セブのお金持ち トレンドNo.1
by: 蝶谷正明(セブ在住)

スーパーに行けば有機野菜が品数豊富に陳列されている

スーパーに行けば有機野菜が品数豊富に陳列されている

最近のセブのお金持ちのトレンドNo.1は健康だろう。私の住んでいるビレッジでも、朝夕にはフィリピン人、外国人の老若男女がウォーキング、ジョギング、サイクリングに汗を流している。アップダウンの激しい地形なので「無理しないほうがいいよ」と声を掛けたくなる姿も目に入ってくる。皆さん何事も形から入るのがお好きなのか、いかにも高そうなウェアやシューズ、自転車に至っては数十万円もするようなものに乗っている。
私も一時ウォーキングに凝ったことがあった。出社前に40分ばかり山道を登ったり下ったりするのだが、ただ長い時間や距離を費やすよりはるかに良い運動になる。普段体を動かすことのない不健康至極の人間にとっては最初は苦行だが、いつの間にか酔いしれてくる。
数年前、血圧と血糖値が高くなったことがあり、ドクターからこの程度なら薬を飲むよりも食事療法と運動が良いと勧められたのがきっかけだった。一念発起、清水の舞台から飛び下りる覚悟で始めたのだが、市内に比べるとひんやりした空気、鳥のさえずり、海が見えたり、山が迫ってきたり。他所様の家のデザインや庭の様子を見るのも一興。飽きないのだ。毎朝挨拶する顔見知りが出来たり、結構楽しい。ドクターのアドバイス通り、数値は改善され、1年後には80㌔の体重は65㌔にまで落ちた。着るものがダブダブになったのには閉口したが、身体が本当に軽くなり、何事にも前向きになったような気がした。
モールに行けば、日曜の早朝から大勢がヨガやズンバに励んでいる。車で走っていると道端でズンバ大会に出くわすことにも慣れてきた。スポーツジムは雨後の筍のように至るところに出来、それなりに賑わっているようだ。
食事に関しても、つい4、5年前まではちょっと大げさだが、フィリピンの人たちが健康に気を使うなんてことは考えられなかった。言い古されているが、大量のご飯と甘じょっぱい脂身たっぷりの肉、そして野菜を食べない、甘いもの大好き、その上体を動かさない。
それが本当に変わってきた。スーパーに行けば有機野菜のコーナーがある。日本よりも高そうだが、サラダの素材の種類と質は以前では到底信じられないほど向上し、各種スプラウトや豆苗なども並んでいる。我が家は豆腐屋さんから、出来立ての中国豆腐を買っているが、濃厚な大豆の香りとしっかりした食感は、昔の木綿豆腐だ。我が家で作る油揚げの出来たてを何も付けずにそのまま食べるのが最高だし、味噌汁はもちろん、大根、サヨテなどと出汁を利かせてた煮物も、フィリピンの友達に好評。彼らの伝統的な食事の対局にある和食を単に健康というだけでなく堪能している。
我が家の近所にベジタリアンのホームレストランが出来た。野菜と豆、豆腐などでこんなにバラエティーのある料理ができるのかと驚くほど。塩分や油を控えたインターナショナルなレシピ。主食はブラックライス(コメの仲間ではない)、玄米、赤米、キヌア、アマランサス等々。3、4年前だったら、開店即廃業だったのではないか。いつ行ってもお客さんが絶えない。
そういえば、セブ唯一の手打ち蕎麦屋の常連さんの殆どもフィリピン人。
フィリピンは音を立てて変わりつつある。そしてその変化は我々在比の外国人にとっても、好ましいもののようだ。