知られざる棚田の村で
民泊体験。
ルソン島北部山岳地方の観光の目玉と言えば、世界遺産に指定されているイフガオ州バナウエなどの棚田だが、 山岳地方には知られざる素晴らしい棚田の村がほかにもたくさんある。
バギオ市から古びたバスで北へ6時間のマウンテン州の州都・ボントクから、さらに乗り合いジプニーで移動すること約30分。マリコン村には、思わず息をのんでしまうほどの雄大な棚田が広がっている。ここでは、カラバオ(水牛)を使った昔ながらの農法で、先祖代々引き継がれてきた米を完全無農薬で栽培している。
マリコン村の棚田がイフガオ州の棚田と一線を画すのは、田んぼの壁の構造だ。高度な石積みの技術を誇るマリコン村の人々は、泥を一切使わず、石だけで壁を作り上げている。あまり観光地化されていないのも魅力の一つで、棚田のあぜ道や小さな集落内のトレッキングでは、のどかな農村の雰囲気を存分に味わうことができる。
棚田を訪れるのは田植えと収穫期がベストだ。マリコン村の田植えシーズンは2~3月。空の青さが映る水を張った棚田に若い緑の苗を一本ずつ手で植える光景は、先住民が大昔から繰り返してきた生きるための営みだ。一部の田んぼでは二期作を行っていて、8月にもう一度田植えを行う。収穫のメインは6~7月。黄金色に輝く稲穂をラクンと呼ばれる稲刈り専門の刃物を指につけて1本ずつ刈り取る。村の時間は今も農耕カレンダーを元にゆっくりと流れている。
マリコン村には近年、宿泊施設がいくつかオープンし、一般観光客もずいぶんと訪れやすくなった。どこも地元の家族が運営する小さな民宿(ホームステイ)タイプのリーズナブルな宿泊施設だ(一人1泊300~400ペソくらい)。
1999年開業のMaligcong Terrace View Guesthouseは、マリコン村の中でも最も歴史ある宿泊施設。入口を抜けると、伝統工芸品や村の写真などが飾ってあり、かつてのマリコン村の様子を物語っている。当初はほとんどヨーロッパからのバックパッカーのみの滞在だったそうだが、インターネットの普及と共に、客層も様々な国籍へと変化した。オーナーファミリーが、一人一人の希望に沿った旅の提案をしてくれる。
以前はコーヒーショップとして、観光客の憩いの場として親しまれてきたSuzette’s Maligcong Homestay。5年前、とある観光客のアドバイスから宿泊施設の併設を決めた。事前にオーダーすれば、お腹がいっぱいになる自慢の料理を用意してくれる。棚田が眼前に広がる開放感に満ちたテラス席で、贅沢に食事を楽しめる。食事だけの利用もOKだ。
昨年11月にオープンしたばかりのDong-elay’s Homestayも、親族で運営する温かみ溢れる民宿。そのおもてなしには、まるで家族の一員になったかのように感じられるほどだ。ここではスタッフがツアーガイドもしてくれる。
大きな一軒家のような佇まいのVilma’s Homestayでは、ファミリーでの利用も大歓迎。ここの一押し料理は、鶏を一羽丸ごとさばいた山岳地方の名物料理、ピニピカン。キッチンのかまどで、自炊することも可能だ。
マリコン村からひと山超えると温泉地として知られるマイニット村がある。マリコン村から日帰りでハイキングができる。どの民宿もガイドの手配が可能。約2時間半のハイキングでは、山の上からマリコン村の棚田の全貌を眺められる。マイニット村では、温泉でゆっくりと汗を流せる至福の時間が待っている。
(バギオTALA Share & Guesthouse
インターン 早﨑智香)