フィリピン料理を代表する麺類についてのシリーズの後編は、フィリピン各地で独自に育まれたパンシットの数々を紹介していきます。
パンシット・ロミ (Pancit Lomi)
パンシット・ロミは肉や野菜を炒め、塩と胡椒で味付けして水を加えたところに日本のうどんのような太い黄色い麺を加え、卵を溶きいれた麺料理です。バタンガス州のリパ市で華僑が始めた料理だと言われますが、現在ではあちこちにパンシット・ロミを売る店が並んでいます。毎年6月のリパ市の創立記念日に「ロミ・フェスティバル」が行われるほど、地元民に愛されるパンシットです。
パンシット・ルグルグ(Pancit Luglug) 、
パラボック(Palabok)、
パンシット・マラボン(Pancit Malabon)
パンシット・ルグルグとパラボックは、どちらも米粉でつくった麺に、オレンジ色のソースをかけた料理です。オレンジのソースは海老の殻から出汁を取り、アナトという植物の種でオレンジ色をつけたものです。ルグルグもパラボックも、上には卵やイカなどが乗っていて、全く同じに見えるのですが、ルグルグの方がパラボックよりもやや太い麺を使うのが特徴です。ルグルグ(luglug)というのは、お湯の中に麺を入れてほぐす動作を表す言葉だそうです。また、パンシット・マラボンはマニラ港近くのマラボン発祥のパンシットという意味で、パンシット・ルグルグやパラボックのマラボン版です。海老の殻からとった出汁にカニみそを加えたり、魚の燻製、豚皮をパリパリに揚げたチッチャロンを砕いた物などがトッピングされる場合もあり、一般的なパンシット・パラボックより豪華な印象で、持ち寄りパーティーなどに好まれます。
パンシット・ルクバン(Lucban)、
パンシット・ハブハブ(Habhab)
ケソン州ルクバン発祥のパンシットがこのパンシット・ルクバン。見た目も作り方もマニラのパンシット・カントンとあまり変わりませんが、ミキ・ルクバンと呼ばれる細めの卵入り麺を使い、具にペッチャイ・タガログ(Petchay Tagalog)と呼ばれる青梗菜が入るのが特徴。これをバナナの葉につつんだものをテイクアウトして、フォークなどを使わず、入れ物を直接口に運んで食べることをタガログ語で「ハブハブ」(habhab)と呼ぶことから、パンシット・ハブハブとも呼ばれます。
ラ・パス・
バッチョイ
(La Paz Batchoy)
バッチョイはパナイ島イロイロ市のラ・パス地区発祥のスープ入りの麺です。一見、普通の「マミ」と変わらないように見えますがバッチョイには豚の臓物(レバーや心臓など)や豚皮を揚げたチッチャロンを砕いたものが入っており、夏バテに効果がありそうです。
パンシット・モロ(Pancit Molo)
バッチョイと同様、パナイ島イロイロ市発祥の料理ですが、こちらはモロ地区発祥のため「パンシット・モロ」と呼ばれます。豚のミンチを入れたワンタンがスープに入っています。パンシットとは言っても、ワンタン以外の麺は入っていないので、モロ・スープとも呼ばれます。
パンシット・オドン(Pancit Odong)
パンシット・オドンはミンダナオ島ダバオ発祥の料理で、上記ロミと同じような黄色いうどん状の麺を、イワシのトマト煮の缶詰と食用ヘチマを煮たものに入れて食べます。オドンは色は黄色いものの、うどんにそっくり。それもそのはず、ダバオに入植した日本人が持ち込んだうどんをフィリピン風に調理したのが始まりだったのそうです。オドンは、実は日本発フィリピン育ちのパンシット「うどん」のことだったのです。(悦)