A Japanese “Tanabata” living in Baguio and a local woman Fas-ang.
Where does the love of two men and women go? …
日系人作家の短編を完全翻訳。一挙掲載。
読む前に観るか?、観る前に読むか?
Fully translated Japanese Filipino writer’s short stories. All posted here.
Do you watch before reading? or Do you read before watching?
あなた次第です。
It’s up to you!
七夕の妻
(Ⅰ)
ファサンは初めてバギオを訪れた。山岳列車に揺られ続け、疲れ切った彼女の姿がトリニダード渓谷の真上にあった。そこから、彼女はバギオの街を見下ろしていた。
バギオが彼女の目的地である。彼女は同行した3人の女たちと一緒に道路工事の現場で働く予定だった。原住民の女たちには鎌が与えられ、山腹の地面を削り、道路を作るための小道を切り開くのだ。
他の同行者たちは既に到着していた。ファサンは現場が決まるまでの期間、どこに 住むのか知らされていなかった。彼女はたぶん飯場で他の労働者と彼らのくさい臭いとともに寝泊まりさせられるのだと思った。彼女は人に溢れた天井の低い建物や段ベッドなど多くのことを聞いていた。
昼下がり。ボントックから来た女4人と男3人の新しい移民たちは、トリニダード渓谷を歩いていた。彼女たちの人生でかつて見たこともないほど長くまっすぐに伸びた道だった。しばらく行くと丘越えの上り下りが続き、平坦な道に戻ると単調になり歩みが遅くなった。
彼女たちは、渓谷の背後に沿って、トリニダード川の狭い隙間を抜けルクバンへ入った。道に沿って目にする光景はどこまでも広がるキャベツ畑だった。ルクバン渓谷を通り過ぎ、行き着いたキサド渓谷もまたキャベツが列をなし連なっていた。
太陽は茶色に染まった西の丘に低く沈んでいた。男たちは今夜の宿泊について考えていた。なぜなら、飯場にたどり着くためにはもうひとつ急な丘を越えなければならなかった。結局、歩き続けることが彼女たちに告げられた。彼女たちの足はひどく痛んでいた。
渓谷のわらぶき家の扉は彼女たちのためには開かれてはいないのか?
彼女たちは七夕の家の前にたどり着いた。日本人の農園主は彼女たちが通り過ぎようとするのを小さな窓越しに眺めていた。彼は彼女たちに呼びかけた。
「仕事を探しているのか?」農園主は片言の現地語で尋ねた。
「はい、私たちの仕事を…」ひとりが答えた。
七夕は「もしよければ、私の農園で女2人分の仕事がある」と、告げた。
男たちはいぶかし気に七夕と女たちを見比べた。「ここに留まりたい奴はいるか?」ひとりの男が問いただした。
ファサンだけが農園主の申し出を受けてもいいと思っていた。彼女は前に歩み出た。
「あなたは私にいくらくれますか?」
「10ペソだ」
「10ペソ?」ファサンは12ペソを求めようとしたが、七夕は取り合わないだろうと思った。ファサンはしばし案じた後、彼女の仲間に「私がここに留まるとして、道路工事の給金とここの給金は2ペソ違う。でもことによったら私にはここのほうがましかもしれない」
ファサンは決意した後、3人の中のもうひとりにも、ここに留まるように説得した。七夕はその様子を微笑みながら眺めていた。
休憩していた一行はまだ道半ばだ。「さて、2人はここに留まる」年かさの男が言った。「お前たちがそれぞれにとって良いと思えるなら、きっとうまくいく。私たちの心配は不要だ。私たちはこのまま進み今夜早くには飯場に到着する」。
こうして、ファサンはまず、七夕の使用人となった。彼女は女性として最も魅力的な年ごろを迎えていた。頬は少女時代よりもしまり、艶を増していた。豊満な乳房は彼女の健康な体をさらに魅惑的に映し出していた。彼女が歩いた後の足跡さえ美しく思えた。誰もが彼女が本当に魅力的であることを認めていた。
(Ⅱ)
七夕には妻がいなかった。彼は今まで長い間、彼との結婚を望む原住民女性を探していた。しかし出会うことはなかった。ファサンが運命に導かれて訪れるまでは…。彼はもう少しで日本から嫁を娶るところだった。彼はその女性の写真を持っていた。しかし、それは彼にとって大金を要することだった。
ファサンはやがて七夕に好意を抱き彼との結婚を望むようになるのだろうか?
ある夜、切なくファサンに思いを巡らしていた七夕の心の中に確かな覚悟が生まれた。ファサンは家の前の水路で足を洗っていた。時折彼女は膝までスカートを持ち上げて見せた。七夕は輝く素肌を見せつけられ、魅了された。
ファサンも七夕を強く意識し始めていた。彼らが夕食を前に低い丸テーブルを挟んで座ったとき、彼女はひそかに彼を伺っていた。彼はあごひげを蓄えていた。彼は時々、3日間ひげを伸ばした。その毛深い様は醜く思えた。ただ、彼の整った顔立ちと青いシャツは結局ファサンを魅了していた。
身支度を整えた七夕は日曜の市場へ出かけて行った。彼の使用人が2つの大きな籠を肩に担いで彼の後に続いた。籠はイチゴ、セロリ、トマト、ほうれん草、大根、そしてドライフラワーなど農園の作物であふれていた。ファサンも晴れやかな外出着を着こみ、後を追った。ファサンは市場で農園の作物を売ることになっていた。
午後、市は終了した。ファサンは店を閉め重い手提げを持って家へ向かった。彼女が家に到着したとき、七夕はテーブルの上に転がった半分空っぽのジンで酔っ払っていた。
ファサンはお金の入ったバッグを彼の交差したひざ元に置いた。「これが野菜の売り上げです」と、彼女は告げた。
「お疲れさま」。七夕は幸せそうな笑顔を浮かべた。彼は「ありがとう」と彼女に声をかけ、ファサンに全幅の信頼を示した。彼は1/2ペソコインを2つを取り出すとそれを彼女に渡した。「さぁ、受け取れ。これはお前のものだ。お前が欲しいものを何でも買っていいぞ」彼は愉快そうに笑った。
彼は聡明で寛大な農園主だった。
平日は仕事に忙しく、勤勉な日々が続いた。もうひとりの原住民女性は自分がファサンほど気に入られていないと気づいたときに去っていった。ファサンは家事が終わると、キャベツ畑で葉についた虫を取っていた。七夕はいつも小屋で苗を世話することに熱中していた。土の息吹を感じ取れる繊細な指を持つ彼はほとんどの育苗作業をひとりで行っていた。彼は3つの農園分の苗を手掛けていた。
「おはよう! 新しい朝!」ファサンは繰り返される毎日を楽しんでいた。彼女は少しづつ家事を覚えた。早朝、彼女は調理のために目覚める。昼、彼女は再び調理する。そして夕方も同様に。彼女はその合間合間に洗濯をし、不規則に届けられる洗濯物もさらに洗う。彼女は家を掃除しながらも、火鉢で沸いている茶釜に気を配ることを忘れない。七夕はいつ帰ってきても一服のお茶を味わうことができた。
(Ⅲ)
日の午後、七夕は散歩がてらに近所の岡本宅を訪ねることを好んだ。彼らは広島県という日本の同じ地方の出身だった。岡本はベンゲット出身の女性を妻にしていた。川根はマメで人懐こい友人だった。岡本がファサンに唯一見出した過ちは彼女の無知だった。彼女は小さな渓谷の向こうを何も知らなかった。
ある日の午後、七夕はいつものように友人を訪ねた。それは重要な話だった。ファサンが彼にとって良い妻になれると思うか?七夕は岡本に彼の気持ちを伝えた。七夕はゆっくりと話しを切り出したが、岡本は直接的だった。
「あの女と結婚しようと思う」と、七夕が言った。
「どの女だい? ファサンか?」岡本が聞き返す。
「そうだ」
「彼女は良い女だ。彼女はてきぱきと立ち振る舞う」
「私はほんの短い間だが彼女を見てきた。彼女はこれからも正しく振る舞えると思うかい?」七夕は真剣に尋ねた。
岡本は躊躇し、はっきりとは答えなかったが「私の妻を見てくれ。私たちは平和に暮らしている」と言った。
「あなたは私の親友だ」岡本が続けた。七夕は友人を見た。「あなたの妻はベンゲット族でファサンはボントック族だ」
「それでも彼女たちは親友だ。私たちと同じぐらいに」岡本の明快な答えだった。彼らはともに笑った。
(Ⅳ)
2日後、七夕は決意した。彼はこれまで度々彼女をからかってきた。しかし今、彼はファサンにどう打ち明けるべきか真剣に悩んでいた。彼はこのおおらかな原住民女性に強く魅せられていた。
七夕は普段ファサンが掃除をするとき以外はめったに足を踏み入れない大部屋に彼女を呼び出した。そこには薄暗い明かりが灯っていた。緊張した様子もなくファサンは入ってきた。彼女は既にこの時を予期していたようだ。 彼女は彼の向かいに背筋を正して座った。七夕は慎重にゆっくりと話した。七夕はファサンに思いの丈を誠を尽くして伝えた。そして、彼女はそれを受け入れた。式もなく、入籍もなく、暗黙の誓いを互いに交わし二人は結ばれたのだった。
ファサンは以前のように農園作業が難しいとは思わなくなっていた。ただ、それは時に退屈に感じられた。日々の作業に彼女は時々苛立ちを覚えた。それはほんの一時のことであったが… 毎日、彼女は市場で販売するために作物の虫を取り、まっすぐに伸ばして束ねる作業を辛抱強く繰り返していた。彼女の手は繊細な作物の扱いに長けてきていた。
太陽の陽が渓谷いっぱいにそそぎ、露を纏った葉がキラキラと輝く中、庭をひらひらと舞う白い蝶を眺めることはとても楽しみだった。だが、彼らの幼虫は緑の野菜を容赦なく食い荒らす害虫だ。それでも、明るい朝の彼らの出現は使用人たちを和ませ、元気づけた。
やがて、ファサンは日本の慣習を覚えていった。七夕に従い箸の使い方を学び、小屋の外にある風呂場で夕方に湯を沸かし風呂に入った。ファサンは日本流に桶に塩を振り大根を漬けた。フィリピン製ではあるが木靴を履き始めた。そして、床に就く前には寝室の外にそれを置いた。彼女はお茶を飲むことにも慣れ、多くの料理に醤油を注いだ。布団も和式のものが彼女に合わせて作られた。
結婚して1年が過ぎ、彼らは男の子を授かった。赤ん坊はとても愛らしかった。
七夕は祝いの席を設けた。彼は日本人の友人を招待し洗礼の宴を行った。彼らは酒を酌み交わし日本の海藻や漬物、缶詰などをつまんだ。
しかしファサンはこの賑わいの中、彼らの会話を理解することができなかった。彼女は静かに赤ん坊を腕の中に抱きしめるだけだった。
宴の途中、ある男(その日女性の来客はなかった)が赤ん坊と母親に贈り物を届けにきた。ファサンはとても喜んだ。贈り物が彼女の前に積み重なる度、彼女は喜びを繰り返した。
男は日本の暦を調べた。赤ん坊は加藤と名付けられ、客たちは酒を満たしたグラスを天に掲げ、何度もバンザイと叫んだ。彼らは母と子のために祈った「幸せが訪れますように」と…
七夕は出産によって憔悴したファサンの体調回復を最も気にかけていた。彼は1か月間は屋内に留まらなければならないという日本の習慣を教え、その後に外出許可を与えた。
そして8月が過ぎたとき、ファサンは温かく自由な日差しの中へ歩み出た。頬の青白さは消えていた。彼女は活力と若さを取り戻していた。彼女にいつものような軽快な足取りが戻った。彼女は軽やかさ情熱と力強さに満ちていた。ところが…
(Ⅴ)
今日はどんな話し? ファサンはボントックから戻った人たちの話をしきりに聞きたがった。もう、焼き畑にカモテとトウモロコシは一緒に植えられたかしら?
ファサンの家族は彼女が子供を産むことを聞いていた。そして彼女の様子を心配し、従弟を送り出した。彼はファサンが幸せに暮らしているか? ファサンの日本人夫は彼女を大切にしてくれているか? それを確かめてくるように言われていた。
だが、それは間違いだった。彼らは七夕に苦難をもたらす存在だった。ボントックの人たちは感情的だ。
従弟がやってきた。七夕は従弟をもてなした。彼は少年のために短パンを買い与え褌をやめるように言った。少年はとても喜んだ。1週間後、少年は帰るといった。七夕はさらに少しの服を買い与えた。
ファサンは従弟を見送りに出た。七夕は小屋で苗の栽培を続けていた。ファサンは従弟に言い聞かせた。「お父さんとお母さんには私は幸せに暮らしていると伝えて。だから私のことは何も心配することはないと。主人は親切だし、私に欲しいものは何もないわ。少しだけど、私が貯めたお金をお父さんに渡してちょうだい。そうよ、私には子供がいる。だから、私はここに住み続けるの。でも、いつかは家に帰ってお父さんやお母さんに会いたい。本当は時々ホームシックになるの…」
ファサンは泣いた。彼女の涙を見た従弟もまた泣いた。そして、彼らは分かれた。
(Ⅵ)
七夕が彼の妻を深く愛していたのは誰もが知るところだった。あらゆる機会に彼はその愛情を彼女に示した。かつて、彼は映画を見るために彼女が街に行くことを許さなかった。しかし、結婚後は特に気にすることもなく彼女を送り出した。ファサンはすぐに映画に夢中になった。彼女はひとりの使用人の少年と時々出かけるようになった。 彼女は赤ん坊を背負って連れていった。彼らは帰り道を照らす灯油ランプを持っていた。きっと彼らは真夜中近くに戻ってくるだろう。
七夕は一人家にいた。彼は日本の小説を読みながら遅くまで起きていた。ファサンが戻ったとき彼女は自分が見た映画について饒舌に語った。七夕は彼女の冷えた足を温めるために厚いブランケットで覆った。彼女はたやすく眠りに落ちた。そして彼も眠りについた。
ファサンはますます映画にのめり込んでいった。街は2㎞も離れていたが、それは問題ではなかった。劇場は魅力的だった。さらに、ファサンはしばしば親戚や同郷の仲間と劇場で出会った。彼らもまた映画にはまっていた。彼らはともに楽しいひと時を過ごした。
七夕は岡本にファサンが映画に明け暮れていることについてどう思うか尋ねた。岡本は贅沢を好まず保守的なためそれを良しとはしなかった。彼は彼女を止めるようにアドバイスした。しかし、七夕はそれを彼女にほのめかすことすらできないほど、彼女に甘すぎた。高圧的に振る舞う時もあったが彼女が望む楽しみを奪うには彼は彼女を愛しすぎていたのだった。
ファサンは仕事が終わると連日映画に出かけた。七夕はより寛容になっていった。彼は彼女をとどめ置くために勇気を振り絞ることはできなかった。彼女を叱る機会はめっきり減った。彼女は劇場のプログラムのひとつの変更も見逃さなかった。七夕は彼女とどう向き合えばよいのか分からなくなっていた。彼は何が彼女を映画に引き付けているのか理解できなかった。彼にとって映画は、はるか昔に観た記憶だけで全く興味をそそられるものではなく、うんざりさせられただけだった。
しかし、ファサンは相変わらずひたすら出かけて行った。
(Ⅶ)
ある夜、彼女は帰宅しなかった。彼女は朝戻ってきた。七夕はどこで眠ったのか尋ねた。そして、彼女が答えた「従弟とカンポ・フィリピ―ノで…」。彼女は体がだるく、農園へ行くことができないと言った。
一日中、彼女は家にいた。七夕は農園へ出かけた。ファサンは自分の荷物をまとめた。彼女はそれらを束ね隅に隠した。彼女は子供に服を着させた。そして、真夜中。七夕の寝息を聞きながら彼女は逃げ出した。ファサンは彼女の恋人が待つ場所へ子供を抱えながら駆け下りていった。彼らは彼らの故郷ボントックへ戻るつもりだった。その男はキャンプ・ジョン・ヘイの軍属から解任されていた。ファサンは立ち去る前にテーブルの上に手紙を残した。それは彼女を誘惑した男によって書かれたものだった。
「私たちを追いかけないでください。ボントックの家に帰ります。もしあなたが私たちを追えば、あなたは道中で殺されます」
七夕はその手紙を読んだときあえて遁走した恋人を追うことはしなかった。その内容は突飛すぎた。むろん、たとえ追って行っても七夕に死が訪れることなかっただろう。彼は悲しみに暮れていた。3日間、彼は食事をとることもできなかった。彼は裏切られ、捨てられたことに苦しみもがいた。救いのない中、彼は妻を誘惑し連れ去った男への憎しみを募らせていた。
岡本は友人宅を訪れ親身になって彼を慰めた。岡本は妻とともに、彼に一緒に暮らすことを提案した。しかし七夕は彼らの申し出に同意はしなかった。何事も彼の慰めにはならなかった。彼は友人に自分を一人にしてくれるよう丁重に頼んだ。七夕は悲観していた。彼は家の中に一日中座り込み大酒を煽った。彼は自分の殻に閉じこもった。農園は荒れ果てていった。
数か月が過ぎた。作付けされたキャベツは腐っていた。七夕は狂ったと思われていた。彼は作物に何が起こっても気にしなかった。彼は残された使用人たちを解雇した。雑草はどの苗よりも大きくなっていた。雨季が始まり、畑は嵐によってさらに荒れ果てていった。七夕はわずかな蓄えで暮らしていた。
雨季が終わった。晴れ日よりだが寒さが厳しくなる11月が丘に訪れた。1ヶ月の後、七夕は日本に戻り死ぬつもりだった。彼の落胆は極まっていた。七夕は失った息子のことを思うと号泣せざるを得なかった。
(Ⅷ)
予期せぬある日、ファサンは七夕の農園にいた。ファサンとの恋愛を疎ましく思った恋人は彼女のもとを去っていった。彼女は農園に無残に散らばった作物の残骸を取り除いていた。
彼女は村の人から七夕の様子を聞いた。「あなたの日本人のご主人は自暴自棄になっている」と、何人かが告げた。「彼はあなたと息子のことを思い続けている」別の人が語った。「彼は海を越えて日本に帰ると言っていたが、彼はその前に幼い息子を探しに出るつもりだ」また別の誰かが告げた。ファサンは思った。「あぁ、私は彼のもとへ行かなければ。手遅れになる前に…」
意を決し、彼女は七夕の家の前に立った。夕暮れどき、彼女は不安と期待に揺れる思いだった。彼女は七夕が演奏する竹笛が生み出す低く沈んだ音色を聞いた。あまりにも悲し気な音色だった。ファサンはその家の扉が今なお彼女のために開かれているのか不安だった。彼女は彼と暗く沈んだ闇を分かち合い打ち払うことができるのか?ファサンは感情に流され失態を演じてしまった自分を恥じた。
音が止んだ。ファサンは彼女の手を握った子供が大声で泣き出したとき心臓が止まる思いがした。七夕は窓の外を見て驚いた。妻と息子の姿がそこにあった。彼は慌てて外へ飛び出した。 彼は優しく手を取り、妻と息子をゆっくりと家の中へ招き入れた。
そして、天井からぶら下がり使われずにいた大きなランプに火を灯した。
Tanabata’s Wife
Sinai Hamada
I
FAS-ANG first came to Baguio through the Mountain Trail. When at last she emerged from her weary travel, she found herself just above the Trinidad Valley, where she overlooked the City of Baguio.
Baguio was her destination. Along with three other women, she had planned to come to work on the numerous roads that were being built around the city. Native women were given spades to shovel the earth from the hillsides, and to make way for the roads that were being cut.
They had almost arrived. Yet, Fas-ang knew of no place where she could live in the city while also waiting to work as a laborer. Perhaps, she would stay in the worker’s camp with the other laborers in their smelly quarters. She had heard a lot about tiered beds, the congestion in the long low-roofed house for the road workers.
It was mid-afternoon. The four women and three men, new immigrants from Bontoc, walk on the long straight road in Trinidad Valley. They had never seen before in their lives a road so long and straight. After the regular ups and downs journey over the hills, the level road was tedious to travel on.
Plodding along, they at last left the valley, passed through the narrow gap of the Trinidad River and entered Lukban Valley. Along the road, the sight was a string of cabbage plots, more and more.
When they passed the Lukban Valley and arrived to Kisad Valley still, there were rows and rows of cabbage.
But, the sun was sinking low behind the brown hills in the west and the company thought of their shelter for the night. For they had one steeper hill to climb before the city laborer’s camp. Their feet ached painfully. Was there no door open for them among the thatched homes in the valley?
It was then that they came to the house of Tanabata-san. The Japanese gardener, he was then looking out through his tiny window as they were about to pass on. He halted them.
“Are you looking for work?” the gardener called in his broken dialect.
“Indeed, we are, my lord,” one of the strangers replied.
“If you like, I have work for two women in my garden,” Tanabata offered.
The men looked questioningly at the women. “Which of you would like to stay?”
One man asked.
Only Fas-ang was willing to consider the gardener’s offer. She stepped forward.
“How much would you give me?” she asked.
“Ten pesos.”
“Ten Pesos?” Fas-ang asked for twelve, but Tanabata would not agree to that. Fas-ang reflected for a moment, and then answered, “Guess I’ll stay. There is but a difference of two pesos between what I’ll get here and my wage if I become a road worker. Who knows? My lot here may even be better.”
One of the remaining three women was also persuaded to stay after Fas-ang had made her decision. Tanabata was smiling as he watched the two make up their minds.
The rest of the company were going on their way. “So you two will stay,” the eldest of the group said. “Well, if you think it is better for both of you, then it is alright. You need not to worry over us, for we shall go on and reach the camp early tonight.”
In this way, Fas-ang first lent herself to Tanabata. She was at the height of her womanhood then. Her cheeks were ruddy, though not as rosy as in her girlhood. She had a buxom breast, her main charm. As she walked, her footsteps were heavy. She was indeed pretty that anyone would admit.
II
Tanabata had no wife. For a long time now, he had been looking for one among the native women, hoping he would find one and be married until, Fas-ang came by fate.
He had almost sent for a Japanese wife from his homeland. He had her picture. But it would have cost him much.
Would Fas-ang by chance learn to like him and later agree to a marriage? This was only a tiny thought in the mind of Tanabata as he sat one evening looking wistfully at Fas-ang. She was washing her feet by the water ditch in front of the house. Every now and then, she lifted her skirt above her knees, Tanabata saw her clear bright skin and tempting him.
After a time, Fas-ang herself would watch Tanabata as they sat before their supper, she casted furtive glances at him across the low circular table. He was bearded as sometimes he let his beard grow for three days, and his unshaven hairy face was ugly to look at. Only with a clean face, and well-dressed on his blue suit did Fas-ang like him when Tanabata-san would walk on Sunday to the market fair, she was close behind followed by one of his laborers, as he was carrying two heavy baskets over his shoulder. The baskets were overflowed of harvested from the garden: such as strawberries, celery, tomatoes, spinach, radishes, and “everlasting” flowers. Fas-ang, in her Sunday dress would trail in the rear. She was to sell the products at the market.
In the afternoon, the fair would be over. Fas-ang went home with a heavy handbag. She usually arrived finding Tanabata drunk, with a half-emptied gin bottle on the table.
Fas-ang lay the bag of money on his crossed legs. “Here are the amount the vegetables have brought us,” she reported.
“Good.” Tanabata responded with a happy smile. He always said gracias after that, showing full trust with Fas-ang. He would pick out two half-peso pieces and give them to her. “Here, take this, they are for you, buy yourself whatever you like.” For he was a prosperous, generous gardener.
On weekdays, there was hard and honest work in the garden. The other native woman had gone away when she felt that she was not favored as Fas-ang was. So, Fas- ang, when she was not cooking, she stayed among the cabbage rows picking worms. Tanabata did was to take care of the seedlings in the shed house. Also, he did most of the transplanting, since he alone had the sensitive fingers that could feel the animate sense of the soil. He had but little area to manage, and only three farm hands to look after.
New life! Fas-ang liked the daily turns that were her lot. Little by little she learned to do the domestic chores, during morning, noon and evening she cook in routine. She washed clothes occasionally, and more when the laundress came irregularly. She swept the house and of course, she never forgets to leave a tea kettle steaming over live embers at any time, because, Tanabata might come in and sip a cup of tea.
III
In the afternoon on weekdays, when the sun was hot and the leaves were almost wilting, Tanabata like to stroll and visit his neighbor, Okamoto-san. They were of the same province in Japan, Hiroshimaken. Okamoto had a Benguet wife, Kawane, who was an industrious and amiable companion. The only fault Okamoto found in Kawane was her ignorance. She had no idea of the world beyond her small valley.
One afternoon again, Tanabata as usual visit his friend. This was a great consequence, for he had a mind to ask Okamoto if he thought Fas-ang could be a fit wife for him. Tanabata was hesitant in raising that topic to his friend, but happened to say this direct as:
“I think I shall marry that woman,” Tanabata said.
“Which woman — Fas-ang?” Okamoto said.
“Yes”
“She is good woman, I think. She seems to behave well.”
“I have known her only for a short time. Do you think she will behave well always?” Tanabata asked sincerely.
Okamoto was hesitant and would not be explicit, “I cannot tell. But look at my wife, she’s a peaceful woman,” he answered simply.
“There, my good friend,” Tanabata reminded his friend, “you forget that your wife is of the Benguet tribe, while Fas-ang is of the Bontoc tribe.”
“Yet they are good friends — as much as we are,” was Okamoto’s bright response and they both laughed.
IV
Two days later Tanabata proposed to Fas-ang. He had frequently teased her before. But now he was gravely concerned about what he had to tell. He had great respect for this sturdy native woman.
He called Fas-ang into the big room where she heretofore seldom entered except to clean. It was dimly lighted. Fas-ang went in, unafraid. It seemed she had anticipated this. She sat close beside him on a trunk. Tanabata talked carefully, convincingly, and long. He explained to her as best as he could his intentions. At last, she yielded. Without ceremony and without the law, they were wedded by a tacitly sworn agreement between themselves.
As before Fas-ang did not find difficult to tend the truck garden. To be sure, it was sometimes dull. Now and then she would get exasperated with the routine work. But only for a short time. Ordinarily, she was patient, bending over the plants as she rid them of their worms, or gathering them for the sale in the market. Her hands had been trained now to handle with care tender seedlings, which had to be prodded to grow luxuriantly.
When the sunbeams filled the valley, and the dewy leaves were glistening, it was a joy to watch the fluttering white butterflies that flitted all over the garden. They were pests, for their chrysalids mercilessly devoured the green vegetables. Still, their advent in the bright morning could stir the laborers to be up and doing before they, themselves, were outdone by the insects.
In time, Fas-ang was introduced to Japanese customs. Thus she learned to use chopsticks after being prevailed upon by Tanabata; they had a zinc tub outside their hut in which they heated water and took a bath in the evening; Fas-ang pickled radishes after the Japanese fashion, salting them in a barrel; she began to use wooden shoes, though of the Filipino variety, and left them outside their bedroom before she retired; she became used to drinking tea and pouring much toyo sauce in the viands; mattresses too, and no longer a plain mat, formed her beddings.
A year after they were married, they had a child, a boy. The baby was a darling. Tanabata decided to celebrate. He gave a baptismal party to which were invited his Japanese friends. They drank sake, ate Japanese seaweeds, pickles, canned fish, etc.
But Fas-ang, in all this revelry, could not understand the chattering of her guests. So, she was very quiet, holding the baby in her arms.
The men (there were no women visitors) had brought gifts for the baby and the mother. Fas-ang was very much delighted. She repeatedly muttered her gracias to all as gifts were piled before her.
Then the men consulted the Japanese calendar. The child was given the name Kato and the guests shouted banzai many times, tossing glassfuls of sake to the ceiling They wished the mother and child, good luck.
Tanabata was most solicitous toward Fas-ang as she began to recover from the emaciation caused by her strenuous childbirth. He would now allow her to go out. She must Stay indoors for a month. It was another Japanese custom.
At length, when August had passed, Fas-ang once more stepped out into the sun shine, warm and free. The pallor of her cheeks had gone. She was alive and young again. Her usual springy steps came back, and she walked briskly, full of strength and passion, it seemed.
V
But what news of home? Fas-ang yearned to hear from her people back in Besao Bontoc. Had the kaingins been planted with camote and corn? Her kinsmen had heard of her delivering a child, and they sent a boy-cousin to inquire about her. He was told to see if Fas-ang lived happily, and if her Japanese husband really treated her well. I not, they would do him harm. The Bontocs or busol are fierce.
The cousin came. Tanabata entertained the cousin well. He bought short pant for the Igorot boy and told him to do away with his G-strings. The boy was much pleased. After a week, the boy said he would go back. And Tanabata bought some more clothes for him.
Fas-ang saw her cousin off. Tanabata was then in the shed house, cultivating the seedlings. Fas-ang instructed her cousin well: “Tell Ama and Ina I am happy here they must not worry about me. My husband is kind. Give them this little money that I have saved for them. You see, I have a child, so I shall live here long yet. But I do wish to go home sometime and see Ama and Ina. Often feel homesick.
She wept. And when her cousin saw her tears, he wept too. Then they parted.
VI
It was no hidden truth that Tanabata loved his wife dearly. In every way, he tried to show his affection. Once, he had not allowed her to go to the city to see the movies. But he repented after wards and sent her there without him asking
Fas-ang that soon became a cine fanatic. She went to shows with one of the garden boys and sometimes she took her baby along, carried on her back. They had to take kerosene lamp with them to light their way coming home when they return near midnight.
Tanabata alone, stays at home. He sat up late reading Japanese novels. When Fas-ang arrived, she would be garrulous with what she had seen. Tanabata held her under the thick blanket to warm her cold feet, she would then easily fall asleep and only after her that he would rest himself to sleep.
More and more, Fas-ang liked to attend the shows. The city was two miles away. But that did not matter. The theater was fascinating. Moreover, Fas-ang admitted, she often met several of her relatives and townmates in the theater. They too, had learned to frequent see the cine and together they had a good time.
Tabanata asked Okamoto what he thought of Fas-ang’s frequenting the shows. Okamoto, being less prosperous and more conservative, did not favor it. He advised Tanabata to stop her. But Tanabata was too indulgent with Fas-ang even to intimate such a thing to her. Though inclined to be cautious, he loved her too much to deny her any pleasure she desired.
Thus Fas-ang, after the day’s duties, would run off to the show. Tanabata had grown even more lenient. He could never muster courage to restrain her, much less scold her. She never missed a single change of program in the theater. Tanabata did not know what to do with her. He could not understand what drew her to the cine. For his part, he was wholly disinterested in screen shows which he had attended but once long ago, and with which he had been disgusted. Still Fas-ang continued to attend them as devotedly as ever.
VII
One night she did not come home. She returned in the morning. Tanabata asked where she had slept, and she said, “With my cousin at the Campo Filipino,” She had felt too lazy to walk all the way down to the valley, she said.
That whole day, she remained at home. Tanabata went out to the garden. Fas-ang rummaged among her things. She tied them into a bundle which she hid in the corner. She dressed her child.
Then, at midnight, when Tanabata as sound asleep, she escaped. She carried her child and ran down the road where her lover was waiting. They would return to Bontoc, their native place. The man had been dismissed from the military post at Camp John Hay.
Fas-ang left a note on the table before she left. It had been written by the man who had seduced her. It read: Do not follow us. We are returning home to Bontoc. If you follow us, you will be killed on the way!
When Tanabata had the letter read to him he dared not pursue the truant lovers. The note was too positive to mean anything but death if disobeyed. He was grieved. And for three days, he could hardly eat. He felt bitter, being betrayed and deserted. Helpless, he was full of hatred for the man who had lured his wife away.
Okamoto, faithful indeed, came to comfort his friend. He offered to come with his wife and live with Tanabata. But Tanabata would not consider their intention. Nor could he be comforted. He politely begged his friends to leave him alone. He had suddenly become gloomy. He sat in his hut all day and drank much liquor. He stuck up himself inside his hut. The truck garden was neglected.
Months passed. The rows of cabbage were rotting. Tanabata was thought to be crazy. He did not care what happened to the plants. He had dismissed the new helpers that were left him. Weed outgrew the seedlings. The rainy season set in, and the field was devastated by a storm. Tanabata lived on his savings.
The rainy season passed. Sunny cold November came to the hills. Months more, Tanabata would perhaps go home to die in Japan. His hopelessness had not been lessened. When he thought of his lost boy, he wept more.
VIII
But, one evening, Fas-ang came back. She stood behind the house, scanning the wreck left of what was formerly a blooming garden. She had heard back home, from wayfarers who had returned, of Tanabata. The man who had alienated the affections of Fas-ang had left her.
“Your Japanese husband is said to be ruining himself,” some reported.
“He pines for you and his boy.”
“It is said he is thinking of going home across the sea, but he must see his little son first,” also, others informed her.
Fas-ang at once decided. “Then I must return to him before it is too late.” And so, she came.
In the twilight, she stood, uncertain, hesitant. She heard the low mournful tune arising from the bamboo flute that Tanabata was playing, What loneliness! Fas-ang wondered if that now seemingly forbidding house was still open to her. Could she dispense the gloom that had settled upon it? There was a woman’s yearning in her. But she hesitated in her determination, feeling ashamed.
The music had ceased. She almost turned away when the child, holding her hand, cried aloud. Tanabata looked out of the window, surprised. He saw the mother and child. He rushed outside, joyfully. Gently, he took them by their hands and led them slowly into the house. Then he lighted the big lamp from the ceiling that had long hanged and unused.