春巻きか、クレープか
東南アジアに親戚ぞろぞろ

 

 のり巻き、鉄火巻き、納豆巻き、かっぱ巻き、春巻き、トルティーヤ、ロールキャベツ……。昔から長いものに巻かれて生きてきたせいか、巻いた食べ物に目がない。なので、フィリピンに来てルンピアの存在を知ったときはうれしかった。揚げたルンピアもいいが、ベトナムの生春巻きを愛する私はルンピアン・サリワに期待していた。だが、食べてがっかりした。

 


 もちもちっとした厚めの皮はそれなりによいとして、中の具が物足りない。刻んだニンジンにカブ、ピーナツ、レタス。ソースもブラウンシュガーが甘い。具に野菜しか入ってなかったのは、ベジタリアン・バージョンだったためだった。フィリピン風春巻きというか、クレープというかも曖昧だ。それ以来、ルンピアン・サリワを積極的に食べたいとは思わなくなった。

 


 そんなルンピアがフィリピンにやってきたのは、スペインによる統治が始まる前。福建省からの移民によってもたらされ、名前は中国・福建語の潤餅(lun pia)、湿ったやわらかいケーキという意味の言葉に由来する。

 


 同様の料理はインドネシアでもルンピアと呼ばれ、ルンピアン・サリワのように揚げないルンピアもある。シンガポールでポピアと呼ばれるものが、フィリピンのルンピアン・サリワに似ている。ポピアは中華とマレーのミックスであるプラナカン料理で、漢字では薄餅と書く。包む皮はフィリピンのルンピアン・サリワよりずっと薄い。東南アジアのいろいろなフレッシュ・ルンピアの親戚を食べ比べてみたいものだが、果たしてフィリピンのルンピアン・サリワに勝ち目はあるだろうか……。

 


 この記事を書くに当たって数年ぶりにマカティのフードコートでルンピアン・サリワを食べた。1本150ペソ。以前は100ペソしなかったと思うのだが仕方がない。今度は肉入りだったが、私のルンピアン・サリワに対する認識を覆すほどではなかった。

 

 

 フィリピン人の知人に言わせると、ルンピアン・サリワを食べるならマニラ市の中華街ビノンドへ行けとのこと。さらに、ルンピアン・サリワよりもルンピアン・ウボッド(Lumpian Ubod)について書くことを勧められた。ヤシの芯をはじめとした具が詰まっていて食べ応えがあるという。これもビノンドにあるのかと聞くと、「それはわからないが、西ネグロス州には確実にあるだろう」という。

 

 

 ルンピアのためにネグロスに行きたいと会社の経理に取材費を申請してみるか。もし今後本欄にルンピアン・ウボッドやバコロドチキン、サトウキビについての記事が出てきたら、取材費が出たんだなと思っていただきたい。(T)

 

 

(初出まにら新聞2024年4月4日号)