Filipino World
第28回
Tawag sa mga tao
人の呼び名
フィリピン語 アレ・コレ
みなさんこんにちは!Kumusta kayo? 今回は家族や親戚から、他人に至るまで、様々な人の呼び名を見ていきましょう。
自分の父親の呼び方にはama(アマ)、tatay(タタイ)、itay(イタイ)、tay(タイ)、母親の呼び方にはina(イナ)、nanay(ナナイ)、inay(イナイ)、nay(ナイ)等があります。おじさんはtito(ティト)またはtiyo(ティヨ)、おばさんはtita(ティタ)またはtiya(ティヤ)ですが、これらはスペイン語から来ています。お爺さんはlolo(ロロ)、おばあさんはlola(ロラ)で、こちらもスペイン語のabuelo(お爺さん)、abuela(お婆さん)が語源です。
お兄さん、お姉さんを、ビサヤ地方ではmano(マノ)、mana(マナ)と呼び、イロコス地方ではmanong (マノン)、manang(マナン)と呼びます。これらはスペイン語のhermano(エルマノ)hermana(エルマナ)が変化した言葉です。マニラにも「マノン」や「マナン」という言い方は残っているのですが、お兄さん、お姉さんには使わず、運転手さんや洗濯婦さん、年輩の家政婦さんなど、一般庶民のおじさん、おばさんへの親しみをこめた呼びかけに使います。きっと昔は「お兄さん」「お姉さん」を示す言葉だったものが、時代とともに変化したのでしょう。「マナン」に名前を付けて「マナン・ジュリー」(ジュリーおばさん)と呼んだり、「マノン」を縮めた「マン」に名前を付けて「マン・トマス」(トマスおじさん)と呼んだりもします。「マン・トマス」というレチョンに付けるレバーソースのブランドもありますし、イナサル(イロイロやバコロッド風の焼き鳥)の店「マン・イナサル」は、「イナサルおじさん」という意味になります。ではマニラでお兄さん、お姉さんはなんと言うかというと、お兄さんはkuya(クヤ)、お姉さんはate(アテ)を使います。これらは福建語が語源で、「一番上の兄」、「一番上の姉」を指す言葉から来ています。比較的若い店員さんや運転手さんなどに呼びかける時に使うこともありますが、レストランのウェイトレス、ウェイターさんや、オフィスなどで働く女性、警備員さんなどに対しては、女性店員さんには「ミス」、男性には「ボス」などと呼びかけるのが常です。店員さんは名札を付けていることも多いですし、名前を聞けば教えてくれるので、名前で呼びかけると、人間関係の距離が縮まり、店員さんがより良いサービスを提供しようと頑張ってくれることもあります。
弟はtoto(トト)、妹はnene(ネネ)ですが、こちらは呼びかけに使ううちに、その人のニックネームになってしまう場合が多いようです。同様にtotoy(トトイ)は男の子、neneng(ネネン)は女の子に呼び掛ける時に使う言葉ですが、こちらもそのままニックネームになってしまっている人がいますね。大人になっても、ボーイさんとかベイビーさんというニックネームの人もいますが、こちらも子供の頃に呼び掛けられた言葉がそのままニックネームに昇格してしまったためなのです。フィリピンではニックネームを使う場合が多いですが、このようにニックネームが本名とかけ離れてしまっている人も多いので、本名も聞いておいて、ニックネームの由来なども聞いてみると面白い話が聞けるかもしれません。
文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。