柳家東三楼落語会

5月11日の土曜日、セブ日本人会でなんと真打の名人落語家によるライブ公演が行われました。
柳家東三楼師匠、あの歴代の小さんを生んだ名門柳家の一党、平成28年度文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞を最年少で受賞した方です。しかも落語を「RAKUGO」として世界に広めるという大望をお持ちです。そのため英語の研鑽を積むべくセブに語学留学中のタイミングでした。
日本人会の会議室に机を組んでしつらえた急ごしらえの高座ではありましたが、お囃子に乗って羽織姿の師匠が現れると鈴本か末広亭かと見間違える雰囲気に一変しました。演目は「幾代餅」。涙を浮かべる人もでる人情噺一席の熱演でした。昨今は日本にいても寄席に足を運ぶことが少なくなりました。それがセブの地で目の前で本物の噺家さんです。
純情ながらもしがない搗き米屋の奉公人が吉原一の花魁に惚れ込んでしまい、1年分の給金を手にして登楼します。顔を見ることすらおぼつかないという不安が晴れます。自分の身分と如何に金を貯めたかを明かすと花魁は感動して、年季の明ける来年夫婦になろうと言って50両を渡します。そして1年後花魁が本当に搗き米屋に訪ねてきて祝言を挙げて源氏名を冠した餅屋を開業、大繁盛するというストーリーです。
如何にも非現実的だが事によると1%の可能性があるかというシチュエーション。熊さん、八つあん、大家さんの滑稽噺も気楽に笑えて結構ですが、人情噺の中には最初から最後まで笑えない、心に染み込む噺もあります。
ユーチューブでは往年の名人の噺が何時でも無料で楽しめる、そんな時代です。手拭と扇子だけが道具の話芸の真髄をもう一度味わってみたいものです。

幾代餅 「焼きもちは、 ございません」