カビテ州タガイタイでの2泊3日の現実逃避行を2回にわたってお届け。今回はローカルフード編です。

 

※掲載の情報は11月初旬の取材時点のものです。

 

 

絶対食べよう至高のブラロ

 

 

旅行に行ったら忘れてはならないのが、現地での食事を楽しむこと。日本であろうが、フィリピンであろうが、どこの国でも地域ごとのご当地名産はあるものだ。そして今回訪れたタガイタイで外せないのは、ブラロだろう。「タガイタイへ行く」とフィリピン人に伝えれば、ほぼ全員が「ブラロを食べるべき」と口をそろえる。骨付きの牛すね肉や骨髄をじっくり煮込んだフィリピン料理のブラロは、白菜などの葉物野菜やインゲン、とうもろこしなどが入って、栄養バランスも良い。フィリピンでは、二日酔いに効くとも言われている。

 

 

タガイタイでブラロが有名な理由に、肉用牛の畜産が盛んであることが挙げられる。暑すぎず寒すぎない気候が、良質の牧草を育み、また、牛も体調を崩しにくいのだそう。さらに、タガイタイの畜産農家たちは門外不出の美味な牛肉の生産技術を持っているらしい。うわさの真相は分かりかねるものの、そんなおいしい牛肉の産地タガイタイのブラロは、マニラや他の地域のものとは一線を画すのだ。

 

タナウィン・サ・グロド・レストラン(Tanawin sa Gulod Restaurant)。おしゃれなベンチで写真撮影をしたあとは、コテージで涼しい風を感じながら食事を楽しめる。

 

 

丘の上で楽しむ味わい深いスープ

 

 

ブラロの有名レストランがさまざまある中で、訪れたのはタガイタイ・ナスグブハイウェイ沿いにある「タナウィン・サ・グロド・レストラン」。友人が景色もよく、価格も比較的手ごろだと勧めてくれた。

 

 

到着したのは午後4時ごろ。夕食には少々早すぎるということで、丘の上からタール火山やタール湖を眺めてみたり、背景にして写真撮影をしてみたり。SNS投稿用に喜ばれそうなベンチなども用意され、特に女性客に人気だ。また、どうやらその場でキャンプもできるらしく、テントを張っている家族連れもいた。

 

 

席に着き、さっそくブラロを注文。さて、みんなが口をそろえて「食べるべき」と言うタガイタイのブラロはいかほどのものか、いざ実食。煮込まれホロホロトロトロの牛肉に、新鮮で歯ごたえのいい野菜が美味。ブラロならではの牛肉の脂やコラーゲン、野菜の煮汁が濃縮された味わい深いスープが、涼しいタガイタイの気候の中で、体中に染み渡る。フィリピン人のように、白米にスープをかけて一緒に食べるのもいいが、そのままじっくりスープを味わって体を内側から温めるのも最高だ。

 

ブラロは3~4人でシェアするのにぴったり。

 

 

お土産ならこれ一択 ブコパイ

 

 

タガイタイのお土産といえば、ブコパイである。ブコ(タガログ語でココナツの意味)をクリームと一緒にパイ生地に包んで焼き上げたスイーツだ。こちらもブラロの牛肉と同様、ココナツが豊富に採れることからタガイタイの名産品になったんだそう。

 

 

筆者は以前、イサベラ州を訪れた帰りの長距離バスの中で、車中販売のおばさんからブコパイを買って食べたことがある。それが全くおいしいと思えず、正直ブコパイはあまり好きではなかった。だが、タガイタイのブコパイは違うと聞き、ちょうどお土産も買いたかったので、人気ベーカリーの「コレッツ」(Colette’s)でついでに自分用にも購入し、再挑戦してみた。

 

 

帰宅後、まだほんのり温かさが残るブコパイを切ってみる。さっくりとしたパイ生地の中に、ココナツがぎっしりと詰まり、クリームもたっぷり。以前買ったものより厚く、本場のプライドを見せつけられたような気分になった。そして一口食べてみれば、ほどよい甘さが口いっぱいに広がる。この甘さも、ココナツの素材の甘さでまったくしつこさを感じない。ココナツの実のシャキッとした食感とクリームのトロっとした感じも絶妙で、そこに加わるサクサクとしたパイ生地がいいアクセントになっている。名物にうまいものなしと言われるが、タガイタイのブコパイは間違いなくおいしい。

 

コレッツのブコパイ。ココナツとクリームのバランスが絶妙。

 

 

マニラ首都圏から車で約2時間のタガイタイ。日帰り旅行としても人気のこの観光地で、景色を楽しみ、秋の訪れのような気候を感じ、食を堪能する。そんな充実した週末をぜひ提案したい。(新)

 

 

(初出まにら新聞2023年11月11日号)