みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? フィリピン語で「顔」はmukhaと言います。この語はサンスクリット語に由来し、マレー語でも「顔」はmukaなので、フィリピンの他の言語でも同じような言葉が使われているのかと思いきや、ビサヤ語ではnawongと呼び、ヒリガイノン(イロンゴ)語ではdagwayと呼ぶなど、実に様々な言葉が使われています。
「顔が同じ」
フィリピン語は、語根(意味をなす言葉の最小単位)に接辞(接頭辞、接尾辞など)を付けて様々な派生語を作りますが、「同じ」という意味を持つ接辞ka-を「顔」を表すmukhaにつけてkamukhaにすると「顔が同じ」つまり「よく似ている」という意味になります。例えば“Kamukha ni Maria ang tatay niya.” (マリアはお父さんにそっくりだ)のように使われます。
「顔が厚い」
フィリピン語にはmakapal ang mukhaという表現があります。makapalは「厚い」ですから直訳すれば「顔が厚い」、つまり日本語の「厚顔無恥」と同じで「厚かましく恥を知らない」「図々しい」という意味です。「恥知らず」には “walang hiya” といった別の表現もありますが、walang hiyaと言われたら人間以下と言われたような印象で、makapal ang mukhaはそれよりは若干マシなニュアンスになります。
「~のようだ」
mukhang~ と続けると「まるで~のようだ」とか「~に見える」という意味の副詞として使うことができます。これは「顔」とは関係ないことにも使います。例えば “Mukhang uulan.” と言えば「雨が降りそうだ」という意味になりますし、“mukhang matalino” (賢そうだ) “mukhang mahirap” (難しそうだ)など様々な使い方ができます。例えば新しくなった紙幣が「プラスチックみたいに見える」という場合も “mukhang plastik” と表現することができます。ただし、“mukhang pera”と言うと、これは「お金みたいに見える」という意味ではありません。これは慣用表現で「欲深い」とか「がめつい」という意味になるので注意が必要です。
「見分けられる」
接辞ma- -anを使ってmamukhaan と言うと、「見分けることができる」という表現になります。mukhaの前にma-、後に-anの接辞が付いています。このma-がna-になると完了形のnamukhaanになります。たとえば前に会ったときは子どもだったのに、青年になっていてわからなかった、というような場合は“Hindi ko siya namukhaan. Binata na pala siya.” (彼だとわからなかった。もう青年になっていたのか)のように使います。このように顔に限らず、物や人の姿や形が変わったりして元と同じものであることが見分けられる、見分けがつかない、というときに使う表現です。
今回はmukhaに関する様々な表現や使い方を見てきましたが、フィリピン語のmukhaには様々な表現があり、日本語とは使い方がかなり違いますね。色々な違いを楽しみつつ、自分の言葉の一部としていくのも言語学習の楽しみの一つです。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。
Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia