコには腸をきれいにしてくれる食物繊維が多い上、体に必要な微量栄養素も多く含まれています。含有するカルシウムが骨の形成に役立つためでしょうか、フィリピンの田舎では「パコを食べると背が高くなる」と言われるそうです。また体内で糖質や脂質を燃焼するのを助け、細胞の形成に役立つアミノ酸の生成を助けるリンが多く含まれています。そのためか、フィリピンの昔の人は「パコを食べると傷が早く治る」とも言ったそうです。これも実体験にもとづく生活の知恵かもしれません。また貧血予防に役立つ鉄分や、脚気を防ぐビタミンB1(チアミン)、動脈硬化や認知症の予防に役立つとされる葉酸も多く含有されています。
パコは日本のワラビと違い、あく抜きしなくても渋みや苦みが無いため、新鮮な新芽は生食もできます。通常はさっと湯通しし、シャキシャキした食感を残したまま、サラダにしたり、ココナッツミルク煮に入れたりします。サラダの作り方は簡単で、下処理をしたパコの新芽に、食べやすい大きさに切ったトマトと塩漬け卵、赤玉ねぎのスライスを添えて、お好みのドレッシングで和えれば出来上がりです。フィリピン風のドレッシングは、シンプルに酢に塩、さとう少々とコショウを加えたものですが、お好みによってパティス(ナンプラー)やカラマンシの絞り汁を加えても良いでしょう。フィリピンの多くの人たちにとってはソウルフードとも言えるシンプルなこの家庭料理は、あっさりしていて日本人にも食べやすい味です。皆さんも、フィリピン料理店や市場でパコを見かけたら、ぜひ挑戦してみてくださいね。(悦)
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