進みつつある鉱山開発をテーマに
by 反町眞理子(環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク」顧問)
ここ数年の観光ブームに沸くバギオだが、誰もが訪れる観光名所と言えば「マインズ・ビュー・パーク」。バギオの中心から5キロほど北東にある小高い丘の展望台は、週末には記念写真をする人々であふれかえっている。
「マインズ・ビュー」の「マインズ」とは、「鉱山」のこと。訪れる観光客は遥か彼方に見える美しい山並みと流れる雲に感嘆の声を上げるが、その手前のむき出しになった茶色い山肌に関心を抱く人はほとんどいない。それこそが「マインズ=鉱山」地域。バギオよりさらに奥に入ったコルディリエラ山岳地方には、実は金をはじめとする鉱物資源が豊富に眠っているのである。
長い間、棚田の稲作と豊かな森の恵みを享受した自給自足に近い暮らしを営んできた山岳地方の先住民であるが、現在では道路や電力などのインフラ整備が進み、同時に貨幣経済はかなりの山奥にまで浸透。古来の現金のいらない暮らしはむずかしいものとなっている。生計手段がない中で、今まで手を付けずにきた鉱物資源(特に金)の採掘を、個人やコミュニティで行う者も出てきた。違法なダイナマイトを使った採掘や、危険な薬品を使った精錬も秘かに始められているという。
バギオを拠点とする環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」は、2001年の設立以来、先住民族を対象とした環境教育を行ってきた。当初は森林伐採とそれに伴う水源枯渇などをテーマとすることが多かったが、数年前から山岳地方で進行しつつある鉱山開発をテーマとした環境教育を開始した。昨年には、日本から花崎攝、吉田智久という二人の演劇教育専門家を招聘してワークショップを行った。参加した先住民の青少年たちは、山岳地方で鉱山開発に関わる様々な立場の人々にインタビューし、モノローグ・テキストをベースとした演劇制作を行った。
CGNでは、今年もこの夏休みを使って、鉱山開発をテーマとした演劇ワークショップを継続し、一般にはほとんど知られていないコルディリエラ山岳地方の鉱山開発の現状と、そこに暮らす先住民族の生き方をテーマとした演劇作品を制作する。今も継承されているマウンテン州伝統の唄や朗誦、民族舞踏、金をめぐる伝承や民話などを取り入れた作品となる予定だ。公演はバギオの他、マニラ、インドネシア・アチェでも予定されている。
Information 【マニラ公演】 「Balitock(Gold)-Voices from the Mines」 日時:2017年7月29日(土)午後7時~ 会場:TIUシアター(瓜生劇場) Amorosolo st.cor Dela Rosa St., Makati City ☎ (02)845-0804 / (02)478-9410 入場無料 国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造協働助成 問い合わせ:cordigreen@gamil.com / 携帯: (0928) 521-8124(日本語可) |