茶道といえば、千利休、日本の侘び寂び、おもてなしの精神など、なんとなく漠然としたイメージを持っている方は多いだろう。筆者も正直そのうちの1人である。そんな筆者が茶道裏千家淡交会マニラ協会が開催する秋のチャリティ茶会に招待いただき、初の茶道体験をしてきた。
10月28日(土)に行われた秋のチャリティ茶会は、2019年以来、4年ぶりの開催。午前10時から1席目が行われ、計6席が設けられた。
今回筆者が参加させてもらったのは、英語で進行や説明が行われる午前11時半からの席。筆者を含めて16人が参加し、英語で行われる席というだけあって、日本人よりフィリピン人の参加率の方が高かった。
まず席に着き、正座。30分ほどの茶会で最後まで正座を貫き通せる自信は全くなかったものの、いったん挑戦してみる。参加者全員がそろい準備が整うと、淡交会の席主(茶会の解説者)の挨拶から始まり、さっそく茶菓子が配られる。なんとなくお茶の後に菓子を食べるものだと思っていたのだが、お茶の苦味に備え、最初に甘いお茶菓子を食べるんだとか。今回出されたのは、干し柿から作った柿餡(あん)を外郎(ういろう)で包んだ「木守」(きまもり)というお菓子。もちもちの皮に包まれた程よい甘さの餡が、甘党の筆者にはたまらなかった。
お茶の用意がされている間に、席主による床の間の説明がなされ、掛け軸や花にそれぞれ意味があることを学ぶ。そして肝心の飲み方について聞く。左手で底を支えるように持ち、右手は添えるようなかたち。そこからお茶碗を時計回りに2度回すのだが、これはお茶碗にも正面があり、渡された時は自分に向いてる正面を、口をつける際には少しずらすため。こうすることで亭主や道具に敬意を払うという意味が込められている。何となく知っていたお茶碗を回す動作も、そんな心遣いから来ていたとは驚きだ。
そして気になる茶の味は、やはり先に食べた菓子のおかげなのか、覚悟していた以上に苦味はなく、全く雑味の感じない上品な味だった。
全員がお茶を飲み終わったところで、席は終了。30分本当に経ったのだろうか? と思ってしまうほど集中し、あっという間の時間だった。一方やはり10分早々で挫折した正座は日本人として少々情けなくもあるが…。
茶道裏千家淡交会マニラ協会では、週に3回午前中の時間帯に稽古を行っている。日本ではなんとなく敷居が高いものと感じてしまう茶道。しかし、茶道裏千家淡交会マニラ協会では、「点前よりは思いやりや心を学ぶところ」と、どんな人でも参加しやすく、日常生活にも役立つような奥深い学びを発見する場を提供している。海外にいるからこそ、日本の心や侘び寂びを学びに、参加してみてはいかがだろうか。稽古についての問い合わせは茶道裏千家淡交会マニラ協会のメールアドレス(manilachado@gmail.com)まで連絡を。なお、次回は夏の茶会が開催される予定。