みなさん、こんにちは。Kumusta Kayo?日本は正月三賀日を祝いますが、フィリピンでは新年を祝うのは大晦日と元旦だけで、2日からほぼ平常通りに戻ります。また元旦よりも大切なのが大晦日。新年のことはBagong Taon(バゴン・タオン)と呼び、大晦日はBisperas ng Bagong Taon(ビスペラス・ナン・バゴン・タオン)と呼びますが、最近は英語のNew Year’s Eveを使います。大晦日はクリスマスと同じように親戚一同で集まり、真夜中に食事をします。新年の繁栄を祝い、12個の丸い果物を用意したり、 長寿を祈願してパンシット(焼きそば)や、運がくっつくようにと餅菓子を食べて縁起を担ぎます。新年に飛び跳ねると背が伸びると言われ、子供達は新年と同時に飛び跳ねます。そしてあちこちで花火が上がり、爆竹も盛大に鳴り響きます。その様子は、まるで花火大会のクライマックスが何十分も続くかのような大騒ぎです。この爆竹や花火の煤のために、かならず元旦の未明には小雨が降り、朝にはうっすらと白いもやがかかります。
爆竹や花火で厄払いするというのも、本来は中国の習慣のようで、東南アジアに広く見られます。爆竹はpaputok(パプトック)と言いますが、それぞれに名前が付いていて、「グッバイ・フィリピン」「グッバイ・アース」「グッバイ・ユニバース」のように、火薬の量によって名前もエスカレートしていきます。爆竹を長く繋げてトグロのように巻いて売られているのは“Sawa”(サワ「大蛇」)。“Sinturon ni Judas”(シントロン・ニ・フーダス「裏切者ユダのベルト」)は長くベルト状に繋がった爆竹です。日本でするような手持ち花火はLusis(ルーシス)と呼ばれ、ロケット花火はKwitis(クウィティス)です。それでも日本と違い、安全に十分留意されなかったり、突然爆発するケースもあるので、注意が必要です。
筆者が留学生だった時、大晦日に友人宅に招かれました。夕方、住宅街の道を歩いていると、それまで集まっていた男の子たちが、いきなり立ち上がって後ずさりしました。何も知らずにそのまま歩いて行くと、バーン!といきなりなにかが爆発。一瞬耳は聞こえなくなるし、目の前も真っ白になりました。足元で爆竹が爆発したのです。幸い怪我もなく、視力も聴力も戻ってきましたが、今から思えば危機一髪でした。
毎年新年のトップニュースは、爆竹や流れ弾関連の負傷者数。昔は1000人以上の怪我人が出ていたものですが、最近はかなり減少し、2017年の負傷者は350件前後だったようです。保健省が爆竹よりもtorotot(トロトット)と呼ばれる紙のラッパで新年を迎えようとキャンペーンをおこなったのも功を奏したようです。
皆さんも安全に気を付けて良い新年をお迎えください。Manigong Bagong Taon!(マニゴン・バゴン・タオン!「良い新年を!」)
文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。