Filipino World
第30回
Panahon
季節
フィリピン語 アレ・コレ
みなさんこんにちは!Kumusta kayo? フィリピンでは4月から5月が一年で一番暑い季節 “tag-init”(タグ・イニット)にあたります。Tag-は季節を表す接辞、そしてinitは「暑さ、暑いこと」を表す言葉ですから、「暑い季節」=tag-initとなります。5月も半ばをすぎると、少し雨が降り出し、6月に入ると雨季tag-ulan(タグ・ウラン)に入ります。そしてジメジメと雨が降り続き、空は厚い雲に覆われます。7月から8月は日本では夏にあたりますが、フィリピンではこの時期にはほぼ毎日のように曇りまたは雨、時々台風が来るので、4月5月とくらべるとそれほど暑くはありません。この雨季は10月末まで続き、11月になると乾季tag-araw(タグ・アラウ)に入ります。12月から2月までは乾季でありながら比較的涼しく、一年で一番過ごしやすい季節です。涼しい季節、また寒い季節(日本の冬など)はtag-lamig(タグ・ラミッグ)と呼ばれます。
フィリピンの季節は、このように大きく乾季tag-arawと雨季tag-ulanに分けられま
すが、この気候の変化には季節風が大きく影響しています。通常、6月から10月にかけて南西季節風habagat(ハバガット)が吹きます。フィリピンの南西の海上から温かく湿った空気が流れ込み、これがマニラを含むフィリピン諸島の西側に雨をもたらします。東の海上から台風や熱帯低気圧がやってくると、南西からの湿った空気がより活発に流れ込むため、たとえ台風が直撃しなくてもハバガットによる大雨が断続的に降り、洪水になることもあります。11月ごろになると、アジア大陸の気温が下がり高気圧が発生します。日本では「西高東低の冬型の気圧配置」と言われる状態です。アジア大陸から偏西風に乗って日本付近を通り、一旦太平洋側に流れ込んだ冷たく乾燥した空気は、今度は東から吹く貿易風に乗って、北東から南西に向かって流れ込む北東季節風amihan(アミハン)となります。フィリピンの西側は涼しく乾燥した天候になり、東側には雨が降りやすくなります。
さてフィリピン語では季節のことをpanahon(パナホン)と言います。しかしpanahonには「時間」「時期」「天候」という意味もあり、季節のことだけを示しているわけではありません。たとえはhindi pa panahonと言えば「まだ時期ではない」、という意味ですし、walang panahonと言えば「時間が無い」という意味になります。昔話は「むかーし、むかし」という意味で “Noong unang panahon”で始まり、天気予報のことはtaya ng panahonと呼びます。日本人にとっては、時間も時期も季節も天候もひっくるめてpanahonという一つの言葉しか無い、というのは驚きですが、季節と言えば「雨季」と「乾季」の二つしかなく、天気予報と言っても雨季には毎日雨か台風、乾季には毎日晴れか時々雨なのですから、日本のように四季がある上に、節分だ、彼岸だ、土用だ、と細かく分ける必要もなかったのでしょう。一般的に日本人に比べてフィリピン人が時間に対しておおらかで大まかなのも、こういった気候に影響されているのかもしれませんね。
文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。