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2017年6月15日

フォーチュンアイランド珍道中  ー禍福はあざなえる縄のごとしー
文・写真:大矢 南

名物「パルテノン神殿」の遺跡もどき。写真撮影、ポーズの工夫に余念のないフィリピン人旅行者のみなさん。眼下にはひときわ深い青の西フィリピン海(南シナ海)が広がる

4月上旬。じりじりと強い日差しが照りつける夏真っ盛りのフィリピンに、日本から先輩の恵美子さん(仮名)がやってくることになった。海が大好きな恵美子さん。マニラ首都圏から日帰りか一泊で楽しむことができる美しい海を求め、今回私が選んだのが、「フォーチュンアイランド」だった。
せっかく忙しい中時間を作って来てくれる上、初めてフィリピンの海に行くのだから、近場とはいえ海の美しさは妥協したくない。カビテ、パンパンガ両州はだめ。ケソン州まで行くのは遠い。ダイビングをするわけでもない。東ミンドロ州のプエルトガレラやバタンガス州西・南部海岸沿いのビーチもさして驚きがなく飽きていた私は、フェイスブックの「おすすめの投稿」に現れたフォーチュンアイランドの写真に目を奪われた。ビーチリゾートが立ち並ぶバタンガス州ナスグブ町からバン(モーター付アウトリガー小舟)で約1時間沖に出たところにある無人島。濃淡の異なる海の青が澄んでいる。「ここにしょ!」バンカの交渉など現地での手間を省くめ今回はバンカとテント付き日帰りグループツアーに参加することにした。1人1,290ペソなり(※ナスグブ町埠頭現地集合)。

(上)西側の絶壁では飛び込みポイントもある。波が低く海が穏やかであればOK  (中)浜につけられない船に浮き輪で乗客を運ぶ… (下)島には白い砂浜が広がる。陰になるコテージや大きな木はないため、テント持参組が多い

(上)西側の絶壁では飛び込みポイントもある。波が低く海が穏やかであればOK(中)浜につけられない船に浮き輪で乗客を運ぶ…(下)島には白い砂浜が広がる。陰になるコテージや大きな木はないため、テント持参組が多い

s-フォーチュンアイランド9ed

青い海と「ギリシャ神話の世界」に出発
フィリピン人旅行者には、島にある「パルテノン神殿の遺跡もどき」が絶好のセルフィースポットとして人気のようだ。「まるでギリシャ神話の世界!」の文字がブログに踊る。島の名前といい、遺跡もどきといい、若干の胡散臭さは感じたが、とにかく写真の海がきれいだった。
当日は私と恵美子さん、私の夫カルドさん(仮名)と、勤め先のドライバーであるホアキンさん(仮名)の4人組でいざ出発。仕事を終えた土曜の午後に出てナスグブ町で一泊し、翌日曜の朝5時にバンカに乗って島に行く。フォーチュンアイランドは無人島だ。宿泊施設はない。真水も電気もない。出発前にミネラルウォーターを大量に買い出しした。ホアキンさんはエンペラドール1.5リットル瓶2本を軽々と買い物かごに入れる。チェイサーはアイスティーにしよう。しょうゆと酢、洗って使えるプラスチックのコップとお皿を家から持参し、準備完了。土曜の晩御飯と島での昼食の食材はナスグブ町の市場で現地調達だ。
日曜は朝4時に起床。肉、魚が届いたばかりの市場に行く。炭火焼用の豚バラ肉、魚、ナス、トマト、しょうが、にんにく、お米、炭、おやつのバナナ、ポンカンを買う。炊飯用の鍋と包丁は、昨夜泊まった民宿のおかみさんに貸していただいた。
5時に待ちあわせ場所に集合し、我々の添乗員や他の参加者と合流したのだが、一向に出発の気配がない。頼りなさそうな添乗員の女性がバンカの元締めみたいなお婆さんともめている。他のツアーグループはみんなバンカに乗って海に出てしまった。聞けば、添乗員の女性、ここに来るのが初めてらしい。遅れること約1時間半。やっと出発したは良いものの、今度は天気が優れない。途中から季節外れの小雨も降り出す始末。「運」が悪い。風が強くて肌寒く、波が高い。曇っているから海の色も映えない。気が付くと島の目の前で、船が止まっている。船頭の男たちが「波が高いから浜に船をつけられない」「裏の絶壁の船着き場につけよう」「いや、あそこも波が高い」、ああでもない、こうでもないと言いながら、島の東側の浜の前と西側の絶壁を船で行ったりきたり…。ホアキンさんはイロイロ州、カルドさんはサマール州の農漁村の生まれ育ちだ。自然の中での生活には慣れている。「なにをぐずぐずやってんだ。俺の田舎の船乗りならとっくに上陸してる! この波なら浜からいけるだろう!」優柔不断な男たちにホアキンさんがげきを飛ばす。1時間近く島の周りをうろうろした後、男たちは船を浜の40mほどに近づけ、そこから浮き輪に乗客を1人ずつ乗せてお兄さんたちが浜まで引っ張っていくという衝撃の作戦を説明した。荷物も少しずつ浮き輪で引っ張って往復だ。船をロープで岩に固定する作業でさえ手こずっているため、ホアキンさんがしびれを切らして海に飛び込み指揮を取り始める始末。船の男たち以外で泳げるのは私たちだけ。浜まで泳いで上陸した。
好運の女神が降臨?
神の御慈悲に違いない。上陸したら快晴になり、陽光が空から真っ直ぐに島を照らし始めた。海の水が光って写真で見た景色が目に飛び込んでくる。最高に気持ちがいい! 荷物をテントに移し、早速散策に繰り出す。島の管理人のお兄さんたちの話によると、フォーチュンアイランドはレビステ元バタンガス州知事がギリシャ風高級プライベートリゾートとして開発したが、真水の確保が難しく、途中で開発が中止になってしまった物件らしい。長く放置されていたが、韓国人投資家が島を借りて管理し、2013年から日帰りツアーや、キャンプ客向けに開放し、にぎわうようになったという。とは言え、設備は管理人用の自家発電機1台のみ。清潔感のあるトイレもない。それでも景色はとても美しい。特に西側の絶壁から臨む西フィリピン海の深い青と地平線は自然の神秘を感じる壮大さだ。島で手作りする料理も醍醐味の一つ。カルドさんとホアキンさんが手際よく周辺にあるブロックや木、残された網でかまどを作り、炭で火をおこしてご飯を炊いてくれる。私と恵美子さんも少しばかりお手伝いしながら、あっという間に豚バラと魚の炭火焼、焼きナスのサラダが出来上がった。昨夜作ってくれた小魚のキニラウ(酢締め)も残っている。潮風に当たりながら、フィリピン風に手でご飯を食べた後は、アイスティー片手にエンペラドールを回し飲む。自由と解放感。
波はやはりやや高く、風も強かったため、絶壁からの飛び降りジャンプやスノーケリングはできなかったが、十分に海を楽しむことができた。恵美子さんも気持ちよさそうだ。帰りの船が到着しはじめた午後3時ごろ、他のグループは1つ、また1つと帰途に付く。怪しい。我々の船が来ない。添乗員に聞くと、「4時に予約してます」という。ほんまかいな。まぁ、暗くなるまでに帰れればいいかと思い、やはり帰りも波が高いため浜に船をつけられない他の船の男たちが、乗客と荷物を突っ込みどころ満載の作戦でそれぞれ船に引っ張るのを、恵美子さんと突っ込みながら眺めていた。
フォーチュンアイランドなのに…
5時になっても船は来ない。添乗員は慌てて電話している。「6時に来ます」。いや、絶対こーへんやろ。日が沈んでから、海の中を客1人1人浮き輪で引っ張っていくのは危なすぎる。6時、7時。来ない。暗くなりはじめ、さすがの私もイライラしてくる。添乗員に詰め寄るも、「ほかのグル―プを先に送っていってしまったようで、波も高くて、その後に必ず9時に迎えに戻ってくると言っています」。全くもって要領を得ない。「運」の悪さを憂いていると、「たき火をしよーう!」とカルドさん。ホアキンさんとあっと言う間に木を集め、上手に組んでキャンプファイヤーを作ってしまった。立ち往生をくらっている他のみなさんも火に集まってきて、談笑が始まる。客の1人が言って皆が笑った。「『フォーチュン』アイランドだと思ってたら、とんだ『アンフォーチュン』アイランドだ」こういうときのフィリピン人の適応力と場を楽しむ能力には感服する。私の心の中にはまだどこかに「9時に船が来て帰ったら、ギリ明日はちゃんと仕事に出れるな」という余裕があって、パチパチと燃える炎の周りでイフガオ民族の踊りや炭坑節を踊った。
10時。船が到着。浜にはつけられないので、絶壁側に来いという。船は絶壁の目の前で100mの前進と後退をただひたすら繰り返し、まったくロープが届かない。月明かりの下、船についているたった一つの電球の光が上下する幅を見ていれば、波がかなり高いことが分かる。船頭は優柔不断の塊のようなおじさんだった。ただ船が行ったり来たりするのを見ているだけで、対策を打ったり指示する様子もない。客たちがしびれをきらして、今夜はもう危ないから明日の早朝まで海が穏やかになるのを待つ方向で話を進めはじめる。この時点で私の頭の中は「仕事に間に合わない。やばい」。悲しきかな日本人の思考回路でうろたえる私の隣で、「生きてたら大丈夫。フィリピンの貴重な体験ができたわ~ありがとう」とは恵美子さんのお言葉。フィリピン人並の懐の深さと落ち着きに救われたのだった。カルドさんはこの状況を逆に楽しもうといわんばかり。ホアキンさんは船の男たちや管理人とのおしゃべりに花を咲かせている。なぜか船でジョリビーを運んできており、立ち往生組約30人は電球の明かりの元、「チキンジョイセット」で晩餐となった。
夜中、お手洗いで目が覚めた。テントの外に出て空を見上げて驚いた。満天の星空。手を伸ばせば届きそうとはまさにこのことだと思った。落ちてきそうなくらい。今まで見た中で一番近くて満天の星だった。「運」が良いなと思った。
まだ、続きがあった
疲れ切った体で朝5時すぎに起床。海水でギシギシの髪の毛、ぐしゃぐしゃの顔のまま朝日を眺める。幸い海は穏やかで、船は浜に直接乗り上げた。朝は気温が低く風が冷たい。体が濡れると確実に風邪をひくので、海を泳いで船に行く必要がなく助かった。宿にて超特急でシャワーを浴びさせてもらい、お礼を行って会社に向かう。宿のおかみさんが言った。「昨日は季節外れなほど波が高かったでしょ。心配してたの。めずらしいから」。本当に「運」が悪い。
この次の日、火曜日の夜にバタンガス州を震源としたM5.5の地震があった。首都圏の勤め先でも揺れを感じた。家に帰るなりカルドさんが「いやぁ、本当にみんなで無事に帰ってこれて良かった! バタンガス出身のご近所さんと話してたんだけど、フォーチュンアイランドで波が異常に高かったのはたぶん地震の前兆だって! 地震の前に無事帰ることができて運が良かったね、僕たち!」。禍福はあざなえる縄のごとし。幸福と災い、幸運、不運はより合わせた縄のように、表裏一体、かわるがわる訪れる。縄はそれでも1本につながっていて、どちらの「より」がどちらか分からないように、見方によってトラブルを楽しむ心持を改めて学んだ小旅行だった。
Fortune Island: Greek culture amidst a tropical setting
Just 15 kilometers off the coast of Nasugbu, Batangas, Fortune Island gained popularity for its version of the famed Greek Acropolis. Magnificent views of the horizon are best taken from the Acropolis. Visitors can choose to stay for a day trip or camp overnight, stroll along the beach, ride the waves in the shallow but rough waters or take the plunge from the cliff diving point straight into the deeper parts. Or one can simply find a spot and relax with friends while enjoying the panorama.
What to bring: water, sunblock, food and drinks, garbage bags, charcoal for grilling, etc.