伝統を次世代へ受け継いで行くために
La Trinidad Municipal Initiatives to Inherit Tradition to the Next Generation.
ルソン島北部コルディレラ山岳地方には独自の先住民文化が残っているが、そんな伝統も時代の流れと共に薄らぎ失われつつある。その一方で、誇り高い先住民族の中には、伝統を守り受け継ごうと活動されている人も多い。今回は縁あって、バギオ市の隣町ベンゲット州ラ・トリニダード町で、役場職員の伝統舞踊クラブ(La Trinidad Municipal Employees Association Cultural Dance Troupe)の練習会にお邪魔させていただいた。
ラ・トリニダードの町役場では毎週金曜日をスポーツの日とし、卓球やダンス、空手など様々なアクティビティを行っている。その中のひとつが伝統舞踊。グループが結成されたのは2014年で、町役場の職員40人で構成されている。地域のイベントや来訪者に向けてパフォーマンスを行う機会が多く、そのために練習を積み重ねている。また、舞踊の練習だけでなく、伝統舞踊への理解を深めるために調査や勉強会も行っているという。
青年海外協力隊でラ・トリニダード町の観光課に派遣されている山脇香澄さんの話では、ベンゲット州には5種類の伝統舞踊があり、男女混合の複数人で行うものと男女一人ずつで行うものがあるとのこと。地元の人たちは結婚式、同窓会、誕生日など親戚や仲間で集まる機会には、今でもそれぞれの民族舞踊を踊る。若い世代は大人が踊っているところを見て覚えていく。
今回の練習では5種類の舞踊の中で「ベンディアンBendian」というダンスが踊られていた。このダンスは男女混合の複数人で踊る。「ベンディアン」とは地元の言葉で「疲れるまで」という意味だといい、もともとは病気平癒や干ばつや凶作が起こらないように祈願したり、豊作を感謝したりするために踊られていたが、今では鑑賞のためにイベント等で踊られることが多い。舞踊の動きは、部族間の闘争や農作業などを表現しているという。
伝統舞踊には、音楽も欠かせない。音楽は、基本的に男性が担当する。音楽担当のみなさんにもお話を伺った。
「音楽は踊りを支える大切なパートで、音楽担当がビートに乗れていないと舞踊担当も気持ちよく踊れない」とのこと。演奏の際は、誰かに合わせると言うよりも、一人ひとりがお互いの音をよく聞きテンポ感やビート感を合わせるのがコツだという。
グループのみなさんのお話からは、自分たちの伝統への愛とそれを守りたいという熱い思いを感じた。9月にはLa Trinidad Musician Night、11月にはベンゲット州の伝統文化の祭典「アディバイAdivay」、そして来年3月にはストロベリー・フェスティバルにてパフォーマンスを披露する予定となっている。
(Share & Guesthouse TALA インターン 石黒歩)