読書を通じ国語力アップをめざす。

感想文に見る作品への深い理解

 

 読者からの声で始まった「まにら新聞国語・作文教室」では2020年11月以来、多くの児童・生徒が学力向上に励んできました。最近は、川柳づくりや読書感想文など楽しみながら力をつけられる取り組みも行っています。

 

 「国語・作文教室だより」では、生徒が教室で得た成果や体験談などを紹介していきます。今月と来月6月は国語教室の生徒が書いた読書感想文を紹介します。課題作品は、三浦哲郎の『盆土産』。昭和40年頃の東北の農村を舞台にした物語です。出稼ぎの父が盆に帰郷し、土産は苦労して持ち帰った「えびフライ」。祖母と姉と3人で暮らす主人公の少年は、父と土産のえびフライで幸せな一夜を過ごしますが、母の墓参りをすませると、父はすぐに東京へ戻っていきます。家族団らんへの少年の哀しい憧憬が見事に表現された作品です。

 

 

 

 

 日頃から熱心に学習に取り組み、めきめき力をつけている中村賢さん。この作品で鍵となる「えびフライ」について、「この機会がまれである事がえびフライのおいしさと地方での珍しさで象徴されている」と、とても的確に捉えています。また、この作品が高度成長期のものであることを、その時代を見たこともない彼が、「進化や発展が盛んだった時代の日本の風景」と表現していることに驚かされ、読み取りの深さを感じます。

 

 

 

 

 

「盆土産」最も印象に残っている場面 
中村 賢(中学3年生)

 

 最も印象に残っている場面は、主人公が家族と四人でえびフライを食べる場面。理由は、主人公の家族の愛情と共に時を過ごせる喜びが表れているからだ。普段は遠い東京にいる父親と一緒に夕飯を食べる幸せとこの機会がまれである事がえびフライのおいしさと地方での珍しさで象徴されている。また、はるばる東京から家族のためにえびフライを持ち帰って来た事や、ドライアイスでえびフライの新鮮さを保つという工夫で、父親の家族想いが表れている。この愛情を、家族は食卓を囲み分かちあっている。

 

 

 えびフライを食べながら祖母がえびのしっぽを吐き出す場面は、慣れない東京の文化に初めて直面する少年の想いや、明治維新を経て近代国家となった日本の急速な文化の発展を思わせる。

 

 

 進化や発展が盛んだった時代の日本の風景と、少年と家族の日常と幸せが表れている。

 

 

まにら新聞 国語・作文教室 運営責任者
浅井敢次郎(あさい かんじろう)

鳥取県出身。神戸大学教育学部卒業。大阪で中学校の社会科教諭として38年間勤務。日本語教育能力検定試験に合格後、オンラインでフィリピンやベトナムの人たちに日本語を教えるボランティア活動を継続中。2022年3月からマカティ在住。趣味はバドミントンを教えること、バイクで日本各地の旅行、PCの組み立て、登山、スキーなど。