日本では桜が満開のところもあったという3月21日、セブ市近郊のリロアンにある日本人墓地でお彼岸の墓参の会が行われました。当日は乾季に入り、真っ青に澄み切った大空の下、さわやかな風が吹いていました。石田武禅師の読経に続き、4名が焼香。コロナ禍のため、広報も思うようにできず、セブ日本人会などの関係者が故人を偲(しの)びました。日本からのご遺族の参列がここ数年絶えているのは寂しいことです。
セブには大正時代から数百人規模の日本人コミュニティがあり、公共墓地の一角に日本人専用の区画が整備されていたようです。しかし、戦禍によりコミュニティも墓地も烏有(うゆう)に帰してしまいました。数年前までは墓石が、スクワッター(不法居住者)が住むバラックの土台に転用されているのが見られました。
朽ちた柩(ひつぎ)や石塔が散乱する中から、戦前のフィリピン在留邦人の立志伝中の人、金ケ江清太郎氏の2歳の娘さんの小さな墓石を探し出し、お水を手向けたことがあります。移設も検討しましたが、かないませんでした。
戦後、昭和40年代から日本人がセブに戻ってきましたが、火葬場がなく、仲間が遺体を郊外に運んで、薪とガソリンで野焼きにしたという話を先輩から聞きました。その後、日本人のための墓地が造られましたが、管理がままならず放置されていました。10余年前に篤志家からセブ日本人会に墓地が寄贈され、墓石や納骨室の整備を行い、現在14名の御霊が眠っておられます。
セブ日本人会の会員、非会員を問わず、所定の手続きと費用を負担することで、この墓地にお骨を納めることができます。セブの背稜山脈を望み、母国日本へと続く海も間近なこの地に、今後も納骨される邦人は増えていくことでしょう。