Starting Local to International: The Challenges of a Small Cafe.
2017年10月、バギオ市の小さなローカル・カフェ「ヤガム(Yagam)」が、「グーグル・ビジネス・ストーリー・コンテストで受賞!」の文字が地方紙の紙面に踊った。このコンテストを主宰しているのはグーグル・ビジネス・グループ(GBG)。スモールビジネスの運営をサポートするために、情報の共有やIT技術のトレーニングなどを行っているグーグルのネットワーク・グループだ。
カフェ・ヤガムのオーナーは、北ルソンの先住民族のひとつ、
カリンガ族出身のカーラ・ロシートさん。フィリピン大学バギオ校を卒業後、バギオ市の環境NGO「Cordillera Green Network(コーディリエラ・グリーン・ネットワーク=CGN)」のスタッフとしてコミュニティ・オーガナイズの仕事をしていたカーラさんは、シングルマザー。NGOの山岳地方の事業地での仕事では泊りがけのことが多く、「子供との時間を大切にしたい」とNGOを退職。生まれ育ったのベンゲット州マンカヤン町の鉱山開発会社のゲストハウスとレストランのマネージャーに転職した。
その後、再びバギオに戻り、元の職場であるコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)が先住民族の生計向上と森林保全を目的に10年以上にわたって展開してきたアラビカ・コーヒー事業を、プロモーションとマーケティングの立場からサポートしようと、「カフェ・ヤガム」を立ち上げた。
カフェでは、CGNのソーシャル・ビジネス部門「Kapi Tako Social Enterprise Inc.」から仕入れた生豆を自家焙煎したコーヒーの他に、出身のカリンガ族の素朴な家庭料理をメニューに加えて、山岳地方の農家のサポートとともに、伝統文化に対する啓もう活動も行っている。
そんな彼女の生き方と社会起業ストーリーが、ビジネス・ストーリー・コンテストの審査員たちの目にとまったのだ。世界各国の応募者の中から、幾度もの予選を通過し最終的な選考でベスト4となった。2018年にはカリフォルニア州で行われる開発者向けのイベント「Google I/O」に招待され、世界のイノベーターたちを前に、アジアにおけるソーシャル・ビジネスの一例として「カフェ・ヤガム」を紹介することとなっている。
フィリピンを含むアジアでは、ようやく地方や一般層にもモバイルが普及し始めた。バギオのような地方にいながら、IT技術使ってバギオからさらに山奥の先住民農家の栽培するコーヒーを、それを求めている消費者の手に届けることができる。「カフェ・ヤガム」に追随する小さなイノベーターたちが、バギオでも次々と育ちつつある。
Café Yagam
25 J. Felipe Street, Gibraltar, Baguio City Tel: 074-442-3805
(反町眞理子)