フィリピン語 アレ・コレ
Kain tayo (一緒に)食べましょう
みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 前回は「クマイン・ナ・カヨ?(もう食べましたか)」をご紹介しました。今月は”kain”(食べる)を使ったもう一つの表現「カイン・ターヨ」についてご紹介します。
オフィスでも家でも、たまたま食事中の人に出会うと必ず言われるのが”Kain tayo”「カイン・ターヨ」(一緒に食べましょう)。その昔、私がフィリピン留学中、こんな事がありました。下宿に帰って来たら、ちょうど同じ下宿の女の子が1杯のマミ(フィリピン式のインスタントヌードル)を食べている所だったんです。もちろん彼女は私に「カイン・ターヨ」って誘ってくれたのですが、食べかけの麺を一緒に食べようって言われても、日本人なら「えっ!」て、一瞬戸惑っちゃいますよね。こういう場合はもちろん社交辞令で言われているだけなので、Salamat, tapos na ako. 「ありがとう、もう済みました(結構です)」ってお断りするべきなんですが、もし私が「じゃあ、いただきます」って言ったらどうするんでしょうか。フィリピン人の友達に聞いてみたら、そういう場合には食べかけだろうとなんだろうと、「カイン・ターヨ」って言ったからには、もちろん分け与えるのがフィリピン人の美徳なんだそうです。
そして、フィリピン人のお宅へ食事に招待され、「カイン・ターヨ」と言われても、なぜか皆モジモジして、誰も立ち上がって食卓に近寄ろうとしないことがあります。実は、勧められても、まずは遠慮して、3度勧められるまでは食べ始めない、本当に熱心に勧められるまでは飛びついてはいけないのだそうです。フィリピン人が大切にしている概念の一つに “hiya”「ヒヤ(恥)」がありますが、「ヒヤ」のない人 “walang hiya”「ワラン・ヒヤ(恥知らず)」というのは最大限の侮辱になんですね。これを言ってしまうと人間関係が修復できなくなるほどきつい言葉なのですが、実は、この「ヒヤ」の中には「遠慮」という意味も含まれているのです。ですから恥を知っている人=遠慮深い人でもある、というわけです。
また、 “Ang tunay na anyaya, may kasamang hila”(本当のお誘いなら、引っ張っても誘うもの)と言う言葉があり、「何度も誘われないなら本気ではない」とも考えられています。近年では3度勧められなければ食べないほど遠慮深い人も減ってきましたが、「カイン・ターヨ」と誘っても、フィリピン人のお客さんが遠慮している時は、しつこいくらい、最低3度は勧めてみてくださいね。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。 |
◎ Navi Manila Vol.28 より