みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 今年の5月9日はフィリピンの全国統一選挙です。フィリピンでは大統領・副大統領からバランガイの議員に至るまで国民の直接投票で選ぶため、高い関心を持っている人が多いです。

 

 

フィエスタ(お祭り Fiesta)

 

 フィリピンの選挙は6年に1度のフィエスタ(Fiesta)と言っても過言ではないでしょう。選挙活動もフィリピンではエンターテインメント性が強く、コロナ禍前は候補者の応援集会ではゲームや歌や踊りなどが繰り広げられていました。まるで「推し活」イベントです。自分の「推し」である候補者に会い、握手をしたり写真を一緒に撮ったり、さらにお弁当やTシャツがもらえるチャンスでもあります。中には禁じられていてもお金を配る候補者もいます。今日明日を生きのびることで精一杯の人たちなら、そういう目先の利益に飛びついてしまいそうですね。

 

まさに祭りのような雰囲気の2018年ラグナ州ビニャン市のバランガイでの選挙活動。(Wikimedia Commons Public Domain)

 

サーカス (Circus)

 

 フィリピンの選挙はサーカスにもたとえられます。昨年の候補者登録の時だけでも多くの「曲芸」や「綱渡り」がありました。例えばドゥテルテ大統領の長女サラ市長は、ダバオ市長再選に向け立候補すると言っていたのに、ボンボン・マルコス元上院議員とタッグを組み、副大統領に立候補しました。ドゥテルテ大統領が所属する与党PDPラバンからは側近デラロサ議員とゴー議員が大統領、副大統領候補として登録したものの、その後立候補を取り下げたため、与党からの大統領、副大統領候補者は誰もいない選挙となります。

 

 ドゥテルテ大統領が副大統領、あるいは上院議員に立候補するという話もありました。しかし、大統領が職務遂行できなった場合、副大統領や上院議長が代理で大統領となる可能性があるため、過去の大統領経験者が代理をするのは憲法上の再選禁止規定に抵触すると批判され、立候補を断念したとも言う説も。目まぐるしく事態が変化するので目が離せません。

 

 

 

万能薬? Lunas sa problema?

 

 フィリピンの人々は大統領を問題を一挙に解決する治療薬・解決策(lunas)のように考えているようです。リーダーが変われば何でも解決するはずと考え、変化をもたらすと約束する候補に有権者は一票を投じます。もちろん大統領も人間ですから一人で全てを解決することは不可能でしょう。それでも大統領は大きな権限を持つため、国民は選挙に将来の希望を託すのです。船の船長が舵を取るように、大統領は正しい方向へと国を導いていく責任があります。パンデミックという大変な時期だからこそ、誰がなるにせよ、次期大統領には国民の期待に応える政治を行ってほしいものですね。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia