1824年に建立された後、撤去され、1978年に復元されたイントラムロス内プラザ・ローマに建つスペイン国王カルロス4世の像(Charles IV, 1748~1819)。

 

 

 

政治に興味なし
狩り好きのスペイン国王

 

 マニラ市イントラムロスのプラザ・ローマの中心、噴水とともにマニラ大聖堂と向かい合うように建つのがカルロス4世の像だ。1788~1808年まで王位についたブルボン朝時代のスペインの国王である。フィリピンは1521〜1898年までスペインの統治下にあったため、カルロス4世もフィリピン統治中の王の1人だった。

 


 カルロス3世とマリア・アマリア・デ・サホニアの間に次男として生まれたカルロス4世は、母の家系譲りで体格がよく、体力に恵まれた少年だった。若い頃は村の男たちとレスリングをするのが好きだった。一方知性に恵まれていた父方には似ず、鈍感で愚直であると言われていた。また女性と付き合ったことがなく、結婚が決まったときにはどうすればいいのかわからず途方に暮れたという。

 


 1788年に国王に即位したカルロス4世は狩猟が好きで、政治には関心がなかった。代わりに王妃である妻のマリア・ルイサ・デ・パルマとお気に入りの役人マヌエル・デ・ゴドイに公務を任せていた。ゴドイは王妃も執務室も事実上自分のものにしたが、カルロス4世はそのままゴドイに政治の全てを任せ、ゴドイと王妃の言いなりであった。

 

 

娘の感染をきっかけに
ワクチンを領土に普及

 

 カルロス4世は娘の1人、マリア・ルイーサが天然痘に感染したことをきっかけに、国費でスペイン領全土にワクチンを配布するよう指示した。この時スペインの植民地であったフィリピンもこの恩恵を受け、人々はワクチンを接種することができた。王としての統治能力はあまりなかったという評価を受けるカルロス4世だが、天然痘ワクチンを植民地にも配布したことは歴史に残る英断だったといえる。

 


 そしてこの功績に敬意を表して建てられたのが、プラザ・ローマの像である。像は1960年代にゴンブルザ(フィリピンのカトリック神父、ゴメス、ブルゴス、ザモラの3人)の記念碑と建て替えられたが、1978年に元マルコス大統領の指示で復元された。

 

 

( 初出まにら新聞2024年3月19日号)