基本的に年中暑い東南アジアでは、ウインタースポーツを楽しもうという気が起きない。そんな中で、誘われるがままに記者が首都圏マンダルーヨン市のSMメガモールでアイススケートをやってみた。
ほぼ半世紀ぶりの体験
私がアイススケートというものを最後にしたのは45年ほど前、北陸のド田舎で小学生だった頃である。それが最初で最後。それ以来、スケートをする機会もなければ、する気もなかった。そもそも運動も寒いところも嫌いなのだが、ひょんなことからスケートの誘いを受け、7月末の日曜日にマニラですることになった。もちろん、マイスケート靴など持っていない。当日持参したものといえば、おなじみのディスカウントストア「日本城」で66ペソで買った軍手のみである。
スケートリンクでは、まず誓約書にサインを求められる。みんなスラスラとサインするので、私も詳しく読まずにサインをしてしまった。おそらく滑って転んでケガをしても自己責任といったことが書いてあったのであろう。編集稼業に身を投じた時に先輩から、「絶対に指だけはケガをするな。文字が書けなくなるから」と言われたのを思い出す。
スケートは重労働
サイズ「8」のスケート靴を借り、異臭に耐えながら履く。靴を借りる時に吹き付けられたスプレーのにおいか?履いてからおもむろに立ってみたところ、意外にすんなり立てた。心の中で「立った立ったクララが立った」とつぶやく。
いざスケートリンクへ。すると、なんということか、このリンクには手すりがないではないか! 仕方ないので壁のへりにつかまって、おそるおそる離れてはペンギンのように歩き、滑ってみる。そんな私のことなどお構いなく、同行者はすいすい滑って行く。 リンクの仕切られた一角では、アイスホッケーの練習が行われていて、小さな子どもが滑って急に停止したり、横になったり、いろいろな体勢でトレーニングをしていた。フィギュアスケートの練習をしている子もいた。白いマイスケート靴を履き、氷上を優雅にお滑りになっておられる。きっとやんごとなきファミリーのご令嬢であろう。
壁伝いによちよち滑り、リンクを数周するとだんだん体力が消耗し、後ろに倒れそうになってくる。長袖のジャージを着ていたが、滑っているうちに暑くなり、汗もだらだら流れてきたので途中から半袖で滑ることにした。時計を見ると、滑り始めてからまだ30分ほどしか経っていない。制限時間の2時間にはまだたっぷりあるが、もう十分。終えてコーヒーでも飲んでくつろぐことにした。2時間みっちり滑った同行者には恐れ入る。私は、ケガをせずに終えることができただけで本望である。
思ったのだが、マニラでアイススケートができるなら、スキーができるところもあってもいいのではないか。あればきっと大人気のアトラクションとなるであろう。東京・池袋から電車で行ける狭山スキー場みたいな屋内人工スキー場が、いつかマニラに登場することを期待したい。(T)