fWみなさんこんにちは! Kumusta kayo? 2017年の日本の流行語大賞は「インスタ映え」と「忖度」でしたね。フィリピンには流行語大賞こそないものの、やはり年末になるとその年の流行語がメディアに取り上げられます。これまではテレビで使われたフレーズが流行ることが多かったのですが、昨年はツイッターやFacebookなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を中心に流行したことが特徴的で、また既存の言葉の音を入れ替えた「倒語」ばかりだったこともユニークでした。
そんな2017年のフィリピンの流行語はlodi(ロディ)、 petmalu(ペットマルー)、 werpa(ワーパ)です。lodi(ロディ)はidol(アイドル)を逆から読んだもので、尊敬する人に対して使います。例えば「(素晴らしいのは)あなただ」という意味で “Ikaw na!(イカウ・ナ!)”と言うことがありますが、それに付けて、 “Ikaw na, lodi!”(イカウ・ナ・ロディ!)のように使います。「あなたこそアイドル!」という感じでしょうか。
Petmalu(ペットマル―)は ペットの名前ではありません。 “malupit(マルピット)”という言葉の前後を入れ替えたものです。「ピット」がどうして「ペット」になるかというと、本来タガログ語ではiとeの区別がなかったからです。本来“malupit”は「厳しい」とか「冷酷な」という意味でしたが、最近は「すごい」とか「超越した」いう意味を持つようになりました。日本語の「ヤバい」も、もともとネガティブな言葉でありながら、最近は「美味しすぎてヤバい」のように「すごい」という意味を持つようになったという点でよく似ていますね。Petmaluは上記 “lodi”とも一緒に使われることもあり、「誰々さんはほんとに素晴らしい人だ、petmalu! Lodi!」なんて言います。
“Werpa(ワーパ)”も前後の音節を逆転させた言葉です。つまり元の言葉は「パワー(英語のpower)」。こちらも人を励ます言葉として、「パワーを送ります!」「もっとパワーを!」などとSNSでコメントする時に、“More werpa!”のように使われます。
girl実はこのような倒語は新しいものではなく、スペインからの独立運動時代の作家マルセロ・デル・ピラールは、自分の名字のdel Pilarの綴りを入れ替えたPlaridel(プラリデル)をペンネームとして使いました。もっと最近では1970年代から80年代にかけて、“hindi(ヒンディ「いいえ」)”を “dehins(デヒンズ)”と言ったり、 “mother(母)”の“er”を先にして‘ermat(エルマット)”と呼ぶのが若者の間で流行しました。これらは今では年配者しか使いませんが、中には生き残った言葉もあります。タバコのことを “yosi(ヨシ)”と呼ぶのがそうで、これも実は “sigarilyo(シガリーリョ)”の最初の“si”と最後の“yo”を逆にしてくっつけた倒語なんです。
日本でも業界用語や仲間内の隠語として倒語が使われる場合も多く、「トーシロー(素人)」「ネタ(種)」「ショバ(場所)」などは一般にも知られています。フィリピンの場合も、本来は仲間内で使われていた言葉が、SNSで書き込む際に斬新な印象を与える言葉として使われ、外にも広まっていったのでしょう。これらの流行語は今後定着するのでしょうか、また、今後どんな言葉がはやるのでしょうか。注目していきたいと思います。

文:デセンブラーナ悦子

日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。