Filipino World
第36回
Colgate na Close-up atbp.
フィリピン人なら使うあの言葉
フィリピン語 アレ・コレ
みなさんこんにちは!Kumusta kayo? 最近富士ゼロックス社がフィリピンの新聞に「Xeroxは国際的に認められた登録商標であり(中略)一般的なコピーまたはコピーサービスの名称として使ってはならない」と広告を出したことがSNSなどで話題になりました。というのもフィリピンでは「コピーを取って」の意味で “Pa-Xerox”つまり「ゼロックスして」と言うほど「ゼロックス」が一般的に使われているからです。しかしゼロックス社がこのような広告を出したことは新しいことではなく、以前から各国で普通名称化を防ぐためのキャンペーンが行われてきたようです。商標名があまりにも一般的になり、普通名称化したと判断されると独占的な商標権を手放さざるをえなくなったり、商標登録ができなくなったりすることがあるからです。
よく似た例は日本にもあり、たとえば「ホッチキス」(普通名称は「ステープラー」)、「宅急便」(「宅急便」はクロネコヤマトの商標名で普通名称は「宅配便」)、「エレクトーン」(一般名称は「電子オルガン」)、新しいものではインターネットで検索することをGoogleを使わない場合でも「ググる」と言ったりするのがその例です。しかし面
白いことにフィリピン人はこのように商標名を一般の名称のように使うのをフィリピン人の一つの特徴だと思っているようです。フィリピンではどんな言葉が一般的に使われているか見ていきましょう。
クローズアップのコルゲート
フィリピンではこんな言い方をすることがあります。“Bili ka ng Colgate,‘yong Close-Up”(コルゲートを買ってきて、クローズアップのね。)コルゲートもクローズアップもそれぞれフィリピンで人気の歯磨き粉のブランドですが、実はフィリピンで一番ポピュラーな商品が「コルゲート」のため、「コルゲート」という商標名が歯磨き粉全般を指すようになってしまったのです。つまり上の会話は、「クローズアップの歯磨き粉を買ってきて」という意味なのです。
フリッジデール(Fridgedair)、フリッジ(Fridge)
冷蔵庫のことは英語でrefridgeratorと言いますが、フィリピンで昔一般的に使われていた冷蔵庫のブランドがアメリカのフリッジデールのブランドだったため、年配の人は今でもフリッジデール(省略形はフリッジ)と呼ぶことがあります。「フリッジデール」というより「フリジデア」に近い感じで発音されます。
ペンテルペン(Pentel Pen)
フィリピンではフェルトペンのことは、一般に「ペンテルペン」と呼ばれていますが、これは、日本の文具メーカー「ぺんてる」の商品名です。フェルトペンの普通名称は英語でpermanent markerと言います。ちなみに日本ではフェルトペンのことを「マジック」と呼ぶことがありますが、「マジック」は内田洋行の商標です。
スコッチテープ(Scotch Tape)
いわゆるセロハンテープのことは3M社の「スコッチ」ブランドの商品名「スコッチテープ」と呼ぶことが多いです。ちなみにフィリピンでのセロハンテープの一般名称はplastic tapeでcellophane tapeと言っても通じませんが、「スコッチテープ」と言えば確実に通じます。日本では、国内で最初に作られたセロハンテープがニチバンの「セロテープ」だったため、「セロテープ」が一般によく使われています。
これらのように新しい技術による商品が出ると、それに似た技術を用いた商品が、先行商品や人気商品名で呼ばれてしまう現象が起こるようですが、庶民にとってはCMや店頭で見聞きする商標名の方が、普通名称よりもよく知っているのは当然と言えば当然。とはいえ企業にとっては商品を知ってもらうことも大切、しかし商品が有名になりすぎて、一般化しないための努力もなかなか大変、といったところでしょうか。
文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。