調理用のバナナとして知られるサバ・バナナ。フィリピンでは、素揚げにして大学イモのようにカラメルをまぶしたバナナ・キューや、ジャックフルーツと一緒に春巻きの皮で巻いて揚げたトゥロンがポピュラーです。豚肉のニラガと呼ばれるスープ料理にもサバ・バナナが入っていることがあります。フィリピンのお土産としても定番のバナナ・チップスはこのサバ・バナナが原料として作られていますし、完熟して皮が黄色くなったものは生食もできます。生で食べてみると、一般なラカタン・バナナより、やや淡泊でモチモチしてトロッとした食感が特徴です。フィリピンではサバ、またはサギン・ナ・サバと呼ばれるほか、カンダバ・バナナとも呼ばれます。
トマト・ケチャップが高価なフィリピンでは、バナナから作ったバナナ・ケチャップも販売されていますが、この原料になるのもサバ・バナナです。子供のころから慣れ親しんだバナナ・ケチャップのほうがトマト・ケチャップより好きだというフィリピン人も少なくありません。サバ・バナナの花は赤くて心臓のような形をしているため、プソ・ナン・サギン(バナナの心臓)と呼ばれ、野菜として市場で売られています。外側の堅い皮の部分と、花の部分は廃棄し、中の柔らかい部分だけを調理します。
サバ・バナナには炭水化物の他、ビタミンB群、食物繊維、ビタミンC、ビタミンA、そして鉄分が含有されており、生食用のバナナよりもカリウムが多く含まれます。カリウムは体内の余分な塩分を対外に排出してくれるため、健康な血圧を保ったり、むくみを解消するために役立つ上、発汗によって崩れやすい電解質のバランスを整え、足が攣るのを予防してくれる働きも期待できます。またこのカリウムが、尿酸が結晶化して関節などに溜まるのを防ぎ、体外へ排出してくれるので、関節炎の予防にもなると言われています。最近の研究では、運動中または運動後にバナナと水分を摂取すると、筋肉の炎症を抑える効果が得られることがわかってきているそうです。
また一般的な方法ではありませんが、筆者のおすすめは、黄色く熟したサバ・バナナを皮ごとさっと洗い、フォークでプスプスと突き刺して穴を開け、5~6分程度電子レンジにかけて、皮をむいて食べる方法です。これなら茹で汁にカリウムが流れ出てしまうこともありませんし、さっと手軽に作って食べられます。暑い季節のカリウム補給に皆さんも活用してみてください。(悦)