日頃の疲れを癒したい時や、日常とは違う体験をしたいと思う時、人はなぜか自然の水辺へ行きたくなるのかもしれない。そんな時、フィリピンにいるなら思い切って出かけたい。紺碧の海に白砂のビーチ。「フィリピン最後の秘境」と呼ぶにふさわしいパラワン島エルニド。ダイビングをはじめ、マリンアクティビティを楽しむなら一度は行きたいあこがれの地だ。もし、今、エルニドに出かけることができないならば、マニラにいながらでも行ってみたい場所がある。パシッグ川フェリー、またはマニラ湾クルージングに行けば、きっといつもと違うひと時を過ごすことができる。
秘境でダイビング、都会でクルージング。さて、あなたはどちらから始める?
秘境ダイビング
「エルニド」その魅力を知る。
フィリピンについてあまり知らなくても、セブやボラカイなどのビーチリゾートの名前は知っているという人は多い。そしてフィリピンに数ある有名ビーチリゾートの中でも、名実ともに別格といえるのが、パラワン島エルニドではないだろうか。エルニドを知らずしてフィリピンを語るなかれ———。
国際的評価の高いビーチ アジアで最高のランク
カナダの旅行会社フライトネットワークが2018年に行った調査「世界トップ50ビーチ」で、エルニドのヒドゥンビーチ(Hidden Beach)が世界3位にランクされた。1,200人のジャーナリスト、ブロガーからの回答を基にした結果で、世界1位はギリシャのシップレック・ビーチ、2位はオーストラリアのホワイトヘブンビーチ。エルニドはアジアのビーチの中でトップだった。100位までのランキングに、フィリピンからはシアルガオ州ガイアムホワイトサンドビーチが83位に入っている。エルニドには約50の美しいホワイドサンドビーチがあり、このように 世界的にも評価が高いビーチがあるのだ。
パラワン島の北部に位置するエルニドには断崖絶壁がそびえ、ツバメの巣が採れることからスペイン語で「巣」を意味するNidoと名付けられたという。中国料理の高級スープとして知られるツバメの巣のスープは、フィリピンではニドスープ(Nido Soup)と呼ばれる。
手つかずの自然の中へ マリンスポーツ&島めぐり
「フィリピンのラストフロンティア」と称される手つかずの自然、エメラルドグリーンの海にはジュゴン、カワゴンドウ(イラワジイルカ)、タイマイ、ヒメウミガメ、オサガメ、アオウミガメ、そして約800種を超える魚と数百種類におよぶ珊瑚が棲息する。ダイビングやシュノーケリング、アイランドホッピングを楽しみながら、エルニドのすばらしさを間近に感じることもできる。
エルニドは自然の景観だけでなく、1年を通じて温暖な気候に恵まれている。乾季は12月~5月、雨季は6月~11月だが、通常、台風の影響を受けることはほとんどない。
エルニドは、フィリピンにいるならぜひ一度は行ってみるべき場所の一つと言えるだろう。
在住者&旅行体験者が語るエルニド
人々を魅了するエルニド。長年暮らし、ダイバーとしてエルニドの魅力を知る在住者、そして旅のエキスパートが実際に旅行者として訪れて経験したエルニドについて語る。(写真は寄稿者提供)
初心者も楽しめる本格ダイビング
風光明媚な湾内&異国情緒体験
エルニドには一目ぼれでした。フィリピンでダイビングショップ経営をしようと2002年に訪れた時、ちょうどフィエスタが行われていました。ローソクとランプで照らされた村の小道で祭りを楽しむ人々の様子が忘れられず、ほかにも候補地がありましたがエルニドに落ち着きました。
エルニドでは ほかのダイビングサイトに比べて浅い5mから20mの間を潜ります。湾内の魚影の濃さはフィリピンでも有数で、ウミガメ、バラクーダ、エイなどに会えます。水深は平均10mから12mよりやや深いくらいで空気が持続しやすく、当店では50~60分の長めのダイビングを案内しています。閑散期の6月以降は水温も上がるので1時間以上ダイビングをすることも。体験ダイビングではレクチャーと安全のためのスキル練習に時間をかけ、12mの水深まで潜って濃い魚影やウミガメを見ることができます。初心者でも経験豊富なダイバーといっしょなので安心です。私が好きなエルニドのダイビングサイトは、South Miniloc、North Rock、 Helicopter Underwater Tunnelなど。ダイビングサイト以外では、Cadlao IslandにあるCadlao Lagoon中が気に入っています。また、あまり観光客には知られていないPort Bartonという小さな町で美しい夕日を見ることができます。
パラワン島北部にあるエルニドは、まさに最後の楽園の出発地。道が舗装され、村が街となり、わらぶきの平屋が5階建てホテルに変貌する急激な観光地化の中でも、やはりエルニドの魅力は風光明媚な湾内の風景にあります。セブなどほかの観光地に比べるとヨーロッパや南米からの観光客が多いので、日本人にとってはまさに「海外体験」ができるところだと思いますね。
大塚 義之さん(写真右端)
日系ダイビングショップ「EL DIVE 」経営。2009年よりエルニド在住。東京都豊島区出身。「ダイビングだけでなく、日本語でエルニドの情報をご要望の場合は、お気軽にお立ち寄りください。ダイブマスター候補生も募集中です」
www.el-dive.com
これまで見た中で一番美しい海と
5ツ星ホスピタリティーに感動
エルニドへは個人旅行で行きたいと前々から思っていたところ、2017年2月に日本のテレビ番組のコーディネーターとして行くことになりました。往路はマニラからエルニドへエア・スイフト(AirSWIFT)の直行便、帰りは陸路でプエルトプリンセサまで行き、空路でマニラへ戻りました。
印象に残っているのは大自然と海ですね。やはりマニラに住んでいると滅多に自然を感じることが少ないので、いい経験になったと思います。海はこれまでの人生で見た中で一番きれいだと思ったほど。特にラグーンには感動しました。エルニドリゾートが所有するエンタルーラ島の浜辺もすばらしかったです。
宿泊先の自然に恵まれたアイランドリゾート、エルニド・ラゲンリゾート(Lagen Resort)ではさすが5ツ星リゾート!って思わせてくれるサービスと、スタッフのホスピタリティーが強く印象に残っています。
エルニドに行くなら、まさに乾季の今がおすすめです。ちょうど私が行った時期も乾季だったので悪天候に見舞われず、仕事もスムーズにいきました。雨季にはマニラ~エルニド間の直行便がプエルトプリンセサに着陸せざるを得ない場合などがあったりします。
ディスカバリーツアーでは、今年3月1日から4月30日までの期間中、2泊3日限定のラゲン・アプリットリゾート宿泊プロモーションを実施しています。まだエルニドに行かれたことがない方はもちろん、リピーターの方にも絶好の機会です。 私も時間と余裕があれば本当にまた行きたいです(笑)
高橋 国光 さん(写真左端)
2015年に来比。千葉県松戸市出身。
ディスカバリーツアー マニラ本社勤務。
http://www.discoverytour.ph/
深く碧い海と壮観な奇岩群
アイランドホッピングで自然を満喫
2013年9月にエルニドへ家族10人で行きました。マクタン・セブ空港からセブパシフィックでパラワン州のプエルトプリンセサ空港へ。そしてプライベートバンでエルニドまで約6時間。ビーチに近いバジェットホテルに2泊した後、プエルトプリンセサへ戻って数日過ごしました。
エルニドで一番印象に残っているのはやはり手つかずの自然ですね。アイランドホッピングで4~5つの島をめぐり、自然保護区となっているサンゴ礁のディープブルーの海と、巨岩・奇岩が成す景観は本当にすばらしかった。自然保護区となっているサンゴ礁では泳いだりすることはできませんが、ホワイトサンドビーチで泳ぎました。めぐる島々には住んでいる人がいないため、まさに手つかずの自然が残っていました。アイランドホッピングは朝9時頃に船で出発し、午後4時頃に戻る日帰りツアーでランチは船の上でバーベキュー。エルニド滞在中の食事はフィリピンスタイルのバーベキュー中心で、特にシーフードはエビ、カニ、魚どれも新鮮でおいしかったです。
当時すでにエルニドは世界的に注目されるビーチリゾートで特にヨーロッパからの旅行客が多いと思いました。ボラカイなどに比べるとエルニドは高級リゾートといえます。弊社でも多くのエルニドのツアーを扱っており、日本人の方にはエルニドはセブに次ぐ人気の観光地となっています。
私が初めてエルニドに行ってから7年が経とうとしている今年4月、再びエルニドに行く予定です。またアイランドホッピングを楽しみたいと思っています。
Charlotte T. Floresさん
JTB セブ支店シニアスーパーザイザー。
セブ州コンソラシオン市出身。
都会クルージング
ゆるやかにパシッグ川、のんびりとマニラ湾。
マニラから遠出することなく水辺に憩いの時と場所を求めたい時、慌ただしい都会の喧騒を忘れてパシッグ川フェリーとマニラ湾クルーズはいかが。思い立ったらすぐに行ける別世界を「ナビマニラ」が体験レポート。
悠々と流れる川面から望む首都
パシッグ川フェリー Pasig River Ferry
ラグナ湖からマニラ首都圏の中心を横断し、マニラ湾へと注ぐパシッグ川。都会をゆるやかに流れるこの川にフェリーが運航しているという話は以前から聞いていた。「川が水草で覆われて運航できない」とか「川が汚染されていて臭う」といったネガティブな話を聞くこともあったが、パシッグ川のフェリーは昨年12月から、首都圏開発局(MMDA)により道路の渋滞解消の事業として進められている。2月中は就航プロモーションなのか乗船料は無料だった。
筆者は2月中旬、マニラ市中華街ビノンド地区エスコルタ・フェリーターミナルから午後1時45分発のマカティ市グアダルーペ・フェリーターミナル行きに乗船。フェリーはほぼ満席で、制服を着た学生や欧米人のバックパッカーも利用していた。
バードウォッチングもできる
運航中、フェリーの両側のドアは開けっ放しで、川風が船内に入ってくる。パシッグ川の水の色は黄土色でいかにも都会の川という様相だ。浄化作戦が功を奏しているのか、臭いに悩まされることはない。フェリーはいくつもの橋をくぐりながら進む。マラカニアン宮殿に近づくと一定の区間は写真撮影禁止となる。
ツバメや小さなかもめのような鳥が飛び交い、サギのような鳥が獲物の魚を狙っている。水面を激しく割って魚が跳ねる。マニラにまだ自然が残っていることに感心する。釣り人が糸を垂れ、子どもが川で泳いで遊ぶ様子も見られた。
フェリーがマンダルーヨンを越えると、目の前にマカティの街並みが近づいてくる。エスコルタからグアダルーペまで、途中の駅に寄りながら約1時間で到着。フェリーに乗ったことで、普段見慣れたマニラとは違う姿を見ることができる。
パシッグ川フェリーサービスの3月以降の継続については、2月24日時点では未定。交通手段として、また観光客向けアトラクションとして継続してほしいと思う。最新情報は首都圏開発局(MMDA)フェイスブック Pasig River Ferry Service www.facebook.com/mmdaprfs/で確認を。
静かな夕暮れの海と闇に輝く街
マニラ湾クルーズ Manila Bay Cruise
クルーズと聞くとハイソなイメージがあるけれど、サクッと気軽に楽しめるのがマニラ湾のクルーズ。プレステージ・クルーズ社の「ピザパーティー・クルーズ」なら、ちょっと海へ夕涼みに出かけてきますといった感覚で行ける。
ピザパーティー・クルーズは首都圏パサイ市のモール・オブ・アジアから徒歩約10分のエスプラネード・シーサイド・ターミナルを出航、マニラ湾を1時間30分周遊する。午後5時30分にフェリーに乗ってから午後6時すぎの出航までの待機時間は、ちょうどサンセットの時刻。空に浮かぶ真っ赤な夕日が、水平線にゆっくりと沈んでいくところをる見ることができた。マニラ湾の夕日はバリ島、北海道の釧路とともに「世界三大夕日」と呼ばれ、燃えるように赤い夕日で有名らしい。
ルーフデッキで海風に吹かれてみる
夕暮れからだんだん暗闇に包まれていく中、船は暗い海の上をゆっくりと進む。陸上の建物が輝いて闇に映える。あたかもクルーズ船から見る夜景を考えてライトアップされているようにも思えてくる。2階のルーフデッキに上がると広く開放感があり、周囲360度を見渡すことができる。時々、風が強く吹いて、肌寒く感じることもあった。
ピザパーティー・クルーズという名前の通り、ピザが食べ放題。飲み物もカクテルやアイスティーが飲み放題。揺れをほとんど感じないので、船酔いが心配だった筆者でも安して楽しむことができた。
参加者はカップルやグループが多く、1人で参加したのは私だけだった。1人での参加は珍しいのかもしれない。1人旅にこだわらないなら、ぜひ家族やカップル、友人と参加して、マニラ湾上からの夜景をいっしょに楽しんでいただきたいと思う。
プレステージ・クルーズの「ピザパーティー・クルーズ」は水曜日から日曜日に運航。料金は平日1人650ペソ、週末750ペソ。なお、クルーズ料金とは別にターミナル使用料金30ペソが必要。
PRESTIGE CRUISES Pizza Party Cruise
Tel: 02-8832-8200 / 0917-525-5455
Facebook: Prestige Cruises Mall of Asia
(ナビマニラ2020年3月号巻頭企画)