『殺した殺された
~元日本兵とフィリピン人200人の証言~』
石田甚太郎 著(径書房)

 

当事者が語る悪夢の記憶

 

 単刀直入な書名に恐れをなしたのか、この本は身近にあっても読む気になれなかった。しかしコロナ禍による巣ごもり生活を契機に思い切って読み始めると「早く読むべきだった」と後悔した。

 

 本書は1945年2月から3月にバタンガスやラグナで発生した日本軍による大量住民虐殺で被害を受けたフィリピン人100人と、手を下した日本軍部隊の元兵士たち100人を、筆者が直接自宅などを訪れ、インタビューした内容をまとめたものだ。元兵士らの自宅や職場にアポなしで赴き、渋る本人から話を聞き出す石田氏の執念に感心させられる。

 

( Wikimedia Commons CC BY 2.0,CGP Grey)

 

 「水に流して忘れたい」「ゲリラが仕掛けた戦争だ」「真相は墓まで持っていく」という元日本兵と「赤ん坊はゲリラになれるのか」「あれは地獄だった」「命の替わりに補償を」と訴える遺族らの思いは交わりそうにない。しかし、この「負」の歴史を踏まえた上でないと本物の日比交流は築けないことを筆者は読者に伝えたかったのではないだろうか。

 

 

Koroshita Korosareta
The title literally means ‘Killed , Be Killed’ is a testimony collection. The author Jintaro Ishida interviewed 100 victims and 100 Japanese soldiers involved in the atrocities in Batangas and Laguna, Philippines in 1945.

 

 

 

澤田公伸
Masanobu Sawada
まにら新聞記者。大阪府出身。大阪外国語大学大学院フィリピン語専攻修了。愛読書:『暁を見ずに』ステバン・ハベリャーナ著(勁草書房)。
「最近はオンラインで映画祭を楽しんでいます」