瀬名波 栄志さん   Senaha Eishi

 

 

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科東南アジア地域研究専攻在籍・同大学政治経済共生研究部門学振特別研究員。1996年米国サウスカロライナ州生まれ。北海道札幌市育ち。東京外国語大学国際社会学部フィリピン地域科卒業。「研究が自分の使命であり、研究で世の中を良くしたいと思っています」

 

 

 

Q1 初来比はいつ?

 

 2016年。大学の先輩に紹介してもらった夏のスタディーツアーで、ボホール島の漁村に泊まりました。

 

 

Q2 今回で何回目の来比?

 

 

 4回目。今回は昨年の10月から5月までの滞在です。その後日本に帰り、8月あたりにまたフィリピンに来て2年間ほど研究しようと思っています。

 

 

Q3 フィリピンを研究しようと思ったきっかけや理由は?

 

 親の影響もあって、幼いころからずっと第三世界の貧困問題や社会問題に興味がありました。それで東南アジアの研究をしてみたいと思っていたところ、大学の専攻選びがきっかけでフィリピン研究に巡り合いました。

 

 

Q4 主な研究内容は?

 

 

 反汚職運動の研究をしています。政治汚職がかねてよりフィリピンの格差社会の元凶になっていたり、富の再分配を阻害している現状がある中で、今までリベラル・左派勢力が汚職をどう撲滅してきたか、汚職が起こらない政治システムをどう作ってきたかを明らかにするのが私の研究の目的です。

 

 

Q5 研究をどのように役立てたい?

 

 

 国民による反汚職運動が起こるなど、社会を良くしようとするダイナミズムがあることを改めて研究として提示できれば、「フィリピンって変わらないよね」というようなネガティブなイメージをなくし、フィリピンの可能性を示すことができると考えています。また、社会運動研究界隈は欧米中心主義がいまだに強く、フィリピンの事例が扱われることが非常に稀なので、自分の論文や研究発表を通じてフィリピンのことをもっと知ってもらえたらと思います。

 

Q6 研究を通して知ったフィリピンのいいところは?

 

 政治汚職や暴力が蔓延しているのがフィリピンの現状ですが、それを変えようとする人々がいる点。政治汚職や暴力に関する事件の情報を集め、メディアを通じて表に出す左派やリベラルがいるからこそ、これらの問題が表面化し、フィリピンを良くするきっかけが作り出されています。

 

Q7 フィリピンでうれしかったことは?

 

 良い人間関係を築けていること。コロナ禍で2年間フィリピンに入国できず、フィリピン人の友達たちと疎遠になっていたのですが、今回の来比を知って、久々に会ってくれる人が多くてうれしかったです。

 

 

Q8 フィリピンで困ったことは?

 

 

 やはり物価。2019年ごろまではカレンデリアで70ペソぐらいで食べられたが、今は150ペソはする。

 

Q9 趣味や休日はどう過ごす?

 

 

 留学時代からずっとフィリピンの剣術アーニスをしています。目標は「昨日の自分より上手くなる」こと。毎週土曜日に師匠と大学構内で特訓しています。

 

 

Q10 今、凝っていることは?

 

 

 グラブやアンカスに乗った時にドライバーの語りを聞くこと。家族や出身地の話から収入の話まで、聞いたら答えてくれる人が多い。自分とは異なる視点で見たフィリピンを知ることができます。

 

 

Q11 フィリピンでお気に入りの場所は?

 

 自然が好きなので、木の多いフィリピン大学ディリマン校のキャンパスは落ち着きます。家の近所のカフェも気に入っています。

 

Q12 フィリピン国内・国外で行きたいのは?

 

 

 ミンダナオ地方には友達も住んでいるので行ってみたいです。海外なら、いちサッカーファンとしてクロアチアやセルビアなどバルカン諸国の強さの秘訣を探りに行きたいです。

 

Q13 これまで行ったことがある国は?

 

 フィリピン、米国、イギリス、韓国、台湾、インドネシア。

 

 

Q14 お気に入りの国や都市とその理由

 

 米国のサンディエゴ。昨年6月に学会に出席するために、父の知り合いの家に泊まったのですが、ベイエリアでの暮らしが素晴らしかったです。また、研究者が多く、さまざまな観点から意見交換ができたのも興味深かったです。

 

 

Q15 果てしなく食べられる好物は?

 

 

 北海道にある「十勝豚丼 いっぴん」。やわらかい豚肉にかかったタレとパラパラの米のコンビネーションが最高。北海道の回転寿司も好きです。

 

 

Q16 好きな酒は?

 

 ホップ強めのIPAビール。札幌出身者としてはサッポロクラシックも外せません。

 

Q17 好きなスポーツは?

 

 観戦だけですがサッカーが好きで、コンサドーレ札幌サポーターです。嶺岸光選手(日比ハーフでフィリピン代表)も応援しています。

 

Q18 尊敬する有名人は?

 

 左派政党アクバヤンの元代表ウォルデン・ベロ氏。アカデミックと実学の視点を癒合させて、フィリピンをよりよくするために尽力し続けたところを尊敬します。

 

 

 ジェシー・ロブレド元ナガ市長。アキノ政権元内務自治長官で、汚職のない、きれいな政治をつくろうと努力し続けた人。

 

Q19 好きな本は?

 

 

 デビット・グレーバー著『デモクラシー・プロジェクト』。人類学者で活動家の著者が、自ら関わったウォール街占拠の社会運動について記した本。

 

 森山至貴著『あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』。シンプルな文体ですが、いろいろな人に配慮して書かれていて、人にすすめたい本。

 

 

Q20 好きな音楽は?

 

 

 フィリピンのインディーズバンド、スリープ・アリー(Sleep Alley)。日本のロックバンドはいろいろ好きですが、昨年8月のライジングサン・ロック・フェスティバルの藤井風にはしびれました。

 

 

Q21 好きな映画は?

 

 『あのこは貴族』(2021年 岨手由貴子監督)。東京において隠されてきたジェンダーや貧富の格差をうまく描き出しているなと思います。
 キドラット・タヒミック監督の作品もフィリピンの貧困や格差を映し出していて興味深いです。

 

 

Q22 絶対無理なものは?

 

 アレルギーなので牛乳だけは絶対に無理です。

 

Q23 特技やプチ自慢は? 

 

 1本1,200ペソで買った牛タンが美味しかったこと。元値1,275ペソから75ペソ分値切ったのも自慢したいところです(笑)。

 

 

Q24 今ほしいものは?

 

 

 記憶力、集中力、忍耐力。24時間365日研究に費やせるようになりたいくらい。

 

 

Q25 5年後はどこで何をしていたい?

 

 研究をしていたいです。米国に拠点を置いて新しい知見を養うのもいいなと思っています。研究者として生きて、社会のためになる研究を太く長く続けていきたいです。