朝ご飯は食べた方が良いとわかってはいても、抜いてしまうことが多々ある。毎朝シリアルにミルクで済ましてきたが、何か物足りない。そこで今年はまず朝食を豊かにしようということで、年初にマカティでバラエティに富んだ朝ごはんに挑戦してみた。
Tapsilog タプシログ
フィリピンの朝食の定番、シログ(Silog)。これは、シナガグ(Sinangag)=ガーリックライスと、イトログ(Itlog)=卵を合体させた呼称とされる。ガーリックライスに目玉焼きを基本に、タパ(マリネして炒めたビーフ)が付けばタプシログ、ロンガニサ(ソーセージ)が付けばロングシログ、バグス(ミルクフィッシュ)が付けばバグシログ、トシノ(豚肉の甘辛い照焼き)が付けばトシログといった具合に、そのバリエーションは果てしない。 朝からガーリックライスを食べるのはいかがなものかと思うが、その香ばしい薫りに魅せられてしまうのだ。
Kaya Toast カヤトースト
シンガポール人にとってソウルフードと呼ばれるカヤトースト。カリッと焼いたパンにパンダンリーフとココナツミルクでつくったカヤジャムを塗り、薄切りバターをはさむ。この甘く濃厚な味のトーストを、コンデンスミルク入りのコピ(コーヒー)と一緒に楽しむ。温泉卵に醤油とコショウをかけ、小さなスプーンですくって食べるのも忘れてはいけない。マカティのワン・アヤラに開店したカヤトーストの専門店ヤクンは、中国・海南島からの移民がシンガポールで1944年に創業した老舗。
Nasi Lemak ナシレマ
マレーシアやシンガポールの定番朝食メニュー、ナシレマ。マレー語でナシはご飯、レマはリッチ、脂肪といった意味を持つ。ココナツミルクで炊いたご飯はその名の通り、まさにリッチで豊かな風味。そのご飯と一緒に、イカンビリス(小魚の煮干し)、塩味のピーナッツ、キュウリの薄切り、ゆで卵、フライドチキン。パリッと歯ごたえのあるものと、しっとりやわらかい食感のものがミックスされている。そしてまろやかな味わいのご飯に対抗するように、サンバル(辛味調味料)が付いてくる。最初は辛いと思っても、このサンバルがクセになる。筆者はシンガポールにいたときにナシレマにはまり、毎朝買って食べていた。するとある朝、店の人から「ナシレマはカロリーが高いから毎日食べるのはやめたほうがいい」と言われたことがある。
Phở Bò フォー・ボー
ベトナムの国民食フォーは元々は朝食メニューであり、半透明のツルッとした麺に牛骨ベースのスープ、薄切り牛肉が載ったフォー・ボー(牛肉)が昔ながらのフォーだ。その名前は昔フォーを売り歩く行商人が使うコッフルフー(Coffre Feu、炎の容器の意味)、あるいは料理のポトフ(Pot au Feu)に由来するという。ベトナム北部が発祥で、一般に塩味の澄んだスープで薬味はネギのみのシンプルな北部ハノイのフォーと、甘口のスープで、もやしや香草をたっぷりトッピングする南部ホーチミン市のフォーは違う。今回マカティで食べたフォーはまろやかな味わいのスープで、トッピング用にもやしが付いてきた。やはりフィリピンでは気候も似た南部スタイルが合うようだ。
English Breakfast イングリッシュ・ブレークファスト
朝食と言えばご存じイングリッシュ・ブレークファスト。マカティのパブでもソーセージ、ハッシュ・ブラウン、ベーコン、ベイクト・ビーンズ、トマトのグリル、ブラック・プディング、トーストが1枚のプレートに載って出てきた。揚げたり、炒めたりしたものがガッツリ載って、別名Fry-upと呼ばれるのも納得。どれもおなじみの食べ物だが、その中で一つ怪しくたたずむのが「血のソーセージ」ブラック・プディングである。英国の朝食には欠かせないものらしい。朝からパワー全開でいきたいというときには、イングリッシュ・ブレークファストはおすすめだ。朝にこれだけ食べたらお腹いっぱい、ランチのことなど忘れて仕事に没頭できるだろう。
コンチネンタル・ブレークファストとは
ホテルや飛行機での食事のときに耳にするコンチネンタル・ブレークファスト(Continental Breakfast)。英国では揚げたり炒めたりして温かい朝食なのに対し、コンチネンタル・ブレークファストと呼ばれるヨーロッパ大陸風の朝食は、基本的に火を使わない料理が出てくる。パンやシリアルにコーヒーにヨーグルトといった具合。大陸というだけに豪勢でボリュームたっぷりの朝食を期待していたら、シンプルなのが出てきて思っていたのと違うなあと少々がっかりしていた筆者である。
( 初出まにら新聞2024年1月6日号)