フィリピノ・ワールド 第39回
Mga pangalan ng mga Pilipino (Part 2)
みなさんこんにちは!Kumusta kayo? フィリピンにはカトリック教徒が多いので、子供に聖人の名前を付ける傾向がみられます。昔はカトリックの暦から、子供の誕生日の守護聖人の名前を付けるケースが多く、テレシータとかロサリオ、アントニオとかミゲルといったスペイン風の聖人名が付けられていました。最近は英語式の名前を付ける傾向があるので、たとえ聖人名でも、スペイン式のホセではなく英語式のジョンやジョセフ、ミゲルではなくマイケルと名付けることが多くなりました。また、二人以上の聖人の名前を付ければもっと恵まれると考えられたため、聖ヨセフと聖母マリアの名を組み合わせたジョー・マリとかホセ・マリアという名前の男性がいたりします。Jejomar Binay(ジェジョマール・ビナイ)元副大統領の名前も、洗礼名のJesus Jose Mariaの最初の音節を繋げたものだそうですが、出生証明書にはJesus Joseだけが載っているのでこちらが正式名だとか。
この他Aristotle(アリストートル、日本語ではアリストテレス)とかSocrates(ソクラテス)などの哲学者や、最近では俳優の名前からキアヌ・リーブスとか、ローマ法王の名からフランシスやジョン・ポール等の名前を付けることもあります。2015年には「ナタニエル」というローカルテレビ局制作のドラマの影響で、男の子の名前のトップにナタニエルが登場しています。女の子の名前で近年毎年上位に入るのはエンジェルとプリンセス、そしてアンジェリカ。こちらも人気女優の名前が影響しているようです。
筆者の夫は9人兄弟の一番上で、Aから始まる名前を付けるはずだったのに、長男だからジュニアだと、父親の名前にJr.をつけた名前を病院の人が出生証明書に勝手に記入して提出してしまいました。ですから公式な場では出生証明書の名前を使いますが、家族や親しい友人はAで始まる名の方で呼ばれています。そして残りの兄弟姉妹の名前はアルファベット順です。7番目はクリスマスの翌日に産まれたので、名前はGift(ギフト)。両親は「ヘンゼルとグレーテル」のグレーテルにしようと考えていたそうですが、まさか8番目に男の子が産まれるとは思っていなかったのでやめておいたそうです。ところが次に産まれてきたのは男の子。そこでこちらは日本だと「ヘンゼル」にあたる「ハンセル」と名付けられました。
ちなみに夫の母親は16人きょうだいで、Liwayway(暁)、Luningning(輝き)、Lualhati(栄光)、Luzviminda(ルソン、ビサヤ、ミンダナオ)など、全てLで始まるタガログ語の名前が付けられています。昔はこういう名前も多かったようですが、今はこういう名前を付けられる赤ちゃんは殆どいないでしょう。
台風の通過中に産まれた子にその台風と同じ名前を付けたり、フィリピン航空の飛行機の中で産まれた子にPalと名付けたり、ちょっと変わった名前がニュースなどで取り上げられることもありますが、2014年にはフィリピン大学入試の合格者の名が奇抜だと話題になりました。その女性の名は、Sincerely Yours ’98。実は彼女の一番上の兄はMacaroni ’85という名で、その次の姉の名はSpaghetti ’88というそうです。そして10年後にもう一人できたので、この子が最後だというわけで手紙の結びの言葉 “Sincerely Yours ’98”と名付けたのだとか。さらにお姉さんのスパゲッティさんには二人子供がいて、それぞれ「チーズ・ピミエント」「パルメザン・チーズ」という名前だそうです。こんなユーモラスな名が、おおらかに受け入れられるところも、フィリピンらしいと思います。
文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。