『レア力で生きる「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』
小宮山利恵子 著(KADOKAWA)

 

マジョリティから抜け出す力

 

 私は会社員時代、長年新入社員採用面接を担当し、実に多くの大学生と面談する機会を持ちました。とても礼儀正しい学生の姿を見ると、この学生は礼儀正しい両親のもと、恵まれた家庭で育てられたのかなと、まずは想像したものです。しかし一方、不遇で非常に悲惨な家庭環境の中で育った礼儀正しい学生にも出会いました。

 

 この本の序で、著者は「朝起きたら、お父さんが死んでいますように」と祈り続けるようになりました」と書いています。このような赤裸々な体験を自分の本の中で書けるものではありません。こうした始まりの本ですから、一体どういう展開になっていくのだろうと、正直引き込まれるように読み進めていきました。

 

 著者は、不遇な環境にあっても自らの努力により、自分の生きる道を自ら切り開いていったのです。人と同じことをしてマジョリティ(多数派)にいる限り、どうしても勝ち負けはついて回ります。けれども、人と違う自分の強みを発揮すると、ライバルは圧倒的に少なくなり、競争社会から抜け出すことができる。こうした人と違う強みを、「レア力」と言い換えることができると著者は言います。

 

 本書では、留学によって学ぶことが多いこと、英語を習熟しておくことはとても大切であること、さらに自らの体験への投資を惜しまないことや自ら発信することの重要性なども述べられています。この本に書かれていることの多くが、私の人生観と共感します。

 

 競争のない世界、すなわちブルーオーシャンを楽しむための著者の数々の経験が正直に書かれていて、実に学ぶところが多い本です。

 

 

 

Rare Ryoku De Ikiru
by Rieko Komiyama, the title literally means ‘Live with a Rare Ability’. Self-improvement book based on the experiences of the author who overcame hardships.

 

 

 

 

中原秀夫
Hideo Nakahara
SHINANO INTERNATIONAL LANGUAGE CENTRE校長。
長野県伊那市生まれ。東京外国語大学外国語学部ウルドゥー語専攻卒業。日本山岳会会員、東京建築士会会員、英語通訳ガイド。著作に『アジアのことば 魅力旅』(創英社/三省堂書店 )。
「40年ほど前、リュックを背負い中東、中央アジア、南アジアを1人旅しました。その後も仕事や観光で、これらの地域へ行く機会もありました。しかし、今はアフガニスタンを始め中央アジアや中東の国々は安全に旅をできない状況です。昔の旅の思い出を懐かしく回想しながら、思いつくままノートに綴っています」