「浴室の水栓がピカピカじゃない!」今年2月、私たち夫婦の元へセブ移住したドイツ人義母(86歳)が自宅に着いて、ほどなく発した一声がこれでした。
フィリピンの水道水は石灰分を多く含むため、金属の表面がすぐに曇ってしまいます。フィリピン在住の方であれば、皆さん同じ経験をされているのではないでしょうか。しかし、そこはドイツ人。妥協の余地なし。翌日からヘルパーさんは金具磨きに専念することになりました。
昨年1月に夫を亡くし、持病もある義母を1人でコロナ禍のドイツに置いておけず、セブでの同居を決断。温暖で介護等の人手が豊富、そして何より自分の娘がいるセブは、義母にとって理想的な場所だと誰もが思っていました。
環境の変化をできる限りなくすため、ドイツの自宅の寝室にあった家具、調度品を極力持ち込み、以前の部屋と同じような雰囲気に仕立て上げました。食事もなるべく食べ慣れているものを提供するようにしています。
しかし、思いのほか高温、多湿の気候への順応が難しい。食事以外はエアコンの効いた部屋で読書をしたり、パソコンをいじる時間がどうしても長くなってしまうのです。かつてはアジアやアフリカでのバケーションを楽しみ、日本の夏にも音を上げなかったのですが……。
酸素吸入が24時間必要なため、外出も制限されるのですが、週に1、2度は外に引っ張り出すように心掛けています。そのおかげか、英語で会話できる友人も少しずつ増えてきました。
とはいえ、3人それぞれにストレスを抱え込む日々が続いているのが現実。個人差があるのでしょうが、高齢者の海外移住は想像以上にハードルが高いということを、身をもって実感しています。