みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? フィリピン語は接辞によって名詞にも動詞にもなり、意味が変わります。フィリピン語で「手」を意味するkamay(カマイ)に-inを付けたkamayinは「手で(何かを)する・手づかみにする」という動詞になり、-anを付けたkamayanは「握手をする」という動詞にも「手で食べる場所・手で食べる会食」という名詞にもなります。スプーンやフォークを使わず手づかみで食べるKamayanというレストランをご存じの方も多いでしょう。

「手」の慣用句いろいろ

 


 kanang kamayと言えば「右手」のことですが、物理的な「右手」の他に「頼りになる助手」という意味もあります。日本語で「AさんはBさんの右腕だ」と言う時の「右腕」と同じ意味ですね。またkamay na bakalと言えば「鉄の手」という意味で、これは強権的で厳しい指導者やその施策を指します。これらは比較的わかりやすい慣用句ですが、中にはすぐにはわかりにくいものもあります。

 

 


 例えばmagaan ang kamayは直訳すると「手が軽い」という意味です。これは通常「けんかっ早い、すぐ手を上げる」という意味で使われます。しかし同じ表現が「手先が器用で細かい作業がうまい」という意味でも使われることがあります。歯医者や職人などが細かい手作業を素早く行える、という意味でもmagaan ang kamayを使うのです。magaanの反対語のmabigat(重い)を使ってmabigat ang kamayと言うと、直訳すれば「手が重い」となりますが、実はこれも「けんかっ早い」という意味です。こちらは弱い相手に暴力をふるう癖がある、といったニュアンスがあります。

 

 


  malikot(落ち着きがない、いたずらな)という形容詞を使ってmalikot ang kamayと言えば「盗癖がある、手癖が悪い」という意味になります。mabilis(早い、速い)を使ったmabilis ang kamayは、スリなどの「盗むのが素早い」ことです。

 


 maghugas ng kamayと言えば「手を洗う」という意味ですが、hugas-kamayと言えば、「責任逃れ」という意味になります。何か問題が発覚したとき、「知らなかった」「記憶にない」と述べて責任逃れをしようとしている場合、この表現を使います。

 

 

スペイン語由来のmano

 


 さて、kamayの他にスペイン語の「手」であるmanoが使われる場合があります。フィリピンには年長者に敬意を示し、また祝福してもらうため、子どもや若者が“Mano po”と言って、年長者の手を取り、自分の額に付ける習慣があり、これをmanoと呼びます。そのほか機械化されていない「手作業」や「手仕事」のことも “mano-mano”と言いますが、manoはkamayに比べて非常に限定的にしか使われません。

 


 「手」にもさまざまな使い方がありますが、同じ「手」なら暴力や盗みに使うのではなく、手で何かを生み出したり、人に敬意を払ったり祝福したりするために使いたいものですね。

 

 

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia