隠れたソーセージ大国
美味なるもの地方にあり
マニラで初めてロンガニサを食べた時のこと。何の知識もなく食べ、その甘い味にネガティブな衝撃を受けて以来、ロンガニサは食べないことにした。フィリピンでホットドックと呼ばれるソーセージは好きだが、ロンガニサは嫌いということで過ごしてきた。先頃この欄でも取り上げた甘いフィリピン・スパゲティは許せるとしても、甘いソーセージはいただけなかった。
ロンガニサはスペイン由来のソーセージだが、本家の方の見た目はサラミのよう。食べたことはないけれど決して甘くはなさそうだ。フィリピンのロンガニサの作り方を見ると、1キロの豚ひき肉に、2分の1カップまたはそれ以上のブラウンシュガーを入れると書いてある。そりゃ甘くなります。
先述のように、長らく筆者のフィリピンライフからロンガニサは抹消されていたのだが、昨年ルソン地方パンガシナン州アラミノス名物のロンガニサを食べて一転した。両端がつまようじのような細い木片で縫われたキュートな見た目、スパイスが効いて、ほのかに酸味が残る味。このアラミノス・ロンガニサをきっかけにロンガニサ愛に目覚めたのである。
北イロコス州ラオアグ市(Laoag)のニンニクや酢を効かせたロンガニサ、ネットのランキングでフィリピンのベストと誉れも高い南イロコス州ビガン(Vigan)のロンガニサ、パプリカやオレガノ入りでスペインのロンガニサに近いとされるケソン州ルクバン(Lucban)のロンガニサなど、フィリピンには地方特産のロンガニサがある。ルソン地方中部ヌエバエシア州カバナトゥアン市(Cabanatuan, Nueva Ecija)は、「フィリピンのロンガニサ・キャピタル」と言われるほどに、さまざまな種類のロンガニサがあるそうだ。ソーセージといえばドイツが有名だが、フィリピンは隠れたソーセージ大国なのだ。
マニラの甘いロンガニサを食べて嫌いになってしまった読者の皆さん、ぜひ今回紹介したアラミノスやビガンのロンガニサを一度食べてみていただきたい。ロンガニサを目的にフィリピン各地を旅行したくなってしまっても不思議ではないと思う。(T)
(初出まにら新聞2024年2月1日号)