みなさん、こんにちは。Kumusta kayo？ フィリピンの全国統一選挙も約１カ月後に迫ってきました。フィリピンではニックネームがよく使われますが、大統領候補たちも例外ではありません。今回は候補者10人のうち有力視される５人の名前を見てみましょう。
ボンボン・マルコス
(Bongbong Marcos)上院議員
ボンボン氏は、エドサ革命で失墜したフェルディナンド・マルコス元大統領の長男で、本名はフェルディナンド・マルコス・Jr.（Ferdinand Marcos Jr.)。フィリピンでは父親の名をそのまま長男に付け、Jr.(ジュニア)と付けることはよくあり、「ジュン(Jun)」と呼ばれたり、「ボーイ(Boy)」から「ボン(Bong)」「ボンボン(Bongbong)」と呼ばれたりします。関西ではお金持ちの坊ちゃんを「ぼんぼん」と呼びますが、これとは無関係です。過去に脱税罪が確定しているにも関わらず、マルコス元大統領の時代が良かったと信じる人たちも少なくないことからか世論調査では常に高い支持率を保っています。
マニー・パッキャオ
(Manny Pacquiao)上院議員
ボクシングで８階級制覇の世界チャンピオンから政治家に転じたパッキャオ氏の本名はエマヌエル・パッキャオ(Emmanuel Pacquiao Sr.)。マニーはエマヌエルの略称です。エマヌエルは聖書に出てくる「神はわれらと共におられる」という意味の「インマヌエル」から来ています。Sr.はシニアで、つまり長男に同じ名前でJr.を付けたということを示しています。「パックマン(Pacman)」という呼称も使われますが、これはゲームとは関係なく、PacquiaoのPacとMannyのManを組み合わせたものだそうです。
海外在住フィリピン人にとっても大統領は英雄でありスターのような存在。2016年10月、ドゥテルテ大統領のTシャツを着たブルネイ在住フィリピン人。(Source:Presidential Communications Operations Office, Wikimedia Commons, Public Domain)
ピン・ラクソン
(Ping Lacson)上院議員
元フィリピン国家警察（PNP）長官のラクソン氏の本名はパンフィロ・ラクソン(Panfilo Lacson Sr.)。フィリピンではfiという音がpiに入れ替わることからパンフィロの「フィロ」が「ピロ」になり「ピン」になったのではないかと推測できます。日本人が「ピン」と聞くと「ピンはね」とか「ピンキリ」なんて想像してしまいますが、それとは関係なく本名の「パンフィロ」は「信頼できる」という意味だそうです。
イスコ・モレノ
(Isko Moreno)市長
モレノ氏は現職のマニラ市長で本名はフランシスコ・モレノ・ドマゴソ(Francisco Moreno Domagoso)。「イスコ」はFranciscoの末尾iscoからきたものです。聖フランシスコの名から取られたこの名は「キコ」「パンチョ」等と略されるケースが多く「イスコ」は珍しい呼び名です。マニラのトンドで育ち、10代で芸能界入りしたモレノ氏は「市長」 “Mayor”をYorme（ヨーメ）と呼んだり、警察 “police/pulis” をlespu(レスプ)と呼ぶなど、言葉の音節の前後を逆転させたスラングで話すことで庶民っぽさをアピールしています。
レニ・ロブレド
(Leni Robredo)副大統領
レニ候補の本名はマリア・レオノール・ヘローナ・ロブ
レド (Maria Leonor Gerona Robredo)。マリアは聖母マリアの名から、また「レニ」は「陽の光」という意味の「レオノール」の略称です。経済学を学び弁護士資格も持つレニ氏は、内務自治大臣だった夫ジェシー氏の不慮の事故死ののち、南カマリネス州代表の下院議員を務め、2016年にボンボン・マルコス氏と26万票の差で副大統領に当選しました。今回の選挙ではピンクをキャンペーンカラーとし、支持者らは自分達をkakampinkと呼んでいます。これはkakampi（味方）とpink（ピンク色）そして「キャンペーン」もかけた造語です。
どの候補も親の期待のこもった名前が付けられていることが見てとれますね。５月９日の投票日には名実ともにこの国の将来にふさわしいリーダーを選んでほしいものです。
文：デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。
Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia
