英字紙デイリートリビューン(10月31日付)の記事によると、フィリピンにはタトゥーが反社会的、犯罪にかかわるイメージもまだ残っているという。フィリピンではすでにタトゥーはアートやファッションとして世間に認められるものだと思っていた。

 

 10月下旬、台風クインタがフィリピンを上陸し猛威を振るっていたころ、ケソン州ルセナ市のある工具・金物店に空き巣が入り、5万8,000ペソ相当の品が盗まれた。警察が店内の監視カメラを調べると、複数の容疑者のうち、1人の腰のあたりにタトゥーが入っているのが判明。デザインはUFOと宇宙人。このユニークなタトゥーが手掛かりとなって、店の近所に住む26歳の男が逮捕された。これは、タトゥーが犯罪に結びついている例というよりは、タトゥーが指紋並みに容疑者の特定に役立った例というべきか。

 

(イメージ写真)

 首都圏モンテンルパ市の刑務官は、ギャングの受刑者間で抗争が絶えないことに苦慮していた。10月9日にも抗争が起きて9人の死者が出た。そこで、ある対策を考えた。それはギャングの名前のタトゥーを消すこと。敵対するギャング見分けるタトゥーが見えなければ、争いは起きないだろうというわけだ。タトゥーを除去することはできないので、刑務所に彫り師を呼び、受刑者のギャングの名前などを入ったタトゥーを黒いインクで塗りつぶすことになった。その後、抗争は減り、効果があったように思われた。実際にタトゥーを塗りつぶした受刑者にも「抗争に巻き込まれなくて済む」と評価されていた。

 

 しかし、受刑者はタトゥーを身体のあちらこちらに入れているので、全部塗りつぶすのは無理。また費用もかかる。そして、受刑者によっては、タトゥーを塗りつぶす痛みに耐えた挙句、自分の体に黒い点があちこちに入ってまるでダルメシアンのようになってしまう。

 

 このタトゥー塗りつぶし作戦が結局失敗だったことを裏付けるように、11月9日、再び抗争が起きて3人が死亡、65人の負傷者が出た。

 

身近にタトゥーがいっぱい

 

 マニラで暮らしていると、タトゥーを見ない日はない。実際、社会には受け入れられているように思える。以前、ドゥテルテ大統領が記者会見で自分のタトゥーを披露したこともあった。

 

 以前いたシンガポールでもタトゥーを見ない日はなかった。訪日客誘致の旅行展示会で、「タトゥーを入れているのだが、日本で温泉に入れるか」という相談がシンガポール人から多く寄せられたと聞いて、真面目な国家シンガポールにもそんなにタトゥーが浸透しているのかと驚いた。

 

 

 身近なところでは、当社のフィリピン人スタッフでもタトゥーを入れているスタッフがいる。男性にも女性もいて、タトゥーは普段話題にもならない。以前、ある女性スタッフの病欠の理由が「新しくタトゥーを入れたことに伴う発熱のため」と聞いた時は、タトゥーを入れると熱が出ると知って驚き、またこれは正当な病気による休みといえるのだろうかと困惑した。

男性スタッフのタトゥー「The Lily of the Valley」はキリストを表すのだそう。「胸に祖父母の肖像のタトゥーも入れています」

 

 

 手首、背中、足首の3カ所にタトゥーを入れている女性スタッフは、「困難な問題に直面した時、タトゥーを入れることで乗り越えることができたと思う。手首には娘の名前を入れている」と語り、もっとたくさん入れる予定だったと話す。「弟も妹も手足にタトゥーをたくさん入れている。私ももっと入れるつもりでデザインをいろいろ考えていたところ、タトゥーのインクにアレルギー反応が出て治療に多額の費用が必要となった。だからこの3年ほどはタトゥーが入れられないでいる」。彼女がラオスで働いていた時は、タトゥーを入れた女性にはネガティブなイメージがあったため、いつも長袖を着て隠していたという。

 

クローバー(シャムロック)の伝説にちなんだタトゥーを入れた女性スタッフ。

 

 筆者はタトゥーを見るのは好きだが、自分に入れることはないだろう。痛そうだし。

 

 世界では漢字のタトゥーも人気だそうで、中には日本人が見ると???なタトゥーもある。もしフィリピン人スタッフが漢字のタトゥーを入れる時は、前もって日本人スタッフに相談するように伝えたいと思う。(W)