いつも熱々のトロ~リ濃厚麺
発明者の心意気が今に伝わる
太く黄色い麺に、トロッとしたスープ。レバー、フィッシュボール、キキアム(揚げミートロール)、ゆで卵や溶き卵、エビなどをトッピング。パンシット・ロミという言い方もある。パンシット=フィリピン風焼きそば、汁なしの麺料理と思っていたのだが、ロミはパンシット・ファミリーの中で唯一のスープ麺かもしれない。ロミはレイニー・デイ・フード(Rainy Day Food)とも呼ばれる。雨で外出したくない日、また、いざという時のために備えてお金を使わない日に適した料理という意味らしい。
シンガポールやマレーシアに、とろみのあるスープに太いエッグヌードルが入って、その名もそっくりなローミー(Lor Mee)というのがある。それがフィリピンに伝来してロミとなったと思っていた。だが、調べてみると、中華系の食文化の影響は受けているものの、ロミはれっきとしたフィリピンで生まれた料理であった。生まれた年も生まれたところも、また発明した人も知られている。
ロミは、1968年にバタンガス州リパ市(Lipa)でパンシットを提供する食堂を営んでいた中国人のトウ・キムエンさんが考えた。キキアムとミートボールをトッピングした麺料理を麻雀仲間にふるまっていたのが始まりだ。好評なので妻のナタリアさんと店でも出したところ、ロミは近隣の州、さらにマニラにも広まっていった。急速にロミが各地に広まったのは、トウ・キムエンさんが、客やロミでビジネス展開を考える人たちにレシピや作り方を教えたからである。そして55年を経た今も、いろいろな店が工夫を凝らして独自のロミをつくり出し、提供している。
リパ市にはロミの人気店が多い。その中でもリアムズ・ロミハウス(Liam’s Lomi House)は、テーブル3つの小さな店からスタートし、地元の人たちに評判の店となって、今は駐車場もある大きなレストランとなった。ロミ・ドリームを実現した店だ。また、リパ市では毎年6月20日にロミ・フェスティバルが開催されており、その日はリパ市の市制記念日でもある。
ロミの聖地でロミ専門店をはしごしてみてはいかが? とろみのあるスープはいつも熱々なので食べるときにはやけどをしないように注意しよう。(T)
( 初出まにら新聞2024年2月8日号)