グリルチキンチェーンのマンイナサルのハロハロ。

 

 

 

 

ルーツは日本のかき氷
フィリピンで豪華に進化

 

 マニラの日中の暑さはまだ続いている。ということは、まだまだハロハロがおいしい季節である。ご存じフィリピンの国民的デザート、ハロハロ。日本でもコンビニのミニストップにあって、おそらく日本人が最初に知るフィリピンの食べ物ではなかろうか。

 

 


 ハロハロはタガログ語でミックス-ミックス、混ぜこぜという意味で、そのルーツは戦前に日本人移民がフィリピンでつくったかき氷にある。細かく刻んだ氷に練乳を掛けたシンプルなものから始まり、やがてモンゴ豆や赤インゲン豆をトッピングして「モンヤ(Mong-ya)」と呼ばるデザートになった。

 

 

 1900年代初頭に米国人によるマニラ市キアポのクインタ・マーケットに製氷工場ができたことで氷の入手が容易になり、日本人が売るモンヤが一気にフィリピン人に人気のデザートとなったという。戦後、「日本人が持ち込んだものはボイコットだ!」という動きはなかったようで、その人気は続き、フィリピン人が好みのトッピングを追加していった。

 

 

 ナタデココ、ゼリー、カオン(サトウヤシの実)、ジャックフルーツ、レチェフラン、アイスクリーム、バナナ、カモテ(サツマイモ)……。見た目もカラフルに、かき氷と一緒に混ぜていろいろな食感と味を楽しめるハロハロがつくられていったのである。

 

 

 中国生まれのラーメンが日本で変容、進化したように、日本のかき氷がフィリピンで進化したのがハロハロだといえるかも。使う食材に決まりはなく、自由で可能性は無限大、こんな緩さが南国生まれのデザートらしい。

 

 


 ハロハロのべースはあくまでかき氷であり、削った氷のはずであるが、その立場は器の底に追いやられ、主役はすでに豪華なトッピングにとって変わられてしまっているようだ。そのうち、キニラウや刺身が載っているハロハロが出てきても驚かないだろう(食べる気が起きるかどうかは別である)。

 

 


 東南アジア諸国には、かき氷風のデザートがいろいろある。基本夏限定の日本のかき氷と違い、年中食べることができるから氷のデザートが発達したのだろうか。ベトナムのチェ、タイのタプティムクロープ、マレーシアやシンガポールのチェンドルとアイスカチャン、インドネシアのエスカチャンやエス・テレール、エス・チャンプル。これらと比べても、ハロハロはインスタ映えする姿とおいしさで上位にランクされると思う。

 


 食べるといつもキーンと頭痛がするハロハロ。しかし、食べずにはいられない。これも一種の中毒であろう。(T)

 

 

 

(初出まにら新聞2024年5月30日号)