イタリアのベネチアをコンセプトにしたベニス・グランド・キャナルモールが昨年12月3日、マニラ・アメリカ記念墓地の南にオープンした。いわゆるフォート・ボニファシオ地区に隣接しており、モール内の映画館はVIPシネマを備える。今回フィリピンの映画館経験は1度だけという記者がVIPシネマを初体験してきた。
運河を左右に分ける橋を渡ってエスカレーターを3階まで上ると、ボックスオフィスが見えた。「ボンジョルノ」とあいさつをくれるスタッフに本日見る映画「ローグ・ワン」を伝え、チケットを買った。料金は1人520ペソ。割高に感じるが料金のうち150ペソは飲食代だ。映画館に入ると水、コーラなどの炭酸飲料、ポップコーンをスタッフが席まで運んできてくれる。スタッフの制服は黒で統一され落ち着いた印象だ。
座席は2人一組になっており、ゆったりとしたソファーは柔らかくほどよく弾力がある。座り心地が良く、リクライニングとフットレストが手元で操作できた。座席以外の空間は、日本のシネコンにある120席程度の小さなスクリーンといえば想像しやすいだろうか。座席は数を半分にしたぐらいだが、足元や隣のソファーまでの空間はずっと広く、上映中に周りが気になることはない。
上映が始まっても、手元のライトをつけるとスタッフを呼ぶことができる。1回まで無料のポップコーンのお代わりを頼むとすぐに持ってきてくれた。座席からスクリーンに向かって30度近い傾斜があり、直前(というほども近くない)の座席の観客がスタッフを呼んでも、十分に大きなスクリーンに重なることはない。映画に集中できるだろうかという心配は杞憂だった。日本の映画館でも数少ない、観客の見やすさを考えたスクリーンだと感じる。
最大64チャンネルともいわれるドルビーアトモスを使った音響も素晴らしく、銃撃戦や戦闘機が破壊されるシーンではその場にいるかのようだった。上映される作品は多くが英語で日本語字幕なしというハードルはあるが、十分に試す価値のある映画館だ。
最後に欠点をあげると冷房が効きすぎていることだ。日本の映画館のようにブランケットの貸し出しはないので羽織るものを持っていこう。せっかくの良い映画体験が、手足がかじかんで集中できなかったということにならないように。 (森永亨)
べニス・シネプレックス
シネマ1 デジタルシネマ 270席 250ペソ
シネマ2 ドルビーアトモス 282席 320ペソ
シネマ3 デジタルシネマ 243席 270ペソ
シネマ4 VIPシネマ 88席 520ペソ
シネマ5 ドルビーアトモス 352席 310ペソ
*料金は12月18日のもの、上映作品によって変わる
*シネマ2、4、5はドルビーアトモスを導入、スクリーンのサイズは各シネマとも同じ
*シネマ2、5はポップコーン付き、シネマ4は水、炭酸飲料、ポップコーン2つ付き
*ポップコーンの味はチーズ、BBQ、サワークリームの3種
◎ Navi Manila Vol.29 より