『空白の叫び』
貫井徳郎 著
少年3人が持つ「瘴気」を抉(えぐ)る
法で裁けない少年犯罪の加害者を主軸に物語が展開する。コントロールできない「瘴気」(しょうき)を抱える久藤、裕福な家に生まれ容姿端麗で頭脳明晰だが常に俯瞰的な葛城、複雑な家庭環境にいる神原、3人の中学生が各々の場所で人を殺めるまでが上巻、面識がない3人の少年院での日々が中巻前半、そして出所後が中巻後半から下巻で描かれる。
丁寧な心理描写で人物像が書き分けられた主人公3人は、似たような人に1度は会ったことがあるような気がすると同時に、3人が感じる「瘴気」は自分にも覚えがある故に、彼らの心の波は現実味をもって迫ってくる。
多くの人は自分は犯罪とは無縁と思っている。しかし、何かが1つ違っていれば、本書で久藤が言及する「他人に暴力を振るう際の『心の枷(かせ)』」が外れる可能性は十分にあったと考えさせられる。また、少年犯罪が起きた時に世間が使う「心の闇」という言葉は、あまりに短絡的ではないだろうかと思えてくるのだ。
3巻にわたり散りばめられた点が繋がる瞬間は、脳天を撃ち抜かれたような衝撃でしばらく放心状態に陥ったほど。各巻のクライマックスに向け心拍数が速くなるのを感じる。どの人物がどう変わるのか、変わらないのか。更生は現実的なのか。
著者が「『これで筆を折ってもよい』という思いすら抱くほどの大きな達成感」で書き上げた本書、圧巻の読み応えをぜひ。
Kuuhaku no Sakebi
A crime novel by Tokuro Nukui, a well-known Japanese mystery author. The story is about three junior high school students with different backgrounds who commit murder. What drove them to be killers…..?
深田莉映
Rie Fukada
まにら新聞記者。京都府出身。国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科平和研究専攻卒業。愛読書:『翻訳できない世界のことば』『誰も知らない世界のことわざ』エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ訳(創元社)
「ホットアイマスク最強です。もう手放せない」