フィリピノ・ワールド

この記事をシェア

2018年8月21日

フィリピン語 アレ・コレ

みなさんこんにちは! Kumusta kayo? 今回はフィリピンの面白い略語をご紹介します。正確には頭文字だけを取って並べた言葉は、「アクロニム」と「イニシャリズム」の二つに分けられます。頭文字を並べて、一つの言葉として発音するものはアクロニムです。例えばメトロ・マニラを縦貫するEDSAは正式名称をEpifanio de los Santos Avenue(エピファニオ・デ・ロス・サントス・アベニュー)と言います。これはフィリピンを代表する学者の名前から取ったものですが、「エドサ」という一つの言葉として発音するのでアクロニムです。逆に日本で若者言葉として使われるKY(空気読めない)、JK(女子高校生)などは、頭文字をアルファベットの読み方そのままで読むのでイニシャリズムです。フィリピンではこの二つを特に区別せずにアクロニム “Akronim” (英語の綴りはAcronym)と呼ぶことが多いようです。
フィリピンのアクロニムの例には、気象庁にあたる PAGASA(パグアーサ)があります。これは実はPhilippine Atmospheric Geographical and Astronomical Services Administration(フィリピン大気地球物理天文局)という長い名前ですが、頭文字だけを取って「パグアーサ」(フィリピン語で「希望」の意味)と呼んでいます。また社会保障制度Pag-ibig(パグイビッグ) の正式名称は、Pagtutulungan sa kinabukasan, Ikaw, Bangko, Industria, at Gobyerno(パグトゥトゥルがン・サ・キナブカサン、イカウ、バンコ、インドゥストゥリア、アット・ゴビェルノ)(*「が」は鼻濁音)と言います。日本語では「フィリピン住宅開発相互基金」となっていますが、フィリピン語の名称は「将来への相互の助け合い、あなたと銀行、産業と政府」という意味です。フィリピン語のpag-ibig(愛情)という言葉に当てはめるために、ちょっと無理して名付けた印象です。この正式名称は知らない人の方が多いかもしれませんね。
スペイン時代に独立運動のためにアンドレス・ボニファシオが組織した「カティプーナン」のシンボルはKKKですが、アメリカの白人至上主義結社とは全く関係ありません。こちらの正式名は“Kataastaasang Kagalanggalang Katipunan ng mga Anak ng Bayan”(母国の子供達による高貴なる敬愛されるべき会)と言って、その最初の三つの言葉の頭文字を取ったものです。
スラングにも略語がたくさんあります。例えばTNT。これは “Tago ng Tago”(タゴ・ナン・タゴ)の略語で、意味は「隠れてばかりいる」。ビザが切れていてもオーバーステイしていたり、就労ビザではないのに就労している状態のことです。またKKBと言えば“Kanya-kanyang Bayad”(カンニャ・カンニャン・バヤッド)で、カンニャ・カンニャは「それぞれ」、バヤッドは「支払い」ですから、自分で食べたものは自分で支払う、割り勘のことです。割り勘にしよう、という場合は “KKB tayo.”(ケーケービー・ターヨ)と言うわけです。KSPと言えば “Kulang sa pansin”(クーラン・サ・パンシン)。クーランは「足りない」パンシンは「注目」ですから「注目不足」、つまりいつもチヤホヤされていないと気が済まない人のことです。またKJと言えば“Kill-joy”、皆が楽しもうとしている時、雰囲気を壊そうとする人のことです。またLBMで会社を休むと言う人がよくいますがLBMとは “Loose Bowel Movement”つまりお腹が緩いことです。でも本当は別のLBMで、 “Looking for Better Management”(もっといい会社を探している)のでは?と同僚が噂する場合もあります。フィリピン人が略語を好むのは、そうすることでユーモラスな響きが生まれるからかもしれませんね。


文:デセンブラーナ悦子

日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。

 

Advertisement